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異世界のツカノマ  作者: 結字
第1章 退屈な世界におさらばを
5/22

3話 【赤い円舞曲】



今回は血の表現が多いと思います。


あまり過激には書いてないつもりではいますが、血の表現が得意ではない方はあまりオススメ出来ないのでご理解ください。


それでは第3話をお楽しみ下さい!








リンっ!


鈴の音が響く。



雨の降る公園に傘もささず、ただただ空を見上げてクルクルと回る少女。



——雨は全てを洗い流してくれる。


——雨は色んな物を隠してくれる。



だから彼女は雨が好きだ。



『だって…身体に付いた血も洗い流してくれるでしょ?』



彼女の身体に付いた血が雨によって洗い流されていく。

透き通るような白い肌が露わになり、そしてまた身体に赤い液体を付ける。


彼女の両手には《マスター》と呼ばれる人物から貰った二丁の黒いリボルバー【HelL(ヘル)・ブロウ】が握られている。



「あはははは♪ みんな脆いなぁ〜♪」



ドパァンッ!!



彼女は回りながら何度も引き金を引く。

雨が降りしきる音で銃声も遠くまでは響かない。



ズバァンッ!!



彼女にとって、この銃を撃っている瞬間がなによりも幸せな時間だった。

HelL・ブロウと、まるでワルツでも踊っているかのように。


引き金を引くたびに、雨とは違う真っ赤な液体を彼女は身体に浴びる。



いつの間にか銃声は鳴り止んでいた。

彼女の足元には、沢山の人の亡骸が出来ている。


誰が見ても異様な光景だっただろう。

普段は、子供達が楽しそうに遊具で遊んでいる場所に、今は、おびただしい程の血液と無数の亡骸が…。



ピピッ!ピピッ!



彼女の耳に付けた、ヘッドホンのような機械から電子音が鳴り響く。


「なによぉ〜。 私の楽しみの時間に通信なんて無粋じゃない…マスター♪」


『…Ri:N。遊びすぎだ。目的の《(ラスト)》を早く回収してこい』


どうやら、この少女の名前はRi():N()と呼ぶらしい。


「あはははは♪ マスターはせっかちなんだからぁ〜♪ もうしばらく遊んだら回収するってぇ〜♪」


『…あまり遊びすぎるな。 それと…Phantom(ファントム)をそちらの世界に2体送っておく。貴様の役にたてろ』


通信はそこで終わった。


「マスターはホントにせっかちだなぁ〜♪ でも…怒られる前に私もそろそろ動こうかな♪」


そして、また新たなサイレンの音が聞こえてくる。

今度は、先程よりも多くのサイレンの音だ。


「また、私の邪魔をする音…♪」


ぼそりと呟いた彼女は、背伸びをしながら音のする方角を見て笑う。


「ん〜! さぁ〜て…そろそろ飽きちゃったし、み〜んな私が壊してあげる♪ だから…おいで?」



ズバァンッ!!






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






カタンカタンッ



電車という乗り物は、どうしてこうも眠くなるのだろう。

いや、むしろ眠りに誘う為の一種の安眠グッズなのかもしれない。


「あー…ねみぃー」


朝から不可思議な事ばかりの連続で疲れた俺は、絶賛、電車の中で眠気と戦っている真っ最中だった。


「シンは相変わらず朝が弱いなー。あんまし寝過ぎると足りん頭がもっと足りなくなるで!」


「うるせー。 ってか司とそんなに学力変わらねぇだろ」


「せやった! ワイも大概やったわ!」


朝から隣でハイテンションのこいつは、入試の時、俺の後ろの席で試験を受けていたらしく、入学してすぐクラスが同じになり、尚且つ席が、またまた俺の後ろになった (たちばな) (つかさ) というエセ関西弁野郎だ。

