番外編 【金色の猛獣】
更新がかなり遅れましたが、前話の後書きにも書いていたように番外編になります。
真夜達の周りの人間達の模様を書いているので、もし良ければ見てくださると嬉しく思います。
それでは…
番外編 【金色の猛獣】
お楽しみください!
とあるゲームセンターの路地裏。
近隣の学生達からは、そこで何度か不良達に恐喝などをされたという噂も広まり、魔窟などと呼ばれる様にすらなっている場所がある。
それがこの路地裏。
そこには目つきの悪い茶髪の少年や、ニワトリの様な鶏冠をした青年達が数人で集っていた。
そんな不良達の中心に座る、異様に目立つ存在。
彼の名前は冴島 克樹
——《黄金のフランスパン》という異名を持ち、その名の通り大きなフランス……
「あ゛ぁ゛ん?」
……おほん!
立派な金色に染めたリーゼントを生やした青年が居た。
この物語は、そんな冴島が真夜に出会う数時間前の物語。
「アニキィー! 今日も立派なフラ……リーゼントですね!」
「今日もアニキの金色のフラ……リーゼントは最高っす!!」
冴島の周りに集う不良達は、それぞれリーダーである冴島の髪型を褒めていた。
なぜ褒めているのかって?
それは冴島自身、この髪型を褒められる事を非常に喜び、そしてその事を子分である彼等は理解しているからだ。
なにより、冴島の機嫌を取るのがこの路地裏での暗黙のルールになっているからでもある。
余談ではあるが冴島は、毎日このフランスパンをセットするのに8時間もかけている。
何時に起きて、何時からセットするのか聞いてみたいものである。
まぁ…それだけ気合いの入れ方が違うのだ。
「おうよ! 最高にイカすだろー?」
クシを胸ポケットから取り出し、嬉しそうに整える冴島。
そんな中、思わず心の声が漏れてしまった青年が居た。
「あれ? アニキのフランスパンにゴミが……。」
彼は名前は、亮平
冴島の子分の中で最も迂闊な言動をする為、周りからは《迂闊な亮》と呼ばれている。
そして、そんな迂闊な彼は今日もうっかり大切なアニキのリーゼントをフランスパンと….。
「……おい。」
先程までご機嫌だった冴島の周りに険悪な雰囲気が漂い始める。
「ひっ! あ……あの! フランスパンと言うのは間違えで、さ……冴島のアニキのリーゼントはかっこいいなーと!!」
「……フランス…パン……だと?」
迂闊な亮平以外の不良達は、近くの物陰に隠れたりと一目散に散っていた。
「フ……フランスパンなんて……とんでもない! アニキの金色のリーゼントは最高です!!」
「また……。 一度ならず……二度も……フランスパンって言ったなぁ…?」
それまで座って聞いて居た冴島はゆっくりと立ち上がる。
そして亮平の目の前に立ちはだかった。
この辺りの不良達からも一目置かれている、と言うより恐れられている冴島。
その理由の一つが……この長身である。
目の前に立たれる様なものなら、その者は巨人を前にした子供同然のようなものである。
そしてなにより彼の恐れられている一番の理由。
それは……
「言い残した事はあるか……?」
「……あ…う……ごっ…ごめんなさい!!」
「……歯を食いしばれぇぇええ!!!」
ゴウッ!!
風を切る様な音。
亮平の目には何が写っているのだろうか。
人間は死を直前にした時、その光景がスローモーションに見えると言うが。
ズガァァァン!!
冴島の拳は亮平の顔を掠めて後ろのコンクリートの壁を粉砕した。
そう、このパワーこそが彼の恐れられているなによりの理由なのだ。
急所などにまともに食らったとしたら…それは間違いなく死を意味する。
余談ではあるが、まだ冴島の拳で召された者は居ない。
幸か不幸か、肩の骨を粉砕させられたり顔面を整形させられたくらいで済んでいる。
「次にフランスパンなんて言ったら……解ってんだろうなぁ?」
「…………(ガクン)」
迂闊な亮平は、その恐ろしさに白目を向いて失神してしまった。
「ちっ! ムシャクシャすんなぁー! テメェーら!! その辺のガキ連れて来いや!! 憂さ晴らしすんぞ!!」
「は……はいっ!!!」
そう言って今まで隠れていた子分達は、またもや一目散に駆け出していった。
タバコに火を付け、定位置である中心のビール瓶のケースの上に腰掛ける冴島。
——毎日毎日、つまんねぇー世の中だぜ。
どっかに歯応えのある奴はいねぇーのか!
「……ちっ。」
夕日の路地裏に一匹の金色の猛獣。
この後、そんな彼をチュートリアル扱いするような青年や、頭のおかしな金髪の少女が現れるとは、まだこの時の彼には知る由もなかっただろう。
「……そんなにフランスパンに見えんのか?」
冴島の悲しい呟きは虚しく、ゲームセンターの雑音に掻き消さた。
そしてまもなく、彼の運命の瞬間が訪れる。
この物語の終わりを迎える為に。
『ちょっとこっちこいや!!』
賑やかな通りの方から、子分に囲まれて一人の黒髪の青年が連れてこられてるのが見える。
きっとこの青年が連れて行かれる様を、通り過ぎる人々はただ見て見ぬ振りをしたのだろう。
——世の中なんてそんなもんだ。
「アニキー! 連れて来やしたぜ!!」
——誰も救っちゃくれない。
「亮平! てめぇはそろそろ起きろ!」
——己は己の拳で守るだけだ。
金色の猛獣は獲物をただ狩るのみ。
この世界の汚い部分を喰らうかのように。
そして物語は動き出す。
……異世界へと続く物語が動き出す。
そう。
これは冴島 克樹の物語。
と言うわけでやっと金色のフランスパンの物語が書けました!
少しでしたが彼がどんな人物だったのか判るような内容になってればいいなと思います。
作中に冴島がタバコを吸っていますが、彼は20歳を超えているので問題はありません!笑
タバコは20を超えてから!
作者からのお願い的な事も書いておきます!
次回も番外編になりますが、作者が個人的に好きなもう一人のキャラの物語が書ければいいなと思ってます。
それでは次回まで暫しお待ちを!
#2017/05/29 台詞の追加 文章の変更をしました。




