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捨てるって言ってない  作者: 岩崎都麻絵
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捨てるって言ってない

 ある日、ヨメが泣きそうな様子でオレに訴えてきた。

「お義母さんたら酷いのよ。お義母さんから邪魔だから捨てましょうと言われた、古い型の電気釜、無くなっているって突然言い出したのよ。お義母さんが捨てましょうと言ったからこの前の粗大ゴミの日に一緒に捨てにいったじゃないですかと答えたら、わたしは捨てようなんて言っていないと言い返すのよ。

 わたしは家財道具を誰にも黙って捨てたりしないわよ。同意があったから捨てたのに酷いじゃない。いつも綺麗に片付けて余計なものは捨てようと言っているのに、そんなこと言い出すんだから」

 嗚呼、新しく買い替えたから古い物を処分するかどうかの揉め事……、前にも似たような出来事があったような気がする……。お袋は綺麗好きだ。昔からきちんと片付けておかないと気が済まない性質(たち)だ。ヨメはまめに掃除するが、お袋のレベルまで達していない。オレから言わせればお袋の綺麗好きは度が過ぎている。

「年齢で物忘れしているんだから、まあ」

 ヨメをそう慰めるしかなかった。

「それにしたって、悪いのは全部わたしにされるのよ。忘れているからってあんまりだわ」

 そうは言いながら、お袋に強く言い返したり、怒鳴ったりしない、我慢強いヨメである。オレに愚痴垂れるだけで気が済むのなら、それでいい。

 しかし、次は本当に泣き出した。

 ヨメは洗濯物を竿に通さないで、ハンガーや洗濯ピンチに干す。お袋は竿に通す。洗濯物をヨメはいつも二階のベランダに干すのだが、たまたまオレと出掛ける用事ができて帰りが夜遅くなるので、洗濯物の取り込みをお袋に頼まなければならなかった。それで、お袋が使う庭の物干し場に、ヨメが干していた。そうしたら、これじゃ駄目と言わんばかりにお袋はヨメが干している側からピンチから外して、竿に通して干し直しはじめた。

 ヨメはその場では堪えていた。

 オレと車に乗ったら泣き出し、涙ながらに顛末を話し始めた。

「何を考えているんだ!」

 一緒に怒ってやったが、帰宅してからお袋に一言言うのを失念していた。ヨメは実家や友人に電話を掛けて、お袋のしたことを訴えて、同情を得て、なんとか心の平静を保った。

 これはオレが失敗したことになるのだろうか。

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