いつも、学校指定の制服ではなく、上着は必ず青いパーカーを着ている、謎のポリシーがある男でもある。

なぜパーカーなのかという件に関しては、本人曰く…【個性】だそうだ。


髪の色は茶髪で、耳元には銀色のイヤーカフ、見た目だけで言ったらただの不良でしかない。

そんな不良君は、入学式から俺にぶっ飛んだ挨拶をしてくれた。


『これは運命や! ワイとお友達にならんと三日後には不幸が訪れるんやで! むしろ三日後とは言わず今すぐ訪れる! いや、むしろ訪れろ!』


などという、昔流行った不幸の手紙のような手法を用いて、強引にお友達勧誘をされた事は未だ鮮明に覚えている。


もちろん、直ぐに友達にはならなかった。

そもそも、こんな怪しい奴と友達になんてなりたくなかったのが本音だ。


しかし、その日から何度も奴は付きまとってきた。


学園のあらゆる所で…


教室では…


『ワイとお友達になってくれたら、なんとセットでこの5色ペンを! キャー! お買い得!』


学食では…


『飢えたわぁー。 何に飢えたかって? …そら友情やで! ドヤッ!』


終いにはトイレで…


『トイレ…WCやんな! なんて略やったっけなー。 せや! W=ワイと友達になれる C=チャンスやで!!』


そんなこんなで、いつの間にか当たり前の様な顔をして俺の隣に居るようになったのだ。


「なんや…そんな、冬の冷え込んだ夜のような冷たい眼をワイに向けおって」


「…なんでこんな奴と友達になったんだろうなーって」


「なんやって? 真琴ちゃんは大親友の司君に任せるって? 宜しくお願いします、お兄さん!」


——やっぱこいつダメだ!

しかも、いつの間にか親友にまでランクアップしてるし。


「真琴は誰にもやらん! 真琴に彼氏なんて出来たら……ああ、なんて胸糞の悪い!」


親友という単語に関して否定をしない辺り、「お前も、まんざらじゃなくね?」と二人の会話を聞いていた乗客は思ったに違いない。


「シスコンも、ここまで行くと笑えんわ…」


電車に揺られ、20分くらいで俺と司の通う高校のある駅に着く。

それまではいつも通りの、こんな会話が俺と悪友の毎日の通学風景である。


ちなみに、真琴の中学校は家から歩いて10分程度の距離なので、家から出たら直ぐに別れてしまうのだ。 兄としては実に寂しくも思う。


真琴も、来年には俺と同じ高校に通うつもりらしい。

理由は、もちろん「大好きなお兄ちゃんが居るから!」…ではなく、実際の所は制服が可愛いというのと、学校の自由な校風に憧れたというのが理由らしい。


俺と真琴の学費や生活費は、両親が残してくれた遺産から支払っている。

もともと、かなりの実業家だった塚野家の両親。

早々に路頭に迷う、という状況にもならなかったのは本当に助かった。

それに、親戚の人達も残された二人に気をかけてくれているので、そこまで困らなかったのが塚野家の現状なのだ。

ちなみに、俺の左眼の事を知っているのは真琴ただ一人だ。


ふと、思い出したように左眼に触れる。

家を出たあたりで、左眼の赤い煌めきは落ち着いていた。

しかし、電車に乗った頃に、瞳の奥がなんだか熱を帯びているような感覚が治らない。


——親父とお袋の命日だから……だよな?



「せや! そういえば今朝のニュース観たかいな! なんや、俺らの良く行くゲーセンの近くで…」



ガシャーンッ!!


突如隣の車両から窓が割られる様な音が聞こえ、その音と共に乗客の悲鳴が聞こえてくる。


「なんや? 隣が賑やかやなー! 痴漢でもあったんかいな!」


「痴漢があったからって、なんであんな音がしてくるんだよ」


「そら、あれやろ! 痴漢された儚げな美しいお嬢さんがこう…ポイッと」


「…ポイッと出来るほどの腕力があるお嬢さんの、どこが儚げなのか俺は疑問に思うんだが。 ってか、そもそもどうやったらそんな結論に辿り着くんだよ!」


「世の中は広いからなー! きっと儚げな美しい黒帯のお嬢さんだったんやって…。 ほな! 様子見てくるわ! 野次馬心がくすぐられるわぁー!」


そういう司は、シュタッ!と手を挙げ、隣の車両に嬉しそうに向かった。


——ったく…しょうがねぇな。


俺も、隣の車両の様子を見に行こうと司の後に続いた。


しかし、先に向かっていたはずの司は、隣の車両の連結部で立ち尽くしていたのだ。


「おーい! なにボサッと立ち尽くしてんだよ! 儚げな美しいお嬢さんが、実はガチムチなお爺さんってオチだったか?」


だが、司の顔は、そんな冗談も吹き飛ばしてしまう様な、凍り付いた表情をしている。


「シン…なんやあれ」


震える指で隣の車内を指差す司。


その先には…黒く禍々しい煙のようなものが人の形を象り、その煙の物体の手の先には、二人と同じ学校の制服を着た少女がぶら下がっていた。


…ぶら下がっていた?


——なんかおかしくないか?



ピチャ…ピチャッ!


俺は、ぶら下がっている彼女から滴る、大量の赤い液体を見た。


——あれは…血?


「マジ…かよ」


——なんなんだこれ!

ありえねぇだろ!!


