青年、怒る
現実に見放された青年が激怒するおはなし
「おい……」
「なに?」
「おかしいよな……」
「おかしいも何も、そもそもお前の不注意というかなんというか」
「違うだろ!?何でわかんないんだよ!そうやっていつも自分の歪んだ常識に身を任せて正義ヅラしやがって!そんなんだから喧嘩がこの世には絶えないんだ!他人の常識やニュースで見たことで塗り固められた『自分ルール』だけで善悪の判断をする!それがどれだけ狂ってることなのか分かってるのか!?そうだよ、確かに自分だけでは生きていけないしそれは常識の面でも同じだろうね!ただ迎合ばかりしているからいびつな争いが起こるんだよ!その極致が戦争なんだ!たった2、3人で行われる口喧嘩も国同士の大規模な戦争と属性は変わらないんだよ!みんながみんな自分の常識でしかものを語らないからすれ違いが起こる!」
「でも……」
「ああそうだよ!ここで論じても何も変わりはしないことぐらい分かってるさ。それでも!俺は今主張したい!人間の愚かさを!人間の醜さを!自分の常識、自分の感覚、自分ルール!『相手の気持ちになって考えろ』だなんて大人は言うけどさあ!こっちの事情を考えもしない相手の事情だなんて考える必要もないだろう!?そうだよ!愚かすぎる!自分のことすら完全には把握しきってない人間が他人の気持ちなんて想像の範囲でしか推し量れないんだよ!」
「確かに自分を把握しきれてなかったな」
「その通りだ!俺の言っていることが支離滅裂に聞こえるか!?極論を言うとさあ、考えの分からない相手の考えなんて他人からすれば全部が全部気持ち悪い、支離滅裂な、理解不能な事だと言ったって過言じゃないって言えるんだよ!あああ!!分からねえ!自分のことすら!現代社会はなあ!学校では人類に本質的には必要ないことばかり教えてて本当に重要なことは伝えない!将来の仕事に使うかもしれんがそれは古代より人間が必要としてきたことではない!必要な教科なんてせいぜい英語と保健体育くらいだろ!」
「そればかりは同意見。」
「そうだ!小学校の時に先生に一回はこんなこと言われただろう!『同じクラスなんだからみんな仲良くしようね』ってなあ!ふざけるのもいい加減にしやがれ!40人近くも他人がいるのに仲良しこよしなんてしてられるか!自分に当てはめて考えてみろ!職員室に嫌いな同僚はいなかったのか?校長が偉そうにしているのが気に食わないと一度でも思ったことはなかったのか!?自分にできないことを他人に強制することで矯正なんてしようとするなよ!人のふり見て我がふり直せって聞いたことないのか?理想論で教育なんてやりようがないんだよ!歪んで汚れた大人が純粋無垢な子供を作りたいんなら人工知能の教師でも使って育てろよ!」
「気持ちは分かる。だがな……」
「本当か?本当に分かって言ってんのか!?さっき言ったばっかりだろ!他人の気持ちなんて推し量ることしかできないってな!お前が俺に共感出来るならお前も馬鹿みたいに怒り狂ってなくちゃおかしいんだ。共感!そうだよ共感だ!自分と他人とには絶対に破れない壁があるから人間は自分と本質的に違う奴を嫌う!たくさんの人数が集まればそれは少数派の排除へと繋がる!オタクが気持ち悪い、1人きりの奴が気持ち悪い、ひいては異性すら気持ち悪い!その感情は否定しない。だが表現方法が完全におかしい!他人の感情を推し量ることすらせずに濁流のごとく自分の考えだけを垂れ流す!馬鹿なのか?馬鹿なんだろうな!」
「垂れ流してんのはお前も同じだろ、色々な意味で。」
「うるせえ!もう我慢できなかったんだよ!俺だけじゃねえ!この世には我慢の効かないバカが多すぎる!自分がこの世で絶対だと信じて疑わない!世界の中心だと思い込んでやがる!愛でも叫んでろ馬鹿どもが!愛!これも間違いだ!いや、愛の存在自体を否定するわけではない。というか信じていないとやってられない。でもなあ、使い方を間違っている奴が多すぎるんだよ!家族愛を謳って自分の子供をを束縛する奴!隣人愛と詐称して同調を矯正する奴!正しい愛を自称して二次元だの同性愛だの毛色の違う愛を否定する奴!やってられるか!自分と他人が別のものなのを理解しているつもりになって本質的には理解してねえ!要するになあ、俺と!お前らとは!違うんだよ!絶対的にな!だから他人を、俺を、はなから否定すんのはやめてくれ!お願いだから……本当に、悔しいことだからさあ……!畜生め……。」
「満足したか?」
「まだだ……終われねえ……このままじゃ……俺は間違ってない……!」
「主張は間違ってないかもしれんが、それをトイレに間に合わなかったのを誤魔化すように言われてもな。」
おしまい
色々なところにオチのヒントを散りばめてます
勢いで書いた感満載