第9話 毒蛇と天声 ①
〜屋根〜
「氷造"矢"!!」
ゾイの掛け声と共に周りを漂っていた冷気が凝縮し始め、矢の形へと変貌する。
そして、パオに向かって真っ直ぐに飛んでいく。
「お〜らよっと」
パオは右腕で薙ぎ払う。
すると、ゾイの放った氷の矢が全て切断、蒸発された。
パオの右手には、禍々しく光る、紫色の刀を所持していた。
「"蛇刀"」
パオはニヤリと笑い、刀の先端をゾイの方へと向ける。
それを見てか、ゾイの周りの冷気が、また凝縮を始める。
次の技は、矢よりも長かった。
「氷造"槍"」
ゾイの手元に、氷の槍が作られた。
「成る程成る程、やっぱり"俺と同じ"魔法か。ただ違うのは属性だけ……」
「そうだな、俺の魔法は'氷造"」
「俺の魔法は、"毒造"。つまり、どちらも想像したものを自由自在に作り出すことのできる造形魔法」
ゾイに向けていた毒の刀を、鞘にしまうように腰元まで落とす。
「さて、ここで問題です。同じ魔法スタイルのもの同士が戦った場合、勝つのはどちらでしょうか?」
「さぁな」
ゾイは氷の槍を構える。
「正解は……発想力がある方だ」
パオは、勢いよく刀を振り上げる。
しかし、ゾイとパオとの間には数mの間合いがあり、パオの刀は空を切っただけだった。
刃部分は。
「何!?」
ゾイは咄嗟に槍でガードする体制をとる。
そのすぐ後に槍に何かがぶつかる音がする。
ぶつかったのは……蛇だ。
毒々しい、紫の蛇が鋭い牙で槍に噛み付く。
その蛇の胴体は長く伸びていた。
その先は、パオの持つ毒の刀だった。
先端を蛇に変え、刀の頭身を伸ばし攻撃を仕掛けたのだ。
「"蛇刀・追"」
パオはニヤリと笑う。
「ぐぅぅ……オラァ!!!」
ゾイは、毒蛇を押し返す。
その反動で、毒蛇の胴体は一気に縮んで行き、パオの元へと戻って行った。
「そうそう、先に言っておくけど、俺の扱う毒だが。まぁ喰らっても、溶けたりしないし、死にもしない、ただ麻痺効果があるから、喰らったら動けなくはなるな」
「へぇ……どうも親切に説明ありがとう」
吐き捨てるように言う。
無論感謝などはしてない。
「おらもういっちょ行くぞ!!"蛇刀・追"!!」
パオはもう一度振りかぶり、毒蛇を放つ。
「(ッチ、刀というより鞭じゃねぇか)」
ゾイは後ろに飛び、距離を取る。
しかし、毒蛇は止まらず伸びる。
「(何処までも追ってくるてか……おわっ!?)」
何かが足に引っかかり、姿勢を崩す。
「チャンス!!」
パオの放った毒蛇が、ゾイ目掛けて加速する。
「くっ! 氷造"盾"!!」
左手に冷気を凝縮させ、盾を作り、毒蛇の攻撃を防ぐ。
「あっぶね……にしても何引っかk……ん、これは?」
ゾイは、チラッと足元を見る。
そこには鎖が置いてあった。
その鎖を辿って後ろを振り向くと、鎖の先には鉄球が付いており、その途中に三槍が突き刺さっていた。
「(あれは……デントさんの……さっきの戦いの残骸か……あ、そうだ)」
ゾイは残骸を見て閃く。
「な〜んか閃いたのか?」
「あぁ……お前を倒す方法をな!!」
その言葉が終わるか否か、ゾイは盾で毒蛇を弾くと同時に、右手に持っていた槍で、毒蛇を屋根に刺す。
「しまっ!!」
パオは毒蛇を戻そうと、刀を引っ張る。
が、槍が突き刺さり戻らない。
「行くぜ!!」
ゾイはパオ目掛けてダッシュする。
右手に新しい槍を造形しながら。
「畜生!!このままじゃやられる!!!」
パオは焦りながら、何度も刀を戻そうとする。
しかし、何度やっても無意味だ。
その間に、2人の距離は一気に縮まり、もうすぐでゾイの射程範囲内だ。
