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Remained GaMe  作者: ぼんばん
5章 さて友よ、足掻いて死のうか
39/50

切り取られた世界

風花と話す機会はすぐにやってきた。

最初は5人揃ってモニタールームで騒いでいたが、いつの間にか琴乃と千藤は熟睡していた。

茉莉花はトイレに行くと言ったきり戻ってこなかった。




「……寝てれば私たちと同い年の男の子っぽいんだけど。」

「言ってやるなって。ま、千藤も疲れてるんだな。」



風花と恵は玄関ホール直通の中庭で話す。

内緒話ではあったが、あまり他の面子から離れたくなかったというのが本音だ。




「それで、話って?」

「あの温室のことなんだけどさ。」



やはり、恵は身構えた。



「……そんな警戒しなくていいって。」



風花は仕方なさそうに笑う。流石に構えすぎたかと恵も息を吐くと肩の力を抜いた。



「さて、温室についてなんだけどな。」

「何か気になった? 私まだあのモニター見に行ってないんだよね。」

「まぁ実を言うとオレもなんだけどさ。正しく言うと行けないんだよな。」

「どういうこと?」



彼は何を躊躇っているのだろうか、口をモゴモゴと動かすと苦虫を噛んだような表情をした。

恵は黙って待った。というのも、もし途中で彼女が口を挟んでしまえば、彼は恐らく言葉を発することをやめてしまうことが予想できたからだ。





「……温室って、たぶん【サポーター】の基地みたいなとこだろ? オレ、薄々前から思っててさ、試しに若狭先輩にもらった手紙を温室に置き去りにしたんだよ。」


「それって大切なものじゃ……。」


「もちろん、皺ができるまで読み返したし、内容も覚えたぐらいだ。だから、これを温室に置いてきたんだ。」



彼が右手でひらひらと見せるのは、恵の世界の時に受け取ったらしい手紙だった。風花が言った通り、何度も読んだらしく皺が寄っていた。内容については恵も知らなかったが、恐らく1つ目の事件について書かれているのだろう。

彼は腕組みして悩ましげな表情を浮かべた。




「もしかしたら、温室だけは他の部屋と違って再構成されないんじゃないかって思って、桜庭さんの時の話し合いの前に置いてきたんだ。そうすれば他の人に持ってかれることもないし……。

