第10話 陰口
〜荒野〜
「ぶあっちぃ!!!」
燃え盛る火の中。
クッデは、文句を言いながら上から降り注ぐ、炎の雨を避けながら走る。
普通の人が喰らえば、火傷では済まない炎だが、クッデの場合、当たって平気な方だ。
クッデの魔法"竜化"によって、身にまとっている鱗には、魔法耐性があり、ある程度の魔法なら軽減することが可能なのだ。
だが、それでも彼が炎から逃げ続けるのは、鱗では防ぎきれない魔力だからだ。
「メララララ、どうだ俺の魔法"獄炎"の技、"追撃炎"の火加減は」
荒野の立ち並ぶ巨体な岩山の一つの上に、呑気に胡座をかきながら、魔法を発動するクローバーの姿があった。
発動した魔法は、上空に上がって、巨大な球体となって浮かんでいる。
そして、その球体から小さな蒼い炎が雨のように降り注ぐ。
それがクローバーの炎だ。
クッデの周りには、火の海とかしていた。
「(このまま逃げ回っていても勝てるわけないし……一か八かやってみるか)」
クッデは急ブレーキをかけ、クルっと周りクローバーの方へと向く……頬を膨らませながら。
「お、反撃くるか?」
クローバーは、上空からの攻撃をやめ、右手に力を込める。
「竜技"炎吹"!!!」
「"進軍炎"!!!」
口から発せられるクッデの竜の炎と右手から放たれるクローバの蒼い炎が激突する。
少しの間、2人の丁度真ん中あたりで競り合っていたが、少しずつクッデの炎が押され始めた。
「やっぱ無理だ!!!」
すぐにクッデは炎の攻撃を止めると、同時に走り出す。
相手の炎が消えたことにより、クローバーの炎は勢いをあげて、クッデの方へと向かっていく。
が、虚しくクッデには当たらず、地面に衝突する。
「(俺の炎は、竜化のオマケ的存在!!純粋な炎の魔法とぶつかって勝てるわけないんだよ!!)」
クッデは心の中で文句言いながら走り続ける。
「ちぇ、避けやがった」
クローバーは悔しそうな顔をすると、また上空に向けて、魔法を放つ。
そして、また炎の雨が降り注ぐ。
「(畜生!! 一応"炎吹"より強い炎技はあるにはあるが……それでも勝てる確率は少ないし……こうなったら"他の技"を試すか?)」
***
クッデとクローバーが衝突する場所から少し離れた岩陰。
特に何の変哲のない岩だったが、突如、影が不自然に円を作りながら、波を打ち出す。
そして、波の中心から縦に長い黒い物体が浮かんでくる。
それは、半分近く影から出ると、緑……肌……灰……と色がつき始める。
人だ。
緑の髪を持つ男が影の中から出てきたのだ。
前髪のちょうど真ん中の部分が異様に長い彼の右手には、銀色に光る短剣が握られていた。
そして、彼の目線の先にはクローバーと激闘を広げるクッデの姿があった。
男はジッと戦いを見つめていた。
「『クローバーに何かがあった時に、俺があの男をやれるように』……か」
男は後ろから聞こえた声に、ビクッと反応して振り返る。
そこには、見知らぬ少女が立っていた。
「『誰だ貴様、いつから俺の後ろに立っている』…ね」
少女が口ずさむ言葉に男は驚きを隠せなかったのだ。
今丁度自分の考えてる事だからだ。
「『考えているだけ、口には出していない』…簡単な質問ですね、私心が読めるんです」
少女は、さらっと凄いことを言う。
そして、少女は言葉続ける。
「私の魔法の名前は"心読"、目に移った人や動物の心を自由に読めるようになる魔法です。例え私から目をそらしても、"影の中に潜んでいたとしても"……ね、鬼の巣窟"所属の"陰口"のライントさん」
少女は、ジッとライントの方へと目を向ける。
「貴方の存在は、貴方達が列車に乗り込んできた時に気がつきました。貴方達の目的がなんなのか心の中を読もうとした時、何故か三人しかいない場で四人の心の声が聞こえたので、もしや、目に見えない誰かが潜んでいるのではないかと思いましてね。で、クローバーが列車の外に出た時、見えない心の声も外に出て行ったのでもしやと思い、後をつけてきたのです。するとですね」
パンッと手を叩くと、ニコッと笑い出す。
「大正解♪ 貴方が居たわけですよ。魔法"影移動でクローバーさんの影に隠れている貴方が」
「………」
ライントは無言で少女の話を聞いていた。
全て当たっているからだ。
そして、彼は真っ先に考えた、この女を殺さなければ。
ライントは、右手に持つ短剣を強く握りしめて、ゆっくりと影の中へと入っていく。
例え心を読めても自分の攻撃が当たる自信があったからだ。
「私の後ろに回って、攻撃しようとしても無駄ですよ?」
「(やはり読まれたか。だが読んだ所で、俺の攻撃が当たらない理由にh」
「だから無駄なんですって。貴方、自分の魔法の短所ちゃんと理解してます?」
少女は、地面を指差しながら答える。
ライントはサッと下を向いた、そしてハッと気が付いた。
影の中に入っていない。
「貴方の魔法"影移動"は、影の中に入り、その中を超速で動くことが出来る移動系魔法。その魔法を駆使して、レールの影の中に仲間と入り、列車に近づき侵入したんですよね。そうでもしなければロッドさんの"調査"の射程内に入るらますからね。しかし、この魔法には大きな弱点があります。そう、"影の中"限定の魔法というね」
「……ぐぅ」
完全に盲点だった。
自分がいるところは大きな岩石の影。
確実に影の中に入っているとばかり思っていた。
ライントは少し焦り始めた。
「あぁ、けど安心してください、影の中に入らない分、私も貴方に攻撃できないので」
ニィアは、ニコニコ顔のまま答える。
「……では、お前はどうやって俺を捕らえるつもりだ?」
黙っても意味がないと感じたのか、無言を貫いていた口を開く。
「捕まえる?勘違いしないでください。私は貴方を捕まえるつもりはありません」
ライントは、きょとんとした。
自分を捉えないのであれば何故ここに来たのか。
「理由は簡単ですよ。私は貴方がクッデ君の邪魔をしないように見張る。それだけですよ」
ニコニコ顔だった少女の顔がサッとしかめっ面に変わる。
そして、いつでも攻撃が出来るように構えを取る。
「貴様は一体何者なのだ!?」
「私は自由な旅人"所属。マスターから"心眼"の異名を頂き、クッデ君の未来の花嫁のなるニィアよ。女の子だからって舐めないことね」
〜to be continued〜




