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異世界のツカノマ  作者: 結字
第1章 退屈な世界におさらばを
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9話 【温もりの消失】






改札口に人だかりが出来ていた。



まるで大物芸能人でも見つけた時のようにスマホのカメラ音が駅のホームに響き渡る。


しかしその場にいる人々の表情はそんな明るいものではない。


人々の視線の先には一人の少女……



Ri():N()の姿が映っている。



彼女は大衆の面前にも関わらず血に濡れた服、そして両手には禍々しい二丁の銃を持ち、ゆっくりとその歩みを進める。



「あはははは♪ こちらの世界のみなさ〜ん! こんにちわぁ〜♪」



時折ひらひらと手を振ってみせるRi:N。



『なにあれー! 撮影かなにかかな?』



『あの銃……偽物だよな。 あんな血塗れって。』



『かっ……可愛過ぎる!! アニメの世界から出てきた拙者のマイエンジェル!!』



ところどころから上がる様々な声。

その中を彼女は笑顔を振りまきながら進む。



『おら!! どけどけ! 邪魔だ!』



人混みの一角から、ガラの悪そうな声が近付いてくるのが聞こえた。



「おいおいおい! お嬢ちゃん、ここはコスプレ会場じゃねぇーぞ! ヒャハハハッ!」



その声の主は人混みを掻き分けてRi:Nの行く手を阻む。


どうやら目立ちたがり屋な若者のようだ。


いやらしい目つき、品のない服装、そして笑うたびに見える舌ピアス。



「おいおいおい! 無視してんじゃねぇーよ!! あんま調子こいてっと痛い目あわすぞコラ!!」



「……どいて♪ すご〜く不愉快♪」



「あぁ゛ん? どかしてぇなら力づくでどかしてみろってんだ!!」



「……あはっ♪」



その言葉を待ってましたと言わんばかりに、彼女の銃——HelL・ブロウの唸るような銃声が響き渡る。



ズバァァン!!



若者の胸元には大きな穴が開き、その場に崩れ落ちる。



そんな異様な光景に周囲の人間は呆然と立ち尽くし、一瞬の沈黙が訪れる。

そしてすぐさま狂気に満ちた悲鳴が広がっていく。



「あはははは♪ 邪魔だよ〜♪」



彼女は目の前で倒れた若者の亡骸を踏み越え再度進みだした。


沢山の人間が我先にと走り、逃げ惑う。

鈴の音を鳴らしながら、その中をゆっくりと彼女は進む。



愛しい瞳の存在に導かれるように。

彼女の瞳には医務室の文字が映る。



「もうすぐ行くから……待っててねぇ〜♪」



狂気の時間が目前まで近付いていた。







〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜








ズバァァン!!



「銃声!? 何が起きたんだ!!」



突如聞こえた銃声によって、医務室に居た全員に緊張が走る。



「……そういえば今朝のニュースで連続銃殺事件があったって……。」



真琴の顔からは先程までの笑顔は消え、その表情は恐怖が支配していた。



「銃殺? こんな場所まで殺人鬼が来てるのか!」



「あの音……もしかしたら電車で聴いた音と似てる気が……。」



「まさか……あの化け物の仲間って事ですか?」



「あんな銃声……そうそうに忘れません。」



そうなると司が戦った相手と考えるのが妥当だろう。

そして司はやはり……。



——くそっ!

今はネガティブな事を考えてる場合じゃない!!



ここには真琴も居るのだ。

とにかく逃げなければ!



「みんな! 急いで逃げるぞ! 早く外へ……。」



しかしその行動をとるには少しばかり遅かった。



リンッ!



