第18話 出撃前
"最強格"
それは、この大陸に存在する8つの傭兵組合に所属する全メンバー内(総帥を除く)で実力NO1の者に授けられる称号だ。
しかし、100年近く前から、傭兵組合同士の喧嘩や衝突が禁止されたためか、誰がNO1なのか決めることが困難となり、複数人の人がここに該当することとなった。
現在は、先程(※前回)名の出たヘルザを含めた3人がこの称号を保持している。
つまり、傭兵組合の秘密兵器といっても過言でもない存在なのだ。
「(その称号を持つヘルザさんまでを招集したと言うことは、それ程今回の依頼の相手は強敵と言う事……)」
クッデはゴクリと唾を飲み込む。
ヘラヘラしていたリュウセイも、危険度を理解したのか真面目な顔つきになっている。
ゾイは未だに思考停止中だ。
「まぁ、居ないものは仕方がないわ。私達だけで向かうわよ」
そう言って、メインバはおもむろに席から立ち上がり身支度を始める。
「……?え、何処に行くんですか?」
「何処って、溟海の狂鮫の本拠地に決まってるでしょ」
「「「今から!!??」」」
全員目が飛び出るほど驚いた。
「当たり前よ。もう出撃準備だって出来てるんだから」
「いや俺たち一切終わってないんですけど」
「部下にも何一つ説明してないし」
「てか何処にあるのかすら知らされてないんですが」
「説明なんて今からすればいいでしょ。出撃メンバーは全員ロビーで待機させてるし。それに戦うだけなんだから準備なんて要らないでしよ」
「あ、いや……心の準備とか……それにルゾロさんにも連絡を……」
「あんな老兵に連絡する必要なし!さぁ、裏庭で待ってるから早く来なさい!!」
早口で質問を全てこたえると、スキップしながら部屋から出て行った。
その姿は、何処か若々しく見えた。
「(……老兵って、ルゾロさんよりメインバさんの方が年上でしょうに)」
クッデは不満な顔をしながら、立ち上がり部屋から出て行く。
それに続いて、ブラックも立ち上がり、後を追う。
「はぁ〜あの婆さんの自由奔放な性格は何とかならないのか?」
リュウセイは誰に向かって言ったのか、ぶっきらぼうに言い放った。
「止めてたらもう止めてるわよ。さぁ、さっさと行くわよ」
キャンサーは深いため息をつきながら歩き始める。
それに続いて、リュウセイもついて行く。
それから1、2分経ってから、ゾイはゆっくりと立ち上がり部屋から出て行った。
***
「と、言う事で今から行く事になったんだけど……行ける?」
「まぁ……出かける準備はしてあるから問題はないけど……」
本部の窓際にもたれかかって、クッデ達の会議(?)が終わるのを待っていたニィアは言った。
数日振りに会うことが出来たのに、その日にまた危険な仕事へと行かなければいけなくなったという現実から、顔を背けたそうだ。
しかし、総帥の命令は絶対。
行くと決まった以上たとえ数分後だとしても行かなければいけない。
それは所属しているもの全員が知っていることだが。
「それでも納得いかない。ここ数日ずっとニィアと会うことが出来なかった挙句入院期間を延長させやがって……やっぱメインバさん、俺たちを合わせないように企んでるんだ。独り身だからって妬みやがって……」
クッデは頬を少し膨らまし言う。
それを聞いたニィアは心の中で。
「(多分、入院延長はこの日のために、クッデを仕事に行かせずに万全の態勢挑むためなんだろうけど……こっちの方が嬉しいしそう言うことにしておこう)」
ニィアは、少し微笑みながらクッデを見つめていた。
***
少し時間が経ってから、クッデはニィアと一緒に本部の裏手にある裏庭へと向かった。
そこには、既に30人近くの集団が今か今かと待っていた。
その集団の中央には、リュウセイが他の奴らとは雰囲気の違う3人の男女と話をしていた。
彼らは、リュウセイが率いている、"鉄鋼団"の幹部的存在だった。
リュウセイは、クッデやゾイのように一人、もしくは仲間数人で依頼に行くタイプではなく。
約30人の部下を引き連れ依頼へと向かう、集団戦法を使うタイプの男だった。
その為、俺たちとは違う種類の依頼を受けることが多かった。
「(にしても、よくあんな強引な性格で、あの大人数をまとめ上げれるよな……)」
心の中で尊敬するクッデ。
集団からチラッと目を離すと、隅の方に一人刀の手入れをするブラックの姿があった。
リュウセイとは対照的にいつも一人でいることが多い彼。
別に俺たちが嫌ってたり、距離を離してたりしているわけではなく、彼奴自身が人と関わるのを断ち切っているのだ。
何故そうするのかは、クッデも分からない。
また、心を読まれたくないのかニィアの視界に入らないようにいつも立ち回っている。
それで一度、クッデと口論となったこともある。
そんな彼の姿を遠目で見ていると、裏庭全体に聞こえるほどの大きな声で「集合」の言葉が聞こえた。
声の方を見ると、メインバが腕を組んで立っていた。
どうやら出撃メンバーが全員揃ったようだ。
そして、メインバの隣には見覚えのある水色の髪の少女が立っていた。
フューチェだ。
ただ、何処か様子がおかしかった。
それに真っ先に気が付いたのはニィアだった。
「フューチェ!?大丈夫!!?」
ダッシュで、フューチェの元へと駆け寄る。
特に怪我とかはしていないのだが、目にはクマが出来ており、心なしか少し痩せている。
「だ、大丈夫よ……ちょ、ちょっと魔力を……使い過ぎた……だけだから」
途切れ途切れで、言葉を返す。
どう見ても限界を超えてる。
「……そう言えば、ゾイは?こう言う時、真っ先に来るのは彼奴だと思ってたんだけど……」
「あぁ、彼奴ならあそこで思考停止してるぞ」
ニィアとは違い、歩きながらフューチェの元へ寄るクッデは、後ろを指差しながら言う。
その先を見ると、何も考えてない状態のゾイがいた。
「呼んでくるか?」
「……いや、別にいいわ。うるさいだけだし」
「ふぅ〜ん……」
ぶっきらぼうに答えるフューチェを、ニヤニヤしながらニィア見つめていた。
それに気が付いたのか、フューチェはニィアを睨みつける。
「ニィア、今読んだ心の内容を口外したら許さないわよ」
「はぁ〜い」
ニィアは変わらない表情で返事をする。
クッデは、どう意味なのかよく分からずに首を傾げていた。
***
「さて、全員いるわね」
目の前にいる約50名の傭兵組合所属者に対して一言言う。
メインバは、軽く見渡す。
綺麗な整列をしているわけでもなく、自分の思うような場所に立って話を聞いている、協調性が全くない集団。
しかし、特に気にもしずメインバは話を続ける。
分かりきっていることだからだ。
「全員知っていると思うが、改めて説明をするわ。今から私たち自由な旅人は、溟海の狂鮫が構える本拠地に乗り込み、壊滅をさせる。その為にも、自分勝手な行動を抑え、出来る限り協力をしあい一人残らず検挙しろ。いいな?」
「「「はい!!!」」」
約50名の傭兵組合所属者は、ほぼ同時に返事をする。
全員のやる気は十分なようだ。
その声を聞き、メインバ笑みを浮かべる。
「では、自由な旅人、出撃する!!!」
〜to be continued〜




