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第1話 最弱の最強宣言

よろしくお願いします。

「んん〜、晴れてよかったなあ、ルリ!」


「フニュ〜!」


雲一つない青空の下、僕はパートナーのルリと共にノーザンアイギスへと向かっていた。


ノーザンアイギスとはテイマーの為の訓練学校であり、15歳を迎えたテイマーは3年間の間、訓練校に通うことを義務付けられている。


「見て見て、ルリ! あれがノーザンアイギスだ、すっごいなあ〜、まるでお城みたいだ」


「フ、フニュウ……」


僕もルリもここまで巨大な建物を間近で見るのは初めで、まるで開いた口が塞がらない。


あ、ルリというのは、僕のパートナーであるスライムのことだ。

このルリという名前の理由は、単純かもしれないが、体の色が綺麗な瑠璃色をしているからルリである。


実際ルリの事をパートナーと呼べるのか怪しい所だが、それでも僕達はお互いを最高のパートナーだと思っている。


「あ、ルリ、橋の下凄いよ! 小さな海竜とかクラゲとか沢山いる! これ全部誰かのパートナーなのかな」


そうして僕らが周りの景色に圧倒されていると、いつの間にか橋を渡り終え、学園の玄関へと到着していた。


学園の前で辺りを見回すと、彼らも今日から入学するのであろう、多くのテイマーで賑わっている。

目立っているテイマーとしては、リザードマンや怪鳥、後はハーピィーを連れている者だろうか。


「いや〜、ここまで同時に沢山のテイマーを見るのは初めだよ……」


「フニュニュ! フニュ!」


「お、ルリ、凄くやる気満々だね。沢山のパートナーを見て燃えてきちゃった?」


すると、ルリは燃えた目をしながら大いにうなづく。

普段大人しめのルリがここまで感情を露わにするのは珍しい、よほど昂ぶっているのだろう。


「そうだよね……あれから3年、ようやく僕達にもチャンスが巡ってきたんだ」


そう、これから僕達はもっと強くならないといけない、自分たちの存在を世界に証明するために、そのために。


「絶対になってやろうね、最強のテイマーにさ」


「フニュ〜フニュフニュフニュ!」


さあ、僕達の戦いが今始まるんだーー。




「はぁ、入学希望? そのスライムで? しかもマギアルも感知されないし、君達ってアンレートじゃん。そんなんで本気で入学する気なのかい?」


意気込んだは良いものの、受付で突然のこの反応……ま、まあ、正直予想の範囲内だ。


「はい! それでも入学したいんです! あの〜、入学試験の会場ってどこですか?」


「いいや、いいよ君達は受けなくて」


「……へ?」


「入学試験を行うのもタダじゃないんだよ、君達なんて最下位確定だし、時間の無駄だから。まあそれでも、入学申請だけはしておいてやるよ」


確かにこの入学試験は、入学できるかどうかを測るものではなく、あくまでクラス分けの参考になるものなので、入学することはできるが、でも……。


「い、いや、でも、入学する者には試験を受ける権利が……」


すると、受付の大柄な男はサングラス外し、僕に顔を近づけ、睨みつけてくる。

中身はかなり人相の悪い顔をしていて、僕も少しだけ怖じ気づいてしまった。


「あのさ、なんか文句ある? 入学申請だけでもしてやるだけマシだと思えよ? わかったか? わかったら、さっさと出ていきな」


「は、はい…………」


そしてその勢いに圧倒されたまま、不本意ながらも学園から追い出されてしまった。


……というかなんだあいつは、普通受付の人間というのは優しいお姉さんとかじゃないのか。


いったいなぜ、あんなゴリゴリのいかついおっさんが受付なんてやっているんだ、ふざけるな、もっと美人を用意しろ。


「ねえ見て、あそこの子、連れてるのスライムじゃん。ウケる〜、あんなんで入学する気なのかなぁ?」


「しかもアンレートじゃん、スライムとの即席ペアでこの学園に入学するなんて自殺行為すぎない?」


さっきは昂ぶっていて気づかなかったが、周りでは僕達に向けての悪口や嘲笑が囁かれている。


加えて中には、まるで僕達に聞こえるように、わざと大声で話をする者もいて、まあ元々から悪目立ちするだろうとは思っていたが、正直ここまでとは。


「フニュ〜……」


ひたすら僕を心配そうに見つめるルリ。

うん、ルリはやっぱり優しいな。


……そう、今馬鹿にされている原因の1つ、僕らはアンレートなのだ。


まず、アンレートとは何か。これはマギアルで繋がっていないテイマーとパートナーのことだ。


そして、マギアルとはテイマーと召喚されたパートナーを結ぶ魔力の繋がりのことである。


これにより、テイマーはパートナーに魔力を送ったり、パートナーがどのテイマーのものなのかを識別できるようになっている。

もちろん、マギアルの有無は戦いにも影響する所が多い。


そもそも、なぜ僕らにマギアルが存在しないのか、理由は簡単、僕がルリを召喚した訳ではなく、テイマーに捨てられたルリを僕がパートナーとして選んだからだ。


「ま、こうなるのは分かっていたことさ。それに僕達は決めたんだ、この中で僕達のこと、最弱と最弱が最強にだってなれるってこと証明してやろうって。だよね、ルリ?」


「フニュフニュ〜!」


その言葉を聞いて、ルリは安心したように元気な顔になる。

そう、僕達はこんな所で折れる訳にはいかない。


「そうだ、これからさ僕達に何があっても後戻り出来ないよう、宣言でもしておこうか」


そう言い僕らは、迷いのない表情で前を見据え、僕らを認めない奴らに、そしてこの学園に向けて宣言する。


「ふ〜……お前らよく聞け! この僕、ユート フェリエとパートナーのルリは、この学園で最強のテイマーになる! だから僕達のこと、その目によ〜く焼き付けておきやがれ!」