室内に鈴の音が響く。

医務室の中に音もなく入っていた一人の少女。



「み〜つけたっ♪ やっと……逢えたね♪」



彼女の視線は真夜を愛おしそうに射抜く。

そして恐ろしいくらい綺麗な笑みを浮かべ舌なめずりをする。



突如、真夜の身体が震えた。


その震えは寒気などでも、ましてや不気味だからという訳でもない。



単純な恐怖。



人は死を直感すると、反射的にどうにか逃げようと行動する。

しかし動く事すら許されない恐怖が、血塗れの彼女から放たれていた。


その場にいる全員が動けない。

ただただ死を待っているだけかのように。



「あはははは♪ みんな震えちゃって可愛い〜♪」



そう言いながら彼女は真夜が座るベッドの側まで近付いてくる。



「それが……《マスター》の言ってた瞳ね♪」



そして彼女の顔が……真夜の息が当たる距離まで近付く。


しかし眼を反らせない。

逸らしたら死んでしまうと錯覚するほどに恐怖が覆っていた。



「ん〜? 怖くて喋れないのぉ〜?」



黄色い髪。

青い瞳。

白く整った顔。

そしてベッドの上。



間違いなく誰もが羨ましがるシュチュエーションも、彼女が相手では恐怖しか生まれないだろう。



——あれ? この姿何処かで……。



しかしそんな考えとは裏腹に彼女は突如



「……んっ。」



真夜の唇をそのピンク色の唇で塞いだのだ。



——…………は?



「あはは♪ もしかして……ファーストキス?」



「…………。」



思考が停止する。

一体、今、俺は、何をされた?

ふぁーすときす?

初めてのチュウ?



