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Remained GaMe  作者: ぼんばん
0章 箱庭ゲームへヨうコそ
2/50

自己紹介

「……う、慣れないな。」



 恵は慣れないログインの感覚に酔いつつも目を開けた。周りを見るといつもの施設のログインルームだ。


 彼女が待ち人を待っている間に箱庭ゲームの概要について説明しよう。




 近年、社会は少子高齢化、引きこもり、犯罪の若年化などさまざまな問題に悩まされていた。

 特に若年層の“無気力化”は大人たちを脅かすまでの社会問題となっていた。

 どうしたものか、そこでとある政治家は思いついた。


 子どもたちが夢中になっているゲームで更生をさせてみてはどうかと。


 彼らの目論見は見事に上手くいった。子ども特有の脳波にのみマッチする特殊な機器を使用し、仮想世界『箱庭』にてコミュニケーションをとったりミッションに取り組むことで子どもたちに欠けていたものを学び直させることに成功したのだ。


 『箱庭』は決して大人から干渉することはできなかったが、1回のログインにつき1回使用できる『捕縛』『強制退場』の機能により、子どもたち同士でルールを決めることができた。

 また、『箱庭』から要請があれば大人たちの介入も可能であった。



 今は、“無気力”な子どもたち以外でも高校生を中心に利用ができるようになっており、ブームにもなっているくらいだった。

 もちろん利用するにあたって面接があり、優先度が割り振られるのだから、殆どは“無気力”な子どもたちの参加だった。



 さて、次に彼女こと乙川恵の紹介だ。


 高校2年生、黒髪のボブに丸いぱっちりとした瞳の女の子である。ご覧になっていただいたように、彼女は比較的おとなしい。しかし、心を許した相手には普通に話す、いわゆる人見知りの子であった。



「あ、由香ちゃん!」


「恵ー!久しぶりー!」



 恵に抱きついた、長身の切れ目の女の子は小塚由香(こづかゆか)。高校3年生で、恵の待ち人である。



「今回は13人部屋みたいだね。」

「そうだね、全く…2人っきりでいいっていうのにな。」

「それじゃゲームの意味なくなっちゃうよー。」

「それもそっか。」



 2人は笑い合いながらログインルームから出た。

 箱庭ゲームには6人、8人、13人、15人部屋があり、毎回ランダムに振り分けられる。ただ友だちと一緒に予約していれば一緒にログインできる。

 13人部屋のステージは周りが森に囲まれた“ルーム”で、玄関ホールを中心にA棟B棟がある。

裏に回ると倉庫とガラス張りの温室がある。



「じゃあ、ホールに行こうか。」

「うん。」



 そして、箱庭ゲームにはルールがある。

 まずはA棟にあるホールに集合して、自己紹介をしなければならないのだ。







 ホールに行くとすでに残りの11人がログインしており、扉を開けた私たちに視線が集まった。



「やっと集まりましたね!」


「お!可愛い女の子じゃん!やったー!」


「……はぁ、呆れるな。」



 何やら今回はキャラの濃そうな人たちが集まっている、それを言葉にせずに恵は飲み込んだ。



「おっし、これで全員だな!じゃあ自己紹介しようぜ!」



 黒髪短髪のトレーナーを身に纏った男の子が明るく言ってのけた。恵は一瞬肩を震わせ、1歩分由香に近づいた。




「オレは若狭浩太郎(わかさこうたろう)、高3で陸上部。今回初参加で、こっちの風花と一緒に来た!色々分かんねーことも多いけど、よろしくな!」


「……先輩、そういう個人的な人間関係はここで言っちゃダメっすよ。」


「えっ、そうなのか?」



 彼の隣にいた、少しだけ小さい猫っ毛の男の子がため息をついた。



「まぁ言っちゃったもんは仕方ないっすね。オレは風花芳樹(かざはなよしき)。高2で同じく陸上部。今回は13人部屋の温室に来たくて…ま、よろしく。」


「……植物好きなの?」


「結構な。」



 隣のおさげの女の子に尋ねられ、風花は嬉しそうに頷く。のんびりした雰囲気の彼女はタレ目の優しそうな顔をみんなに向けた。



「えーと…私は赤根茉莉花(あかねまりか)。高1…いつもログインしてプログラミングの仕事をしてるよ。よろしくね。」


「仕事人、かぁ。」



 この世界ではPC関連の仕事であれば、ログインしたままこなす事ができる。ネットが普及した世界では“無気力”な人たちにとっては人気の仕事で、子供ながらハイスペックな人も少なくはなかった。



「あたしは小塚由香。高3で、いつもこの子とログインしてんだ。よろしく。」



 恵は自分の番が回ってきて、ハッとした表情をする。皆の注目が集まっているのは苦痛だが、この時間だけだ。



「乙川恵です…。高2です…。」


「…………。」



 何やら若狭から熱い視線を感じる。再び由香の後ろに隠れると、彼女はそれに気づき、睨み返していた。



「何よ?」


「や、悪い!なんでもねーよ!」



 隣で何やら風花はニヤケていたが、2人がそれに気付くそぶりは無かった。



「私もいいですかね?私は當間小雪(とうまこゆき)です。高3です。よろしくお願いします。」

舘野琴乃(たてのことの)だよぉ。……高1、よろしくぅ。」



 物腰は柔らかそうだが赤茶色の髪にパーマをかけたヤンキーのような小雪に被せて自己紹介したのは、金髪のロングヘアを揺らし、気力が無さそうな琴乃であった。



「琴乃っちは元気ないなぁ!あたしは八重島寧々(やえじまねね)!この世界だったら無限にオシャレできるからね!あと彼氏募集中だからぁ、よろしく!」


「苦手なタイプかも…。」

「こらこら。」



 ツインテを揺らすギャルのような少女に恵は明らかに一線を引いていた。



「ちょっと、周りが引いているじゃない!自重なさい。」

「えー、何?うざぁ。」



 隣の眼鏡の女の子が恵以上に嫌悪感を明らかにして寧々を睨みつけた。



「私は涼宮梅子(すずみやうめこ)、高3です。いくらなんでもここが電脳世界とはいえ、ある程度の規律は守ってもらいますからね!」

「………今回外れたかも。」


「まぁまぁ…僕は千藤春翔(せんどうはると)だよ。高2。みんなと仲良くなれたらなって思ってるよ。よろしくね。」



 梅子の隣の儚げな少年は2人を宥めつつ微笑んだ。

 恵も由香もその雰囲気にはほう、と息をついてしまった。



「……次はオレかな?米田栄太(よねだえいた)です。高校3年生で…一応先生を目指してて受験の息抜きに来ました。よろしくね。」


「そっかー、受験の息抜きかぁ。オレは桜庭萊(さくらばらい)!オレも彼女募集なんだよねー!ま、よろしくー!」



 馴れ馴れしく組まれた腕を振り払うことなく米田は苦笑いしていた。桜庭は気を良くしたのかライオンのような金色の髪を揺らしていた。



「今回は阿保そうなのが多いな。…私は前川宗佑(まえかわそうすけ)だ。高1、赤根さんと同じ、プログラミングをしている。」

「そっか、よろしくね。」

「フン…。」



 眼鏡を上げつつ彼はそっぽを向いた。

 これで全員、13人の自己紹介が終わった。



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