「…うぇっ」


思わず嘔吐しそうになり、俺は口元を押さえた。


「あんなん、化け物やないか…」


目の前の惨劇に、ただただ吐き気がする。


司の言う——【化け物】の手は、少女の胸元を突き破り、そこから大量の血が滴っていた。


他の乗客も酷い最期を迎えたようだ。

明らかに、この化け物がやったのだろう。


生き残った乗客達は、真夜達とは反対側の車両へと走って逃げていく。

その後を追うかのように、化け物はゆっくりと動き始めた。

手元にぶら下がっていたはずの少女の亡骸は…いつの間にか消えている。

先程まで、床に横たわっていた他の乗客達の亡骸までもが消えていたのだ。


——あれ? さっきまであんなに床が血塗れだったはずなのに…。


そんな事を考えていた真夜の耳に司の声が響く。


「シン! 逃げるで! せやないと、ワイらまで仏さんになるわ!」


「あ…ああ」


来た道を引き返そうと、元居た車両に戻ろうと振り返る。


しかし……


「おいおい…これは絶対絶命ってやつじゃねえか?」


「あかん…あかんでこりゃ……」


そこには、もう一体の化け物が、先程まで二人の居た車両の乗客に襲いかかっている姿が目に映った。


目の前で行われているのは、一方的な虐殺。


何人もの乗客が逃げようと走り、数人の勇ましい者達は傘や拳などで立ち向かっていき、そのまま亡骸になっていく。



『嫌だ…まだ死にたくない!』


『助けてー! 誰か助けてー!』


『ははは…これは夢だ。 こんな事があってたま……ガハッ』



残っていた乗客の言葉を最後に、化け物はその車両全ての乗客を殺めていた。

やはり…化け物に襲われた乗客の殆どは煙のように消えてしまっている。


ゆっくりと、化け物はこちらに視線を向ける。


あたかも、「今度はお前らの番だ」と言っているかの様に。


化け物と目が合った、その時!左眼に感じていた違和感が、突如、痛みへと変わった。


「お…おい! どないしたんや!」


「ぐあぁぁあ!!」


——痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!



左眼の痛みに耐え切れず、その場に崩れ落ちる。


「シン! しっかりせえ! 起き上がらんと…」


「ぐっ…ぁ…!」


「眼が痛いんか? ちょっと見せて…おい、なんやその眼!?」


「あ゛?」


司の異様な反応が気になり、ポケットに入れてあったスマホを取り出す。

そして、インカメラを使って自分の顔を確認する。


俺の左眼から…赤い涙が流れ落ちていく。

瞳の色は、もとの黒い瞳ではなく、血のように濃く、濁った赤い色へと変わっていたのだ。


この瞳については解らない事が多かった。

唯一解ってるのは、昨日の路地裏で披露したあの力——



——【Innocent(イノセント)



左眼に映った者に幻覚を見せ、その者の視覚を狂わせる。といった能力だ。

ちなみに、Innocent(イノセント)と名付けたのは、他の誰でもない俺自身。


しかし、Innocent(イノセント)なら自分自身で能力のコントロールは出来る。

そもそも、瞳の色は青くなるはずなのだが…。


それに、こんな痛みは今まで経験した事がない。


「よう解らんが…その瞳については後でじっくり聞いたる! せやから、はよ立ち上がれ!」


「ぐっ…! すまない……痛みのせいで足に力が入らないんだ。 俺の事はいい! だから先に逃げろ!」


「アホか! お前さんを置いて逃げたなんて、未来のワイの嫁の真琴ちゃんになんて言えばいいねん!」


こんな状況下でも、コイツは俺の妹を嫁などとほざきやがる。


「…しゃーない。 少しは時間稼ぎしたる! せやからシンはその間に調子戻しや!」


そう言う司は、近くにかけてあった傘を持ち構える。


「馬鹿野郎…っ! 逃げねぇとお前まで……」


「ワイ…こう見えて剣道場の息子やってんねん。 傘やと役不足やけど…橘流の剣、とくと見ぃや!!」


傘を上段に構え、司は【化け物】に突っ込んでいった。


——また俺は…何かを失うのか。

もう二度と何も失わないと誓ったのに。



『もうすぐ…〓〓〓に逢える』



どこからか…声がする。


——この声は、夢に出てきた女性の声?

それにしては昔、何処かで聞いた事のある声の様な……。



その声が聞こえたと同時に、俺の左眼の痛みはスッとなくなった。

そして、また一粒の赤い涙を俺は流していた。








今回は前回より長めの文章になってます。

次回は戦闘シーンに繋げられればいいなと思っています!


真夜の左眼の異能の力の説明を書くのにかなり苦戦しました!笑



果たしてあの化け物はなんなのか!


そして鈴を付けた少女の目的とは!


真夜の左眼の力が覚醒する中

物語りはいよいよ化け物との戦闘へ!


というわけで

次回もお楽しみに!


#2017/05/29 台詞の追加 文字の改行をしました。



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