案の定、オレが置いた場所から一切動いてなかった。」


「そうなんだ。……なるほど。もしかしたら、あの部屋にいればメッセージの言いなりにならなくても済むのかもしれないね。」


「うん?」



風花は恵が言いたいことがいまいち分かっていないようで首をかしげる。



「私たちは時間がないよね。」

「そうだな、この世界が終わった後のことが保証されてないのはオレも分かってる。あの変な本の言い草を信じるなら、この世界で真実を見つけなきゃいけないんだよな?」


「そう。

でも、一見して真実を明かす方法が見つからない。ということは、更に次の世界に行くか、それか【サポーター】にどうにかしてもらわないといけないってことだよね。」


「あー、なるほどな。」



風花も理解が及んだようで頷く。




「……あのさ、芳樹くん。」

「ん?」

「明日、3人にも相談したいことがあるんだけど。」



恵の言葉を聞いて、風花ははじめは驚いていた。しかし、内容と理由を聞いて彼も恵に賛成したらしい、了承した。






翌朝。

恵は4人を起こし、朝食を終えた後温室に集合した。



「で、恵? 探索の前に相談したいことって何?」

「今日は隠し部屋の調査でしょ? やりながらじゃダメ、ってことは余程大事な話なんだね。」

「……うん、私も聞きたいかな。」



3人も興味津々というようだ。恵と風花は目を合わせると頷きあった。



「まず、ごめんなさい。3人には、隠してたことがあるの。見てもらった方が早いんだけど、この温室、違和感を感じない?」


「0と1が浮かんでないこと?」



千藤が即答した。



「そうだね。千藤くん、ガイドラインのサポーター項目、2番目を覚えてる?」

「もちろん。『ルームには必ず1部屋サポーターが支配権を持つ部屋を置き、トラブルが生じた場合、その部屋を基点にしてルームへの介入が可能となる。』でしょ?」


「……もしかして恵ちゃんたちはこの部屋がそうだと言いたいの?」



茉莉花の言葉に恵と風花は頷く。



「証拠は?」

「それを今から見せたいの。」



恵は花壇を越えた先にあるモニター、巨大パソコンを3人に見せた。

3人は戸惑いつつもまじまじと観察していた。千藤が途中電源らしきところをぽちぽちと押していたが、うんともすんとも言わなかった。




「なるほどね。で、君たちは何でこれを隠してたの?」

「それに関しては、悪い! オレがみんなに言わない方が良いって言ったんだ。舘野さんと赤根さんは疲れてるみたいだったし、千藤もどことなく集中を欠いてる感じがしたし。」


