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異世界のツカノマ  作者: 結字
第1章 退屈な世界におさらばを
3/22

1話 【暖かい場所】






「ただいまー」


路地裏での一件の後、真夜はその脚で家路に着いていた。塚野家の玄関に置いてあるデジタル時計は、ちょうどPM8:00 と表示されている。


——だいぶ金のフランスパンに時間を取られたな。


真夜自身、瞳の力が無ければ瞬殺されていたであろうレベルで人間離れをしていた冴島。そんな事を考えていると…。


「おにぃ…遅いッ! どこほっつき歩いてたのさ!」


リビングの扉が開き、その向こうからは塚野家の司令塔こと、鬼の形相をした可愛らしい少女が顔を覗かせていた。


「すまんすまん! ちょっと金色のフランスパンの処理に時間がかかっちまってな」


「おにぃ…何言ってんの? 金色のフランスパンってなに?」


「俺も何言ってるんだろうなって考えてたところだ。 …しかし、そんなことより我が妹よ! 俺が帰ってこなかった事がそんなに寂しかったか!」


「べっ…べつに! 寂しい訳ないじゃない! おにぃの帰りが遅いと…夕飯の時間も遅くなっちゃうんだから困るの!」


そう、真夜の目の前に立っている最高に可愛い少女——塚野(つかの) 真琴(まこと)は、絶賛ツンデレの可愛い……それはもう素晴らしく可愛い真夜の妹なのだ。


「……ニヤニヤして気持ち悪いんですけど。早く夕飯にしよ! せっかく作ったのに冷めちゃうよ!」


妹の発言に対し、ニヤニヤとする実の兄。側から見たら、本当にこんなのが兄なのかと疑いたくなる光景だろう。

しかしこの妹、こんなツンデレを披露しているが、中2で家事や勉学、運動まで出来るといったパーフェクトな妹様である。

見た目は兄の真夜に似ず、整った顔立ちをしており、まだ発育はそこまで——(ギロッ!)


…おほんっ! 黒髪のツインテールが特徴的な可愛らしい真夜の妹なのだ。


特に塚野家のような、片方がダメダメだと、もう片方はしっかり者のハイスペックになる! という説はここに証明されている訳で。

彼女が居なければ、間違いなく塚野家は三日と持たずにゴミ屋敷に変身するだろう。兄の面子丸潰れである。


「うん! 美味い! 真琴の作るシチューは格別美味いな!」


「…特にいつもと変わらない味付けなんだけどね」


ジトーっとした視線を真夜に向ける真琴。


——そんな冷めた視線で見ないでくれ。

兄さん、変なものに目覚めてしまう。


気分を取り直して、ふと、目の前に座る真琴に目をやると、少し曇った表情で皿に残ったシチューを見つめていた。


「…真琴? どうした?」


「明日の、お父さんとお母さんの命日…忘れてないよね?」


不安そうな表情を浮かべる真琴の瞳には、微かに涙が滲んでいる。

そんな表情を見て、真夜の心はズキリと痛んだ。


「ああ…。 もちろん、しっかり覚えてる。 明日は学校が終わった後、いつもの場所で待ち合わせして…一緒にお墓に行こうな?」


真夜と真琴には両親が居ない。

言い方を変えると、二人はもう『両親には会いたくても会えない』という言い方の方がいいだろうか。


両親は、真夜がまだ8歳、真琴が5歳の時に不慮の事故に遭い亡くなっている。

家族四人で買い物に行った帰り道、目の前が突然光に覆われ、気付いた時には病院のベッドの上だった。

その時のショックからか、真夜は両親が亡くなった時の記憶が曖昧だった。

警察などの話しでは、対向車のトラックがこちらの車に正面からぶつかり、そのまま前に座っていた両親は…帰らぬ人に。

そして…


——その事故の後、俺の左眼には、こんな不気味な力が。


そっと、真夜は自分の左眼に触れる。


「おにぃ…痛むの?」


不安気な表情を浮かべ、そんな真夜の様子を気遣う真琴。


——大切な妹に…そんな顔させたら駄目だよな。


「…いや、大丈夫だ! 目の前に座る可愛すぎる妹がどうにも俺の眼には眩しいらしい!」


ドヤ顔で、妹にサムズアップをしながら痛々しい台詞を吐く兄。

…他人が見たら間違いなくドン引きだろう。


「…たまに、おにぃが本気で心配になるよ。 どうか、こんな痛いおにぃに優しくしてくれる彼女が出来ますように!」


——そんな天井を仰ぎながら、両手を組んで、本気で祈らないでください。


少し、ほんの少しだけしょんぼりとした真夜は、テーブルにノノ字を書いて落ち込んだアピールを始める。


「まったくもー! ほんと…おにぃには私がついてないと駄目なんだから!」


そう言う真琴の表情は、いつも通りの、屈託の無い優しい笑顔に戻っていた。


「ははぁー! こんな兄さんを見捨てないでくださいませ! 真琴様よ!」


「しょうがない! そなたの痛さに免じて許してやろう!」


——あ、痛いヤツ扱いは変わらないのね!


そんなこんなで、塚野家の賑やかな時間はいつも通りに流れていく。



真琴の悲しむ表情を見た時、真夜の脳裏には、両親を亡くしてからの思い出がフラッシュバックしていた。



——妹は、真琴だけは…なにがあっても守るって決めたから。 だから辛いものも、悲しいものも全部、俺が背負うって決めたんだ。



改めて、そう強く心に誓う真夜。


しかし、その時、真夜の左の眼の色が、僅かだが赤く変わっていた事を、目の前に座っていた真琴も、ましてや本人でさえも気付いてはいなかった。








2話突入しました!


1章前半は真夜の家庭環境などを書いていけたらいいなと考えてます。


そして今回は妹を登場させてみました!

塚野 真琴

名前を考えるのに2週間近く費やしたなんて言えない…。


塚野家の事情。

強く生きる2人きりの兄妹。

次話はどんな話になるのか!


そんなわけで

次回もお楽しみに!


#2017/05/29 台詞の追加 文字の改行をしました。



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