第15話 酒場と夜狼の狩人
とある日の夜。
自由な旅人が大きく動き出す中、とある街中にある酒場に、あまりぱっとしない三人組が来店した。
数週間前にクッデにボコボコにされた三人組だ。
「兄貴……もう動いて大丈夫なのかい?」
「うるせぇ!!大丈夫だから動いてんだろ!!」
兄貴と呼ばれる男は、半ギレで怒鳴りながら店内のカウンター席に座る。
「……いらっしゃい」
カウンターの向こうには、この店のマスターなのか、サングラスをかけたガタイのいい坊主の男が、グラスを拭きながら立っていた。
「よぉ、久しぶりだなマスター」
「早速だけど、酒頼むわ」
「いつも通り、マスターのお任せで」
「了解」
マスターは、グラスを置くと、後ろを振り向き、棚に立ち並ぶ酒瓶に目を向ける。
その姿を見ながら、三人は静かに酒が出て来るのを待つ。
が、ジッとするのが嫌いな兄貴は、店内をグルっと見回す。
すると、カウンターの隅の方に綺麗な金髪をした女性がいることに気がついた。
金髪の女性は酔いつぶれているのか、テーブルに顔を伏せて眠っていた。
それを見て兄貴はニヤリと笑い、席から立ち上がると金髪の女性に近づいていく。
「よぉよぉ姉ちゃん、こんな所で一人かい?」
ナンパだ。
「(出たよ)」
「(懲りないよなぁ)」
普段は慕って居る子分二人も、流石に呆れてきている。
そんなことは御構い無しに兄貴は、金髪の女性に色々と話しかける。
「そうだ、これからお兄さん達と何処行かない?」
などを言って、金髪の女性の肩に手をかけようしていた。
が、彼が触れることはなかった。
触れる直前で、彼は後ろに大きく吹っ飛んだのだ。
そして、店内の壁に激突した。
「ごばっ!!」
「「兄貴!!??」」
驚きの表情をしながら、カウンター席から立ち上がり、兄貴の方へと顔を向ける。
「……人の女に手出すんじゃねぇよ」
サッと後ろを振り返る。
すると、先程まで居なかった黒髪の男が、金髪の女性の隣に立って居た。
「誰だ貴様!どっから現れた!?」
二人の子分は黒髪の男に対し質問をする。
が、黒髪の男は目も向けず、金髪の女性の方へ体を向け背中をさする。
「おい"カソ"!!さっさと起きろ!!お前酒に弱いくせに飲みすぎなんだよ!」
「むにゃ〜大きいステ〜キがぁ〜お空を〜」
「どんな夢を見てんだよ!!」
黒髪の男は半ギレで起こす。
「おいおいテメェオラァ!!」
「こっち見ろや!!!」
無視し続けられ、痺れを切らしたのか子分の二人は隠し持っていた武器を取り出す。
「やめときな、君らが束にかかっても勝てるわけないんだから」
「「あっ!!?」」
イライラしている二人はバッと後ろを振り返る。
しかし、その苛立ち顔も、すぐに青ざめていった。
そこには、彼らよりも年若い少年笑みを浮かべながら立っていた。
「「ボムクさん!!」」
子分二人組みはサッと敬礼をする。
「君たちねぇ、酒場への出入り禁止されてんの忘れてるの?」
「「す、すみません!!」
子分二人は冷や汗をかきながら敬礼を続ける。
ボムクは、軽くため息をつくと彼らの横を通り過ぎ、黒髪の男の元へと近づいていく。
「ご久し振りです、"デラック"さん」
「……ボムクか、何で此処に来た」
デラックは睨みながらボムクの方へと向く。
「いやぁ〜、懲りない馬鹿な部下を連れ戻すのとついでに、久し振りに先輩に会おうと思いましt」
「理由を聞いてるんじゃない、此処は酒場だぞ。まだ"17"のお前が入っていいわけないだろ」
「そっちですか!?」
