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異世界のツカノマ  作者: 結字
第1章 退屈な世界におさらばを
14/22

12話 【繋がる願い】





両親の命日。


毎年、普段通り学校に向かいダラダラと授業を受け、その放課後、真琴と二人で墓参りに行くだけの平凡な1日の予定だった。


しかし今年は違う。

何処からともなく化け物が現れ、そいつを退治するべく奮闘し、挙げ句の果てにはRi:Nとか言う変な少女に真琴を誘拐され、ファーストキスまで……。



——こんな厄日ありえねぇだろ。

なにが悲しくてこんな目に遭わなきゃいけないんだよ。



そんな事を考えながら真夜は暗くなりかけた街中を走る。

いつの間にか雨は止んだらしく、水溜りには街の灯りが反射し、キラキラして見えた。


通り過ぎる人々は真夜の置かれた現状など何も知らないのだろう。

時折スマホを覗いて、先程駅で起きた事件のニュースを口にしている人も見える。



——今頃は……真琴の作った夕飯を食べてる頃だったのになぁ。



全くもってついてない1日にため息が出そうだ。

こんなに怪我もして……ふと自分の足元を見る。


少し違和感はあるが、行動するのに問題はなさそうだ。

それだけ麻弓さんの腕が良かったということだろう、後日改めてお礼を言わなければ。


とにかく、今はここまで繋いでくれた麻弓さんとアリスちゃんの為に、なんとしても真琴を救い出さないといけない。



——その為には……まず司との合流が先決か。



あのRi:Nとかいう少女を止めるには、確実に司の力が必要になる。


今まで司自身の話しをあまり聞かされたことが無く、逆にこちらの家の事情もそこまで詳しくは話していないままダラダラと友人関係を続けていた。


しかし今回、彼が見せた橘流の技。

全く知らなかった一面を見せられた真夜は、友人と名乗るのも恥ずかしくなる。

それだけ互いの事を知らなかったということだ。


だが、知らなかったからこそ友人でいられたのも事実なのではないかと思う。

互いに抱えた闇はそれなりに深い。


故に友人になれたのではないかと。



——とにかく……司と連絡を取らないと。



司が今何処で何をしているのか解らない。

医務室を出てすぐ、持っていたスマホで連絡を試してみたのだが応答がなかった。



——どっかの病院……って可能性もあるが、もしかしたら自宅に居るかもしれない。



司の住むアパートは先程居た駅から徒歩数分の距離にあるのは知っている。

何度か遊びに行った事があるのだ。



——そうと決まれば……急いで行くかね。

無駄足になるなよ!



そう願い、真夜は再び走る速度を上げ、街灯の灯り出した街中を駆け抜けて行くのであった。








〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






豈炎丸(かいえんまる)


橘の家に伝わる由緒ある宝刀。

司の手には今それが握られている。



先程帰宅したばかりの司は部屋の押し入れの奥にひっそりと隠してあった愛刀を見つけ出し、刀の手入れにかかろうとしていた。



——橘の技を舐められっぱなしなん癪にさわるわ!

今度こそ……あの不気味な女をいてこましたる。



そう心に再度誓い、鞘から刀を抜き出す。

暗くなった部屋の中には月明かりが照らされ、刀身を妖しく煌めかせた。


目を閉じ、精神統一を始める司。

するとその気に反応したように刀が蒼く光り出す。



——ええこやで……豈炎丸。



蒼く光る刀は、その光を司の身体にまとわせさらに妖しく煌めかせる。


そもそも、この刀は他の一般的な刀とは大きく違い、持ち主の負の感情、つまり悲しみや憎しみの感情を吸って初めて使える代物だ。

故に司はこの刀を持ち出した頃から泣いたことがない。

それがどれだけ苦痛なのかは、おそらく豈炎丸の持ち主しか知らないことなのだろう。



「ふぅ……。 豈炎丸の手入れはこれで大丈夫やな。 行くか……。」



スマホの時計を確認する。

これから家を出て向かえば約束の時間には間に合うだろう。



——ん?



ふとスマホに目を戻すと真夜からの着信履歴が残っていた。



——無事だったんやな! 良かったで! 電話したるか。



通話ボタンを押しかけたその時、家のチャイムが鳴った。



——誰や……?

まさか……あのRi:Nとか言う女ちゃうやろな。



警戒しながら玄関の覗き穴を見る。

しかしそこには誰も居ない。



「なんやねん。 イタズラかいな。」



緊張の糸が解れ、今度こそ出発しようと扉に手をかけ開け放つ。



ゴンッ!!



開けた扉が何かにぶつかった。

司は刀袋にしまった刀に手をかけ、その存在を確認しようと一気に外に出た。


しかし、そこに居たのは扉を顔にぶつけられもがいてる友人の姿があるだけだ。



「いっってぇー!!!!」



「シンかいな! なんや、無事でなによりやで! こんなとこで何しとんねん!」



「この野郎! 人の大切な顔に扉ぶつけて謝罪もなしか!」



「いやぁ〜! すまんすまん! てっきりまた化け物が来たんかと……。」



「よーし! 一発は一発だ! 殴らせろ!」



「理不尽なこと言うなや! 扉の前でのほほんとしとるシンが悪いんやろ!」



いつも通りギャーギャー騒ぎ合う二人。

しかし、そんな言い合いはピタリと止まり、互いに拳を合わせた。



「司、あん時は助かった。 お前のお陰であの親子も無事だ。」



「ちゃんと時間稼ぎ出来たんやな……。 良かったわ。」



チラリと真夜は司の背に掛かった刀袋を見る。



「武器を持ってる……ってことは、お前も学校に行くってことか?」



「……せや。 あの化け物の親玉を倒さなあかん。」



「そうか。 なら俺も行くぜ。」



「……シンはやめとき。 これはワイの戦いや。 真琴ちゃんやって心配しとるで。」



「……。」



真琴の名前が出た途端、真夜の表情が沈んだのが解った。



「まさか……真琴ちゃんになんかあったんか!」



「……あのRi:Nとかいう女に拐われた。 だから……これは俺の戦いでもある。」



その言葉は怒りで震えていた。

それだけ悔しかったのだと。



「なにやってんねん。 それやったら話しは別や……行くで!」



「……ああ! 必ず真琴を取り戻してみせる!」



二人は互いに頷きあい学校に向かって走り出す。



今度こそ……情けない自分を叩きのめす為に。

そしてなにより、唯一残された真夜の宝物を取り戻す為に!



真夜の左眼。

司の豈炎丸。



二人の武器が、夜の街で煌めく。

これから始まる戦いに反応してるかの様に。







〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






暗い部屋の中。

周りはモニターで埋め尽くされていた。

その中央に王座の様な椅子が置かれている。


そこには、真っ黒な服に身を包んだ赤い髪の男が一人。



『さあ……始めようか。』



ゆっくりと王座から立ち上がる男。



『破滅への物語を。』



その言葉を合図にモニターから無数のPhantomが現れた。

そしてPhantom達は導かれたかの様に転移ゲートへと動き始める。



『瞳に選ばれた者……。 俺を楽しませてみろ。』



その言葉を最後に男は暗闇に飲み込まれていった。










とうとう真夜と司が合流しました。

これで残すは真琴を救うのみです!


そして今話ラストに出てきた謎の男。

Phantomの親玉、つまりRi:Nの仲間も登場です。


次回もお楽しみに!

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