第13話 潜む怪刀
「えぇ!!取り逃がした!!」
荒野の真ん中にある街の駅。
ティナテを乗せた列車は一時この駅に停車させることとなり、その結果、ニィアとクッデは数十分後に合流することが出来た。
しかし、着いた時に聞いた知らせは、倒したはずの鬼の巣窟を取り逃がしたことだった。
「何で!!縛ってなかったの?」
「いえ、フューチェさんもゾイさんも、戦いで負傷をしたため、自分達が代わりに捕らえようとロープを準備していたのですが……」
「ほんの一瞬目を離した隙に両者煙のように消えていったのです!!」
デントが連れてきた部下達から事情を聞くニィア。
その話を聞き、消えた謎がすぐに浮かび上がった。
「ライントだわ……彼、あの戦いから逃げるように見せかけて、列車に向かってたんだわ。しかし、仲間がやられてるのを発見して、すぐに救出、撤退をしたのね……やっぱり、あの場で倒すべきだったのかしら」
ニィアは、肩を下げ、落ち込む。
「落ち込む必要なんてないわ、私達の目的は防衛よ。討伐じゃあないんだから」
後ろから聞こえた声を聞き、さっと振り向くと、そこにはフューチェが腕組みをしながら立っていた。
「鬣犬を捕らえることは出来たし、マスターも何も文句は言わないでしょ」
「そうだけど……」
不満そうな顔でチラッと横で縄で縛られている、鬣犬の下っ端共を見る。
「(手柄は手柄だけど……鬼の巣窟の方が報酬には美味しいし、それに彼らは……あれ?)」
諦めきれず、いろいろと考えていた時、ふと、ある事に気が付いた。
「(確か、彼らは依頼を受けて動く集団……じゃあ、ティナテを狙ってるのは……一体……?)」
ふと思った疑問を、その場でジッと考えていると、駅構内に響くほどの大きな汽笛の音が鳴り響く。
「何ボーとしてんのよ。男共が使えない今、頼れるのは私達だけなんだから。ほら、置いてくわよ」
「え、あ、待ってよ!!」
フューチェの後ろに続いて、ニィアも乗り込む。
その後すぐに扉が閉まり、最終目的地に向けて発車する。
***
ピーピーピーガチャ
『誰だ』
夕日が沈む荒野。
辺りが少し暗くなる中、人が寄り付かなさそうな岩石の山の中に、通信端末のような物を手に持つ、一人の男がいた。
いや、実際は一人ではない。
彼の足元には3人の男女が倒れ込んでいた。
一人は全身凍結し、一人は気を失っており、一人はあちこちに火傷の跡が見受けられる。
先程まで、クッデ達と戦っていた、鬼の巣窟の3人だ。
通信端末を持って立っているのは、ニィアと睨み合っていたが、隙を見て逃げたライントだ。
「こちら鬼の巣窟のライントです。依頼されていたティナテの強奪の件ですが……すみません、失敗に終わりました」
『……負けたのか?』
「はい、パオ、ミル、そしてリーダーのクローバー、全員が傭兵組合の者達により倒されました」
『全員無事なのか?』
「はい、隙を見て、俺が救出しました。が、現在三人とも気絶しており、とても戦えるような状況ではありません。なので、今回は依頼失敗と言うことで、撤退させていただきます」
『そうか……了解した。難しい依頼をして済まなかったな。ゆっくり休みたまえ』
「……ありがとうございます」
通信端末の向こう側から軽く会釈する。
その後、電波を切られたのか、プチっと音がなると、少し光っていた通信端末はゆっくりと暗くなっていく。
それをポケットにしまい、ライントは静かに地に倒れる三人を見る。
「……死ぬんじゃねぇぞ。お前らはこんな所でくたばる訳にはいかないんだ」
悲しい声で、聞こえるはずのない気絶している三人に向かって言葉を発する。
そして、三人を自分とともに影の中に沈ませ、その場から離れていく……。
***
「ティナテの強奪は失敗したようだ」
薄暗い一室。
社長室のような内装の窓近くの椅子に、深く腰を下ろしながら、同じ室内にいる二人の者に対して話す男がいた。
男は椅子に座ってても分かる程背が高く、右目は閉じており、その目には長い刀傷があった。
「あらら〜、アレが手に入らなかったとなるとちと面倒だな〜」
室内の中央にある、ロングチェアーに座るサングラスをかけた男が笑いながら言う。
「あまり残念がらないのね」
向かい側のロングチェアーに座る、紫のポニーテールが特徴的の眼鏡をかけた女性が静かに言う。
「バレちまったか?」
「そんな笑顔で言えば、誰だって分かるわ」
呆れながらいうと、女性は目の前のテーブルに置かれた紅茶に手を伸ばし、音もなく静かに飲み始める。
「ははは、そうかいそうかい。いやよぉ、ティナテが手に入らなかった以上、例の計画は俺の手にかかってんだろ?久し振りに俺の力を存分に発揮出来ると思うと楽しみで楽しみでよ♪」
高らかに笑いながら、何処から取り出したのか、右手で銃をクルクル回し出す。
「不謹慎。私達がやろうとしている事は決して許させる事では無いのよ……ね、"キク"様」
女性は目だけ動かし、窓近くの椅子に座る傷の男へと目を向ける。
サングラスの男も、それに続いて向く。
「あぁ……その通りだ。だが、正義の為だ、神もお許しになるはずだ……。"ムスカ"、コーザとダルニアを本部に呼び戻しておけ、"クミナ"は作戦の最終チェックを行え」
「うぃ〜す」
「承知しました」
ムスカと呼ばれた男は軽く手を挙げ、クミナと呼ばれた女はその場でお辞儀をする。
そして、キクと呼ばれた男は、そばにかけてあった刀を手に取り鞘から少し出す。
「作戦決行にはまだ時間がある。入念に準備しろ、失敗は許されないぞ。この腐りきった国を、俺たちの手で終わらすためにな」
窓から差し込む月の光が、刀に反射し光る。
怪しく赤い、不気味な光を……。
〜to be continued〜
次回が鬼列車編終わりといったな
あれは嘘だ(