「まぁ否定はしないけど。」



風花の言葉に千藤は図星だったのか肩を竦めた。




「で、この存在を明かした上で提案があるの。」


「何かな?」



茉莉花が恵に尋ねた。





「隠し部屋の調査が終わったら、なるべく個人行動にして、温室に19時から6時の間は近づかないようにするのはどうかな。」


「へ?」

「……ふぅん。」

「どうして?」



呆けた声を出したのは琴乃、恵の言わんとすることを理解したらしい千藤は不敵な笑みを浮かべる。真っ直ぐに質問をぶつけたのは茉莉花だ。



「僕が見つけた、あの書籍のメッセージが引っかかったわけだ。」

「そう、千藤くんの言う通り。

……この世界の真実を見つけなければならない、つまりこの世界で決着をつけなきゃいけないってことだと思うの。でも探索してても目ぼしいものはないでしょ?」


「そうだけど……。」



琴乃が悔しそうに呟く。




「もちろん、探索は続ける! でも、保険のために【サポーター】が動きやすい状況を作るんだよ。」


「【サポーター】を味方と踏んで、動いてもらおうってことでしょ。いいんじゃない? 僕は賛成。」



千藤はあっさりと了承した。



「むむ……あたしもいいけど。でも! あたしは探索するからね。梅子と、約束したし。」

「おう、ありがとな。」



ほおを膨らまして琴乃は悔しそうに言う。それを風花が仕方なさそうに頭をわしわし撫でた。



「茉莉花ちゃんは、どう思う?」



恵が尋ねると茉莉花も、少し考えてから頷いた。



「そうだね。恵ちゃんと芳樹くんの提案が1番いいと思う。私も賛成。

ーーーというか、チーム温室で仲間はずれが起きたことに私は物申したいかな。」


「うう……。ごめん。」

「それは、本当に悪かった。」



茉莉花がそういうと、恵も風花もみるみる小さくなって項垂れる。それを見て千藤と琴乃は後ろで可笑しく笑っていた。



「リーダー茉莉花だね。」

「部下の失態を諌めてるみたい。」






そして5人は隠し部屋に向かった。

途中モニタールームにも立ち寄ったが今までの世界とは異なり、モニターの電源が点く気配がなかった。

茉莉花は残念そうにしていたが、恵はなぜかホッとしていた。


隠し部屋に行くと何冊か本が落ちていた。

調査した時はそんなものあっただろうか、恵は首を捻る。

恵が悩んでいる最中、風花は床下倉庫を、他の3人は本棚を漁り始める。所狭しと並んでいた本は、数冊落ちたことにより、容易に引き抜けるようになったようだ。



「蓋、踏み抜いておいて良かったな。」

「確かにね。もう桜庭さんの端末はないし。」



自分の手柄か失態かを無邪気に喜ぶ彼に自然と恵も口元が緩む。

どうやら彼曰く床下倉庫に大きな変化はないらしい。それなりの高さはあるが、彼は容易に這い出してきた。


本を読む3人の方に寄ると茉莉花が4人に対して声をかけた。



「どうしたの? 茉莉花ちゃん。」

「【サポーター】の特殊機能について、書いてある。」



隠し部屋にある簡易的な机に本を置き、4人が後方から囲い込むように見つめる。




「【サポーター】が、自身の存在を認識した場合、拠点とする部屋に存在する装置を利用することができる。

また、何らかのアクシデントがあり、存在を維持できないと自覚的他覚的に認証された場合、アバターの変更が可能である。変更した場合、記憶は変更されたアバターの整理された記憶の引き継ぎが優先的に行われる。」


「意味わかんない。」



琴乃の疑問に答えられる者はいなかった。

誰もがピンと来ていなかったのだ。そして茉莉花は淡々と音読を続ける。




「サポーター自身はウイルスバスターのような存在であり、箱庭のスキャニングが可能である。」


「自分を犠牲に世界を救うってこと、……自己犠牲も大概だね。」




千藤は今までのことを思い出したのか、呆れたような、しかしどこか落ち込んだような声で呟いた。




「廃棄された箱庭は全てダストボックスへと収納され、マザーPCの操作により消去される。

……これって、もしかして今まで消えた他のルームや参加者たちはダストボックスに入れられたってことじゃないかな。」


「じゃあ若狭先輩も、他の人らもみんなそこにいるってことか!」

「断定はできないけど……。」

「そっか。」



返事は端的であったが、風花は希望が見えたらしくどこか嬉しそうだった。



「……他のみんなのデータをこの世界に引っ張りあげたら復活するとか?」

「恵、名案かも。」



琴乃も恵の言葉に嬉しそうに頷くがどこか浮かない表情をするのは、箱庭やプログラミングに詳しい茉莉花と千藤だ。



「それは、難しいかも。現状モニターで調べられないから何とも言えないけどこのルームからダストボックスまでの距離があれば何人ものユーザー情報を引っ張りあげるのはちょっと大変……。」


「それに、仮にもう原因のウイルスがダストボックスに送られていたとしたら自分からそのウイルスを招き入れることになるんだよ。

今回の世界でモニターがうんともすんとも言わない理由、それがエラーなのか、ウイルススキャニングの効果なのか、それがはっきりしない限り何とも言えない。

そこは、【サポーター】があの変なモニターから情報を拾ってきてくれることを祈るしかないけど。」


「なら、安易にダストボックスの情報を拾おうってのは考えねー方がいいのか……。」


「必要には、なるかもしれないから。」



茉莉花が気遣うように風花に声を掛けると彼は礼を言う。

通常の世界と大差ないことが分かり、恵たちは午後から自由行動にすることとなった。まずは昼食を摂ることとなり皆、隠し部屋から出て行く。



「そういえば芳樹くんはいつになったら、名前で呼べるの?」

「う……。」

「部屋で練習したんでしょ?」

「何で知ってるんだよ!」



恵が風花を揶揄いながら歩いているときだった。恵とは反対側にいた茉莉花の身体がぐらりと傾いた。

恵のあ、という声に風花が振り向き、咄嗟に支えたことで地面に叩きつけられることは防がれた。



「茉莉花ちゃん? どうしたの?」

「う、大丈夫。ちょっと目眩がしただけだよ。」

「赤根さん、また寝られてないのか? 午後は休んだ方が……。」


「大丈夫だよ。少しだけ横になったら治るから。」



そう言うと彼女はやんわりと風花の手を解き、隠し部屋から出て行った。まるで2人の追及を拒否するかのように。



「……大丈夫かな。」

「オレも気にかけとくけど、乙川さんもお願いな。」

「うん、」



恵は頷く。

その日茉莉花が2人を頼ることはなく、そして進展もないまま2日目は過ぎて行った。



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