「フニュッフニュッフニュ〜!」


「………………」


……ふう、やりきった。どうだ、みんなを見てみろ、全員口を開けてポカーンとしてるじゃないか。

これはきっと、堂々とした僕らの宣言に慄き、声も出せないのだろう。


うん、きっとそうだ、そうに違いない。


……どうか、そうであって欲しい。


「よ、よし、い、行こうかルリ」


「フニュ!」


そ、そうだ、僕らは堂々としていればいいんだ。

僕は何一つ間違ったことは言っていない、これはいずれ事実になるのだから。


段々と心の底から、何かが押し寄せてくるのを感じるが、どうにか押し殺し、僕とルリはそそくさとその場を後にした。











しばらく歩くと、だいぶ開けた場所に着いた。

ここは学園の端ということもあり、辺りを見ても誰一人としていない様だ。


……というより、今僕は非常に一人になりたかった。


誰もいないことを確認すると思わず僕は、両膝を地面につき、頭を抱える。


「ああああああ、なんで僕はあんなことを言ってしまったんだぁぁぁ! 恥ずかしい、恥ずかしすぎるだろぉぉぉ!」


確かにあの時は感情が高揚していたし、周りに苛立ちを感じていたとは言え、あんなに大声で叫ぶ必要はなかったんじゃないか?


本当ならあんなもの気にせず、堂々と立ち去るだけで良かったんじゃないか?


実は心の中で、もっとかっこよく、クールに最強になる手順を考えていたというのに。


これじゃまるで台無しだ。

というか、これだと後戻り出来なくなったのは僕らの志ではなく、僕の評判じゃないか……。


「ああ……死にたい」


「フニュッ!? フニュフニュ!」


僕がそう言うと、ルリが驚いた様に僕に飛びついてきて、励まそうとする。


「ごめんルリ、冗談、冗談だから。心配しなくても、もう本気で死のうなんて、一生しないから、ね?」


「フニュ、フニュウ……」


ため息の様に鳴き、ルリは安堵の表情を浮かべる。


思えばあの時、馬鹿にされてもルリは、ずっと堂々としていた。

……ルリはやっぱり凄い奴だ。

正直僕じゃ、まだまだルリには敵わない。


うん、こんなことで落ち込んではいられないな。

結局あれは真に僕の目標なのだから、元々恥ずかしがる必要なんてないさ。


「……よし! 気を取り直して、学園の中でもちょっと探索してみようか。こんなに広い学園、把握しておいて損はないしね」


するとルリは頷き、僕の肩に飛び乗った。

実際これが、僕らの移動スタイルでもある。


「じゃあ、どこから行こうかな〜。あ、とりあえず寮とかーー」


「ぁぁぁぁぁぁ」


「ん、ルリ、なんか聞こえない?」


「フニュ?」


なんだかどこからか、叫ぶ様な声が聞こえる。

見回しても、人はいないはずなのだが……。


「きゃああああああ!」


ーーん、上か!?

僕は急いで上を見上げる、すると金髪の女の子が空から落ちてきているではないか。


「やっば、ルリ、巨大化して受け止めて!」


僕は急いでルリの背中に触れ、魔力を注ぎ込む。


「フニュ! フ〜ニュ〜ウ〜」


するとルリは僕から得た魔力と空気中の水分を混ぜ合わせ、体を巨大化させていく。


先ほど僕とルリは、マギアルで繋がっていないと言ったが、魔力の移動は直接触れていれば可能だ。


なので、マギアルの有る利点としては、触れていなくても魔力の移動が可能だという所にある。


「よし、間に合った! 後はそのまま落ちてくれれば……」


「ああああああ、あぐっ」


どうにかルリの上に落下してくれた彼女は、ポヨンとルリの上でバウンドし、そのままーー。


「……へ?」


僕の上に落下してきた。

思わない展開で、僕は受け止めきれず、そのまま彼女に押し倒される。




「……っててて、あの、君ーー」


もにゅん。


もにゅん?


んー、なんだろう、この右手にぴったりでフィット感抜群の感触は。


これは何だか、ついつい握ってしまうなあ。


柔らかいなあ……うん、物凄く、柔らかい。


だけどなんだろう、この頭をよぎる不安感は、いったい……。


「こ、こ、こ、この……」


僕がゆっくり真正面を見ると、そこにいたのは顔を真っ赤にし、怒りを露わにした、レディ。


冷静に分析しよう、女性、触られる、怒る、柔らかい、触れていたい。


このワードで検索すると答えはーー。


「そうだ、これは、おっぱいだ!」


「無礼者ぉぉぉ!」


さあ来い、ビンタを食らう覚悟は出来てーー。


一瞬で頰に凄まじい衝撃が走る、しかしバチンではなくガツンと。


そうそれは、凄まじく綺麗なフォームで繰り出された、右ストレートだった。


「ーーかはっ! こ、拳……だと……」


そのまま僕は後方へとノックアウトされ、試合終了のゴングが……鳴ってしまった。

出来るだけ早く更新したいと思います。

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