「これで俺の勝ちだ!!」
ゾイは槍を構えて、パオへ突き刺そうとしていた……その瞬間だった。
「あ……れ……?」
ゾイの動きが急に止まった。
後数cmでパオに攻撃を喰らわせれる所でだ。
「くくくくく、だから言ったろ、発想力がある方が勝つって」
パオは、先程までの焦り顔と打って変わってら不気味な顔でゾイを睨む。
感覚が痺れてきたゾイは、力が抜けてきたのか膝をつく。
そして、ゾイは後ろを振り返る。
そこには、パオの刀……毒蛇の胴体から、別れた形でもう1本伸びる、毒蛇があった。
そしてその牙は、ゾイの足に噛みついていた……。
***
〜車内〜
「てりゃぁぁぁ!!」
ミルの二本のレイピアが、フューチェ目掛けて振り下ろされた。
それをフューチェは、浮遊させている水晶玉でガード、その隙に、後ろに下がり距離を取る。
「あぁもう!!さっきから逃げてばっかじゃないの!!」
ミルは頬を膨らませながら怒る。
しかし、フューチェは聞こえてるのか聞こえてないのか、表情を何一つ変えずに、水晶玉での攻撃を開始する。
ミルは、水晶玉の攻撃を避けるため、攻撃をやめ、回避に専念する。
少しの間避けていると、ミルは気がついた。
フューチェとの距離がどんどん離れて行くことに。
そして、後ろに下がらなければ避けれない攻撃を放っていることにも気がついた。
「むぅ〜、いいわよ!!そんなに離れて攻撃したいのなら、私だって考えがあるんだから!!」
水晶玉の攻撃を避けながら、ミルは深く息を吸い込み始める。
「(……何かくる)」
水晶玉の攻撃が当たる気配がないのとミルの謎の行動を見、一度水晶玉を自分の所へと戻す。
「スゥーーー……!!!!」
ミルは、吸い込んだ息を吐き出すように叫ぶ。
何を言ったのかは分からない、しかしそれは声が小さいからではない、あまりにもデカすぎるからだ。
「きゃっ!!」
フューチェは、たまらず両耳を塞ぐ。
しかし、それでも全くガードできず、耳の中にミルの声が響く。
「(意識が……飛びそう……)」
攻撃が始まって数秒後、息を全て吐き出したのか、声が止み、ミルはもう一度深呼吸する。
フューチェは、耳へのダメージが大きかったのか、その場で倒れこむ。
呼吸が整ったのか、ミルはフューチェの方を見、笑みを浮かべる。
「どう?私の"天使の歌声"の威力は?」
「はぁ……はぁ……何なの……今のは……」
「うふふ、教えてあげるようか?私の魔法の名前は"声量"。自身の声を自由自在に操れるの。一見地味だけど、使い方次第でいろんな攻撃方法があるのよ♪」
ミルは自慢げに自分の魔法を説明しながら、フューチェの方へと歩いて行く。
そして、フューチェの前まで来ると、人の顔が映るほど、綺麗で鋭いレイピアを、首元へ持っていく。
「さぁ、此処からどうする?」
***
「(あぁ……ヤバイヤバイヤバイ!!)」
隅の方で隠れているロッドが心の中で叫ぶ。
しかし、彼は酔いが酷く、その場から一歩も動けない状況だった。
まず、動けたとしても非戦闘員の彼には、どうする事も出来なかった。
「(このままではお二方とも……何とかしなくては……そうだ、ニィアさんが加勢すれば!!)」
ロッドは、動けるニィアに、何とかしてくれるようにお願いしようと考えた。
そこで、ロッドは車内を見回しニィアを探し始めた。
しかし、此処でロッドはあることに気が付いたのだ。
「(……ニィアさんが……いない!!?)」
〜to be continued〜
戦闘開始です(๑╹ω╹๑ )




