2話 【処刑人と狼】
「いやー。 シンがいきなり一本背負いを喰らった時はどないしようかと…あかんっ! シンの投げ飛ばされとる時の顔を思い出したら…また笑いが!!」
「……」
「綺麗な女の人に弱いのがいけないんだよ! おにぃ!」
「………」
「ふふっ…シンヤさん大丈夫ですか?」
「…………」
真夜は現在、すこぶる不機嫌だ。
理由はベッドに寝転ぶ真夜を囲むように位置取っている三人を見ていれば解るだろう。
真夜から見て、ベッドの右側に立つ司はその時の光景を思い出し笑っている。
その反対側では真夜の体調を気にしつつも、しっかりと司同様に笑いを堪えきれずに吹き出すファリス。
そして正面には腕を組んで頬を膨らませてお説教モード全開の真琴が立っていた。
友人と美少女には笑われ、そして妹には怒られる。
投げ飛ばされて気絶した本人からしたら理不尽な事である。
「……ぷっ……あかん! 笑い死にしてしまう!」
「お前は笑いすぎだ!!」
先程からずっと笑っている司目掛けて枕を投げつける真夜。
しかし、そんな攻撃が司に当たる筈はなく簡単にかわされて枕は綺麗に磨かれた床に落ちた。
本調子になったら司にはDestructiveを乗せた一撃を顔面に叩き込もうと真夜は心に誓うのであった。
「シンヤさんはもう少し休んだ方が良いでしょうし…ふふっ……1人にしてあげましょう!」
「ちょっと待て! こんな見ず知らずの場所に俺を1人で置いていくのか!」
真夜、最もな意見である。
そもそも現状がどういう事になってるのか知らないのだから不安になって当然だ。
「ここは安全ですよ。 少なくとも、この城の中に居る人間は皆味方だと思って頂いて構いません」
「『え!?』」
その場に元々居た真夜と司は、突如現れたダンディーなおじさまに驚かされていた。
「おっと…。 これは失礼致しました。 私の名前はランドールと申します。 この城の執事長をしているので、困った事がありましたら何なりとお申し付け下さいませ」
そう言ってお辞儀をする姿は、寝起きの時に見た恐怖映像とは程遠い完璧な紳士。
お辞儀の作法などがやはりあるのだろう。
無駄のない洗礼された動きだった。
歳は50代後半だろうか?
髪は白髪の短髪、その白髪の髪のもみあげから繋がるように生えた白い髭。
黒い執事服に白い手袋をしている。
その姿を見れば、彼が執事だというのが容易に解るだろう。
…まぁ、本物の執事は見たことがないので素人目での判断だが。
「ランドールさん…気配を消して部屋に入ってくるのはどうかと思いますよ?」
ランドールの気配に気付いていた様子のファリスは、にこやかな笑顔を浮かべてランドールに問いかける。
しかし、その笑顔は僅かに引きつっていた。
「これはこれは…《白銀の処刑人》殿もおられましたか。 なに、老いぼれのちょっとしたお遊びだとでも思ってくだされ」
「ふふっ…《血塗れた狼》さんのお遊びは心臓に悪いのですから自重してくださりませんか?」
わざとらしく、それはもうわざとらしく、ファリスのエンジェルスマイルに対してダンディースマイルで応えるランドール。
…何故かは解らないが、この2人は仲が悪いようだ。
それにしても先程から物騒な名前が飛び交っているのが気になるのだが。
「…シン。 あの執事のおっさん…只者じゃないで」
いつの間にか近付いてきていた司が小声で耳打ちをしてくる。
そんな事は言われなくても解っている。
部屋に入ってきていた事すら気付かなかったのだ。
なにより真夜は、あのランドールという執事さんに投げ飛ばされたばかりだし。
未だニコニコと笑顔を浮かべたまま互いに見つめ合っている処刑人と狼。
空気がピリピリする。
思わず冷や汗を流す真夜。
隣からはゴクリと司が喉を鳴らすのが聞こえた。
しかし、そんな空気なんてお構いなしの人間がここには居たのだ。
「おにぃ! さっきのお姫様に対しての行動についてまだ何も聞いてないんだけど!」
真琴である。
先程から腕を組んで真夜の方をずっと睨んでいたのは解って居たがこのタイミングとは…流石は我が妹だ。
そんな妹の発言に処刑人と狼は思わず吹き出す。
「ふふっ! マコトさんはやはり素敵な方ですね」
「はははっ! このお方がマコト様ですか! なるほど! この中で一番の強者かもしれませんな!」
「…えっ? えっ?」
全員からの視線を浴びて、真琴はやっと現在の状況に気付く。
そして小首を傾げながら、私何かしたの?と不思議そうな表情を浮かべるのであった。
またまた日が開いてしまって申し訳ございません!
仕事が忙しかったりと、なかなか続きが描けませんでした。
今回やっとランドールがしっかり出せました!
ここからはギャグパートが続くとは思いますが、もし良ければ次回も読んでいただけると嬉しいです!