「それ以外にあるか。ほら、マスターに殴られる前に店を出てけ」
"マスター"の名を聞いて、チラッとカウンターの方へみる。
何故か酒瓶持ってこっちをジッと見ていた。
「(あ、これやばい奴だ)」
目を点にしながら、事態を察したボムクは急ぎ足で壁に埋めこんだ兄貴の救出に向かう。
「おぉ〜い、帰るよ〜、早く帰るよ〜、じゃないと僕ガイナスさんやモトザカさんみたいに、他の傭兵組合総帥にボコボコにされて、病院送りになるから、それだけはなんとしても避けたいから僕まだ死にたくないのだから早く目を覚まして!!」
焦りながら、気絶している兄貴を起こすボムク 。
それに、ジリジリと酒瓶持って近づいていくマスター。
「……ガイナスに何かあったんか?」
カソの頭をグリグリしながら、デラックが質問する。
「え?あぁはい。数日前に他の傭兵組合の人と騒動起こして、それでモトザカさんと一緒にそこの傭兵組合総帥に」
「いや、天パの事はどうでもいい。それよりガイナスだ。騒動って喧嘩か?」
「天パ……まぁ、そうですけど」
「ガイナスは勝ったのか?」
「いえ、負けたそうですよ。手も足もでずに」
「へぇ……あのガイナスが手も足も…ねぇ…」
クールな表情に小さな笑みが浮かぶ。
「おいボムク 、そいつ……ガイナスに勝った奴は何処のどいつだ?」
「え、えぇ〜と……自由な旅人のクッデと言う男ですが…まさか先輩」
「おいマスター!!」
デラックは何かを企んだのか、マスターの方へと顔を向けて名を呼ぶ。
「……自由な旅人かぁ、彼処は今重要な作戦な為、手合わせの許可出来んぞ?」
マスターは、酒瓶を持ちながら手を組みながら悩む。
「別にいいぜ、ちょっと"挨拶"してくるだけだ」
「……挨拶かぁ、なら良い、行ってこい」
マスターが許可を出すと、デラックは酔い潰れているカソを片手で抱き抱え、酒代だけ置いて、その場からバッと消えて行ったと同時に、店のドアがドンと閉まる音が店内に響いた。
「……いいんですか。許可出しちゃって?」
ボムクは、店の扉の方を見ながら質問をする。
「良いわけないだろ。だが、俺達"夜狼の狩人"は、一度見定めた獲物は絶対に逃さない。例えそれが同じ傭兵組合の仲間であったとしてもだ」
「それじゃあ、僕達と同じ運命を辿るのでは?」
「ふん、お前らの所の天パと一緒にすんな。それに安心しろ、あいつは空気が読める方だからな。何か考えがあるんだろう」
「天パ……ま、まぁ、ちゃんと先のこと考えてるんですね。流石は"夜狼の狩人"の総帥、"魔神"のロドンさんだこと」
「ほぉ、よくその異名を知ってるな"黄金の歯車"NO.1の実力者の"爆弾魔"ボムク君」
「総帥に教えてもらったんで」
「そんな君にプレゼントだ」
「お、一体何ですk」
「歯くいしばれ、俺の店に未成年が入るとは良い度胸だな」
「あぁ!!ストップストップ!!出てきます!!すぐ出てきますからビンタだけはやめてください!!死んじゃいます!!お願いします!!助けて!!うわぁぁぁぁぁ!!」
静寂な夜の街に、一人の少年の叫び声が響き渡る。
そんな街の、一角の家の部屋に置いてあるベットに、カソをソッと寝かせるデラック。
そして、カソの寝顔をジッと見る。
彼女を寝かせた部屋を後にし、家を出て行く。
「クッデか……フッ、期待はずれじゃなければいいが」
デラックは、空を見上げながら少し歩くと、店の時と同じようにその場からバッと消える。
〜to be continued〜
新編突入しましたけど…今回は登場させたかったキャラを登場させただけです




