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Remained GaMe  作者: ぼんばん
3章 明日のない私たちは
27/50

解決編③ -前編-

「さて……今回は今までにないけど。どうすればいいんだろうな。」


「今回に関しては君が仕切るのがいいと思う…よ?」

「え、オレか……。」

「そう、【アリバイ】をまとめれば分かると思うけど……今回、君は事件に全く関与してないからね。」

「そう言われるとちょっと悲しいけど……、時系列順にまとめるか。」



茉莉花に促され、風花が考えるように言う。



「じゃあ昨日の晩から遡るか。

八重島さんと桜庭さんが部屋で……添い寝しててその場は流れ解散になった。

各自部屋に戻った…よな? オレと千藤は部屋に戻って、千藤が先に寝てたな。」


「私と茉莉花ちゃんも。起きた時茉莉花ちゃんはいなかったけど……。」

「あたしも即寝したよー。」

「琴乃ちゃんは早かったわね……私もすぐあとに寝たわ。」

「由香ちゃんは【寝る前に桜庭くんと八重島さんが話してた】って言ってたよ?」



恵がそういうと全員の視線が集まった。彼は居心地悪そうに慄いた。



「いや、それは、その。紛らわしいことになってごめんって話で……。」

「あれ? 君、八重島さんに呼び出されたって言ってなかった?」

「それは、その……。」



千藤の指摘に視線を泳がせる。誰も口を開かず待っていると耐えきれなかったのか、半ば自棄になって叫んだ。



「あーもう! 部屋に来てキスまではしたよ! それで普通に寝てたら昨晩のことがあって……、で、仕切り直したいって寧々ちゃんに言われたからB棟の保健室で5時に待ち合わせしてたの! でもたまたま早く起きたからあっちで寝てようと思ったから保健室に居たんだよ……。」


「……ない。」



琴乃の鋭い視線に桜庭は肩を落とす。さすがの風花も耳を赤くしつつも呆れたような顔をしていた。



「それもそうだけど、赤根さんは何をしてたの? 君も部屋にいなかったんだよね?」

「……私はモニタールームにいたよ。眠れなくて。」

「まぁ確かに1番最初にいたけどね。」



何ともフォローしにくいアリバイだった。



「……この時点ではなんとも言えないな。途中起きてたなら全然あり得るし。

じゃあ次に小塚さんの時な。

そこからはオレと千藤と舘野さんはずっと一緒にいた。トイレの中抜けもしてないし。」


「私は、由香ちゃんとトイレで別れてその後は茉莉花ちゃんと合流したよ。」

「私は當間さんが桜庭くんと合流したことを確認してモニタールームに、その途中で恵ちゃんと合流したよ。」

「私は……桜庭くんを見つけてからは彼と行動していたわ。」

「オレも、途中までは1人だったけどその後はずっと當間さんといた!」


「どーだか。」



桜庭の言葉に不満げに意見をぶつけたのは琴乃であった。



「あたしはその2人のアリバイが完璧かっていうとそうでもないと思うよ?」

「どうして? 私は桜庭くんとずっと一緒にいたわよ?」



さすがの小雪も立証できるアリバイを否定されてムッとしたようだ。



「なら、あたしが2人と調査してた時、あることをした。答えられるよね?」

「は? 何、怪しいことしてたのかよ?」


「……舘野さん、トイレに行ったんだって。」



恵が言うと2人が呆けた後、へ?と声を漏らした。恐らくそのリアクションを見る限り、2人とも気づいていなかったのだろう。

それは琴乃も予想できていたことらしく、呆れたようにため息をついた。



「何のための3人組なの? ……ま、あたしは萊が怪しいから試したけどまさか小雪も気づかないとはね。」

「不甲斐ない……。」


「ふざけんなよ! そんな適当な言葉でオレを犯人に仕立て上げようっつうのか?!」



桜庭は近くにあった機材を八つ当たりであろう、思い切り叩いた。



「落ち着いてくださいよ、桜庭さん。」

「うるせーな! 今回はアリバイがあるからって余裕かましやがって……。」




ここまで乱れる桜庭は初めて見た。

恵と小雪は僅かに桜庭から距離を取る。




「……まぁ、時系列順にまとめた訳だけど、今回は容疑者が多すぎるね。」

「なら僕から質問してもいい?」



千藤が風花に向かって尋ねた。



「小塚さんはなぜ消されたんだろうね? 被害者を増やすことで残る証拠は増えるはずだよ。」

「確かにね……。」



千藤の言葉に桜庭以外は冷静さを取り戻す。

恵があの時の、そわそわした様子の由香を思い出す。




「……心当たりがあった、とか? 目撃でも、証拠をつかんだ、でも何でもいいよね?」


「僕もその可能性が高いと思う。

それを踏まえて考えると、小塚さんに関しては犯人が絞られる。」

「もしかしてさっきの【実験】のことか?」



幾名かが不思議そうな顔をする。そこで茉莉花と風花はアイコンタクトをした。

恐らくその短時間で風花は自分が責を全うすべきと感じ取ったらしい。そのまま続ける。



「ほら、赤根さんが言ってた実験だよ。

内容は、オレが自分の端末と乙川さんの端末で赤根さんのコードを読み込んだ状態でタイムアウトがあるかないかを確認する実験だったんだ。このエリア内であればどこでも有効だったけど約10分しか画面の保持はできない。

