君に会いたかったから
君に会いたかったから、
遠くの野山を駆け巡って、川を渡った。
そうしたら2頭の熊に出会った、
熊は互いを愛し合い、盲目し、熱く包容している、
僕は熊に「君たちは愛し合ってるのか」と訊ね、
それに熊は当然のように「当たり前だ、君を食べる気も無くすほどにね」と返した、
2頭の幸せを願いながら僕はまた走り出す、
君に会いたかったから、
幾千の海を泳ぎ、島へ登った。
そうしたら2匹の野うさぎと出会った、
野うさぎは互いにそっぽを向き合い、それでも何故かそばにいた、
僕は野うさぎに「君たちは愛し合ってるのか」と訊ねる、野うさぎは「好きじゃなきゃこんなに嫌いになれないよ」の言ってまだ互いにそっぽを向いている。
君に会いたかったから、
僕は時間も越えて、昔へ遡り、荒れ地へ降りた。
そうしたら複数の悲しみに暮れる恐竜たちと出会った、
恐竜たちは悲しそうにして、仲間の死を惜しみながら、その亡骸を頬張っている、
僕は恐竜たちに「君たちは愛し合ってるのか」と訊ねる、恐竜は僕の存在をまず知らないのだが、
恐竜たちは「形ある彼はとてもみんなに好かれていた、しかし形無き彼は食料にしかならない」と言ってまた亡骸を頬張る。
君に会いたかったから、
僕は少し時間を戻って昔の人間に出会った。
そうしたら2人の夫婦に出会った、
僕はようやく、愛し合ってる物を見つけたと喜んで、夫婦に訊ねた。「君たちは愛し合ってるのか」
すると夫婦は悲しそうな顔で「いいや、私たちはかりそめの夫婦だ」と言って、僕から離れていった。
僕はようやく理解した、
君が言いたかったことを、
君は僕に「人は愛してるの基準がおかしい
愛とは盲目的で、時にぶつかり、心から接しているものだ、
空っぽで、中身がないものはたとえ法が繋いだとしても愛にはならない、
君と僕は結ばれないんだ」と
現代に戻り、君とまた出会い、僕は新しい価値で君と話すことにした
「友達からやり直そう」
君は静かに笑った、
何年かかるかわからないが、
僕もいつか、あの熊や野うさぎのようになってみせよう。
本当の、君に会えるまで。