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竜の声  作者: 水仙(スイセン)
溟海ノ使者編
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第16話 不気味な眼

「はぁ、メインバさんも人使い荒いよなぁ」

とある町道。

病院から退院したクッデは、その日に自由(フリー)旅人(トラベラー)本部への招集をかけられ、ぶつぶつ文句を言いながら歩いていた。

実際は、退院自体は数日前に可能だったのだが、何故かメインバの指示によって入院を延長させられていたのだ。

自分より深手だったゾイは、もう3日前に退院し、フューチェにデートのお誘いをしに行っていると言うのに。

「こっちは大好きなニィアにも会えず、仕事の依頼にも行けず……ん?」

不満だらけの顔にハッと驚きの顔に変わる。

何かに気がついたようだ。

「もしかして、俺の退院延長した目的って……ニィアと合わせない為か!?」

馬鹿だった。

圧倒的に馬鹿だった。

そんな馬鹿なことを考えているクッデに一人の男が近づく。

「よぉ、お前がクッデか?」

名を呼ばれて、サッと後ろを振り返る。

そこには、見慣れない黒髪の男が立っていた。

「え、あぁ、確かにクッデだけど……誰だお前?」

「俺の名はデラック。夜狼(ウルフ)狩人(ハンター)の一人だ」

「("夜狼(ウルフ)狩人(ハンター)"……確かニィアから聞いたことあるな……"二大門"って言う、俺ら"四季"よりも強いって、噂の二人組みが居るって……)」

デラックから目を離さずにニィアに教えられたことを思い出す。

「んで、えぇ〜とデラックだっけ?俺に何の用だ?」

「いやなに、ちょっと挨拶をしに来ただけだよ」

デラック不気味な笑顔をしながら答える。

クッデは、警戒しながらじっと見つめる。

しかし、ほんの一瞬だった。

目の前にいたはずのデラックがバッと音をしたと同時に消えたのだ。

クローバーの時とは違い瞬きをして見失ったではない。

目に映らなかったのだ。

「え?何処h」

黄金(ゴールド)歯車(ギア)のガイナスを倒したって言うお前をよ」

耳元から声が聞こえた。

「!?」

クッデは反射的に地面を蹴り、後ろを振り返りながら、その場から離れる。

そこには、先程まで前にいたはずのデラックが居た。

クッデには理解出来なかった。

何故彼が自分に気が付かずに後ろに立って居るのかを。

たが、理解したこともあった。

「(間違いない!!こいつだ!!夜狼(ウルフ)狩人(ハンター)"二大門"の一人!!)」

すぐに腕に"竜化(ドラゴン)"をかけ、戦闘態勢に入る。

が、デラックはポケットに手を突っ込みながら、突っ立って居るだけだ。

「なんか勘違いしてないか?俺はただ挨拶しに来ただけだぜ」

「へ、挨拶するのにわざわざ後ろに回る必要なんてないんじゃないか?」

「なぁ〜に、ガイナスを倒したって言うやつの実力を試しただけさ。だがまぁ、期待はずれだな」

「なに!?」

「今の動きにもついてこれないとは、どうやら大したことないようだな」

「ぐっ!!」

クッデは震える拳を強く握りしめ、デラックを睨む。

「(かかった)」

その様子を見て、デラックは心の中でガッツポーズを取る。

「どうせ、他の奴らも雑魚ばかりなんだろ?」

「なんだと!!」

「どうした?怒ってるのか?だったらこいよ!!俺と戦って強いってことを証明してみろよ!!」

クッデは両腕に炎を纏わす。

別に自分を馬鹿にされるのはいい、だが自分のせいで、仲間を……特にニィアを馬鹿にされるのは納得いかない。

「行くぞオラァ!!」

クッデはダッシュでデラックに迫り、炎を纏った右手で殴りかかる。

が、拳がデラックにあたる直前で、またバッと目の前から消える。

「遅い」

デラックは先ほどと同じくクッデの後ろに居た。

足技をかける態勢で。

「一度見ればそれくらい読める!!」

クッデは空ぶった右手の勢いで後ろに振り、そのままデラックへの攻撃する。

「「うぉぉぉぉぉぉ!!!」」

二人の少年の渾身の一撃がぶつかろうとしていた。


ギロ


「「!!??」」

ぶつかる寸前で両者反射的に後ろに飛ぶ。

殺気の籠もった視線を感じた。

何処からは分からないが誰でもわかるほどの視線だった。

デラックは困惑した顔で周りを見渡す。

確かに、野次馬の何人かがこちらを見ているが殺気は全く感じない。

「お、おい、お前今の……え?」

何が何だか分からないデラックは更に困惑した。

先程まで血管が浮き上がるほどの怒り顔だったクッデの顔は、真っ青になり、汗をダラダラとかきはじめる。

「クッ……デ?どうしたんだ?」

「……わ、悪いがここまでだ。そ、それに俺は、今日は急ぎの用があるんだ。じゃ、じゃあな」

震えながらクッデはデラックに言うと、サッと振り返り歩きはじめる。

「お、おい待てよ!!いいのか!!強いってのを証明しなくても!!」

デラックが大声で呼び止める。

その言葉を聞いてなのか、クッデは足を止め、顔の向きを変えずに一言だけ言う。

「あぁ、弱いさ……俺も……お前も……」

震えながら言って、その場を後にする。

「あんなに簡単に引き下がりやがった。俺の挑発に乗るほど沸点が低かったのに……あいつ、さっきの視線の正体を知っているのか?」

デラックは、独り言を言いながら、もう一度周りを確認する。

しかし、周りにさっきの視線を送ったものはいない。

「チッ、何にしても、俺の作戦は失敗か。俺から手を出せばうちの傭兵組合(ギルド)の責任になるから、彼奴(クッデ)の野郎から攻撃を仕掛けさせて、手合わせしようと思っていたが……仕方がない、ロドンさんの所に戻るかな……」

残念そうに溜息をつくと、バッとその場から消える。

嵐の過ぎ去った町道には、静寂が訪れた。

そんな街中の壁には、不気味な眼が張り付いていた。

眼はジッと二人の様子を見ていた。

そして、二人がその場からいなくなると、スッと消えていった。

そんな不気味な出来事を知るものは、誰もいなかった。


〜to be continued〜

デラックの出番はこれで終わりです(๑╹ω╹๑ )

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