つまり、小塚さんが消える10分以内に彼女は犯人と会っていたってこと。」


「つまり、あたしと春翔も容疑者から外れるってこと?」


「……僕は乙川さんも外していいと思うけどね。仮に彼女が犯人だとしてどうしてトイレの窓を開ける工作をしたのか、最後に小塚さんが乙川さんに縋ったのか、しかも2人の仲ならわざわざ打撲を食らわす必要もないと思うかな。」



桜庭は腑に落ちなそうにしているが他のメンバーは納得したようだ。

恵は内心で安堵する。親友の退場を疑われるのはすこぶる居心地が悪かった。




「あたしも気になることがあるんだけどいい?」




琴乃が挙手をした。

風花がああ、と何かを考え込むような素振りをしながら頷く。




「温室って、端末が使えないんだよね? でも寧々は温室で【強制退場】させられた。どうやって? 何でだろ?」


「それは彼女の【アバター状態】と結びつくのかも。彼女が【全身に擦り傷】を負っていたことと【裏庭から温室に向かって引きずった跡】があったことを考えると彼女は裏庭の方で気絶して、温室に運ばれてきたってことだよね?」


「なるほど……。なら女の子の可能性が高い、のかな?」

「それ、茉莉花ちゃん自身の首を絞めてると思うけど…。」



茉莉花の言葉に小雪が苦笑しつつ指摘する。



「でも、引きずるのは男の人にだってできるよ?」

「恵の言う通りだね。」

「なら、八重島さんは何で無抵抗で運ばれてたんだろうな? 他の外傷とかはなかったよね?」


「……睡眠薬、じゃないかな?」




風花の質問には恵が答える。




「なら、保健室にいた桜庭くんが怪しいわね。あそこには色んな種類の薬があったから。」

「なんだよ、小雪ちゃんまで言うわけ?!」



悲鳴のような反論を桜庭は叫ぶ。

どうも彼からこれ以上冷静な意見は聞くことができなそうだった。


今までの話を纏めると、桜庭が犯人の場合、彼は保健室かどこかは定かではないが寧々を呼び出し、睡眠薬を寧々に与えた。そして、彼女を温室に運び、消滅させたということになる。




「……でも、睡眠薬を手に入れる方法はもう1つあるよ。舘野さんの端末からダウンロードする方法。」


「そう。 あたし出した覚えないのに。」




今思い出したのか手を叩いて琴乃が呟く。




「なんだよ……なら、同室の小雪ちゃんが犯人じゃないの? それか茉莉花ちゃんが小雪ちゃんとグルだったとか?」

「……何よそれ!」

「私も違う。」


「なぁ、ちょっと。」



ヒートアップしてくる3人の間に風花が入り、会話を遮る。




「ちょっと小塚さんの方についても考えてみない? 3人までは絞れたんだし……。」

「そう、だね。」



恵の頭には、消える瞬間の由香の姿が何度も思い出される。

必死に頭を横に振る彼女の姿を横目に見つつ、風花は話を続けた。




「オレ、ずっと引っかかってたんだけど。【強制退場】って1回のログインにつき1回の使用に限られてるだろ? なら、2人消すのに2つの端末が要るよな?」




恵と琴乃は、あれ?と首をかしげる。彼は【寧々の端末が強制退場使用済み】であることを知っているはずだった。




「なら、犯人は私以外の2人ってこと?」

「そうとも限らないんじゃないかな……ほら、八重島さんの端末を使った、とか?」

「でも、由香ちゃんの端末は消えちゃったし、寧々ちゃんの端末も消えてるんじゃないかしら?」




風花が無意識か、自身の尻ポケットを触れる。

ふと目線が交わる。このカードは今、出すべきだろう。恵は頷いた。




「……それが赤根さんの言う通りなんだよね。これ、八重島さんの端末でこっちはオレの端末。

ついでに八重島さんの端末は【強制退場使用済み】になってんだよ。」




「……えー、つまりは?」



桜庭が理解できないようで風花に尋ねた。




「たぶん、八重島さんの【強制退場】は犯人の端末で、小塚さんの【強制退場】は八重島さんの端末で行われたんじゃないかな。」


「でも、おかしいよ。なら何で八重島さんの端末は裏庭に隠すように置いてあったの?」




恵の言葉に風花は押し黙る。

どう考えたっておかしいのだ。揉み合いになり、【強制退場】を押されていたら恵の目の前まで出てくることは叶わなかったわけであったし、押される前に手に入れることができたなら、つまり自滅ということになるのだ。


謎は迷宮入りになるように思われた。しかし、口を開いたのは千藤だった。







「仮に、今まで得てきた情報に嘘があったらどうする?」






誰も返事ができない。千藤を振り向くことしか叶わない。




「……例えば、【強制退場】は複数回使えるとか、」



「例えば、自分の端末で自分を【強制退場】できる、とか。」







恵は鈍器で殴られた気分だった。

もし、千藤の仮説が事実として。



なら、

『米田に対して米田自身の端末で【強制退場】を試みたができなかった。』


その若狭の言葉は嘘になるのだから。







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