不意打ちとは言え、こんな状況下でのキス。

その行為を間近で見ていた真夜の妹……真琴は黙っていなかった。



「あんた……おにぃに……なんて事してくれてんの!!」



「あはははは♪ もしかして……あなたブラコン? 初めて見たぁ〜♪」



「そっ……そんな訳ないじゃない!! 私はおにぃの事なんて……。」



顔を赤らめながら騒ぐ我が妹と、その妹をおちょくってるとしか思えない血に濡れた少女。



——なんだ……これ。



真夜の考えは間違いなく正常だ。

誰がどう見ても先程までの緊迫した空気とは違い和やかな空気が流れている。


それがどれだけおかしな空気を生みだしているのかなど、あの口をポカーンと開けた親子を見れば解る。


しかし、あの親子の呆れぶりのおかげで冷静さを取り戻す事にも成功した。



「あんた……おにぃのファーストキスを奪っておいて……なんのつもりよ!!」



——あの……ファーストキスの事はもう触れないで下さい。



「なんのつもりって? 私はただそこに居る瞳……彼の回収に来ただけよ〜♪」



そう言って真夜の瞳を指差す。



「回収……だと? どういうことだ!」



「本当は殺して瞳だけ奪う予定だったんだけど〜……君、面白そうだから連れて帰ろうかな〜って♪」



再度舌なめずりをして、先程とは違う艶のある笑みを真夜に浮かべる。



「なっ!?」



「おにぃは……あんたなんかに渡さない!」



真琴は真夜をどこにも行かせないようにと、しっかりと腕を掴んでいた。



「へぇ〜♪ 」



「……なによ!」



真夜を挟んで真琴と少女が睨み合う。



「あなたも……面白そうねぇ〜♪」



「…………。」



真琴はただ黙ったまま彼女を睨みつける。

しかし彼女はそんな真琴の視線を無視して、今度は親子を見つめた。



「あなた達は……この場所には必要ないの♪ だから今すぐに出て行きなさい♪」



医務室の入り口を指差し退出しろと告げる彼女。



「…………。」



こちらに視線だけ向けてくる母親。


逃げていいと言っているのだ。

断る義理などない。


真夜は二人に頷く。



娘を連れ静かに医務室を後にする親子。



きっと二人なら応援を呼んでくれると信じて。



「そういえば……まだ名乗ってなかったわね〜♪ 私の名前は——Ri():N()。 この世界とは違う世界からその瞳を回収する為に送り込まれたの♪」



そう名乗ったRi:Nはベッドから飛び降り、クルリと一回転してお辞儀をしてみせる。



「……異世界ってやつか。」



「ご名答〜♪ やっぱり君は解ってたのねぇ〜♪」



「異世界……。」



ぼそりと真琴が呟いたのが解った。



「それで……お前。 Ri:Nは……これからどうしようってんだ。」



「だから言ったでしょ〜♪ 君を異世界に連れて行くの♪」



「嫌だ……と言ったら?」



「あはははは♪ あんまりしたくはないけどぉ〜……あなたにはお友達と同じように壊れてもらう♪」



彼女の両手にはいつの間にか黒いリボルバーが握られていた。



「っ!? ……まさか司の事か! 一体あいつに何をしやがった!!」



「気になる〜? でも教えな〜い♪」



「……こいつ!!」



真夜はいつの間にか握り締めていた自分の拳に気付く。

しかし……今の状況では彼女に勝てる見込みはない。



「おとなしく私についてきなよぉ〜♪ 悪いようにはしないから〜♪」



「……断る。」



「なら……ここで壊れるって事かな?」



急激にRi:Nの声のトーンが下がった。



「その選択も……断る!!」



その言葉を引き金に、真夜はベッドのシーツを彼女の頭から被せる。



——よし! 今なら!!



真琴の手を引いて急いで医務室のドアへと駆け寄る。



ズバァァン!



突如響き渡る銃声。

真夜の視界は傾いていた。

歩こうとした脚に……力が入らないのだ。


真琴の泣き叫ぶ声が聞こえる。



「おにぃ!! しっかりして!!」



「ぐっ……! 脚がぁぁあ!!」



どうやらRi:Nの撃った銃弾が真夜の右足を貫いたらしい。

そこからは大量の血が流れ、その部分を必死で真琴が止血しようとしているのが解る。



「あはははは♪ 君は私とそんなに戦いたいんだね♪ いいよ。 なら君の大切な妹の命をかけて戦おうよ♪」



「なっ!? 真琴は関係ないだろ!!」



「関係ないとは思えないけどなぁ〜♪ それに君だってその方が燃えるでしょぉ〜?」



「くっ! ……真琴! 俺を置いて逃げろ!!」



「嫌だ!! おにぃを置いてなんて行けないよ!! 私をもう一人に……しないで!!」



首を横に振りながら真琴は必死で止血を続ける。


しかし彼女……Ri:Nは真琴の後頭部を銃のグリップで殴り気絶させ、その身体を軽々と持ち上げた。



「お…にぃ……。」



「真琴!!」



「あはははは♪ 今夜10時、君の通う学校で待ってるねぇ〜♪」



彼女はそう告げると、足元にコインのような物を投げ、そこから別の空間に転移するゲートを作り出した。



「早く来ないと……妹さんは壊れちゃうんだから♪」



「真琴ぉぉおお!!!!」



痛む脚を引きずりながら必死で真琴の手を掴もうと伸ばす。



しかしその手は……あと一歩届かない。

そして静かにゲートは閉ざされていった。



「くそぉぉぉおお!!!!」



真夜の叫び声が響き渡る。



残された真夜は、その後すぐに駆け付けた親子によって助けられるまでずっと、その場に落ちていたコインを握り締めていた。


何度も真琴の名前を呟きながら。








〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜







村は静かな寝息を立てている。

その中を一陣の風が通り抜けた。


満月が水溜りに反射し、その上を一人の少女が駆け抜けていく。


まるでその少女が風のように。



そして不意に月を見上げ脚を止める。



『君は……今悲しんでいるんだね。』



背中に付けた大きな刀を鞘から抜き出し、その刀身を月の光に照らす。



『もうすぐ……君に逢える。』



銀髪の髪が風で揺らぐ。



『僕が……君を助けてあげよう。』



瞳を閉じ、何かを待つかのように満月に向けて刀を横に構える。


そして柔らかな風が少女を通り抜ける。



『この力は……君の為に!!』



長い刀はそのまま横に振り払われ、満月が……欠ける!!


それはあり得ない光景だった。


しかし少女が刀を鞘に戻した時には月は元の満月に戻っていたのだ。



『もうすぐ……君に逢える。』



その口元には微かな微笑みが浮かんでいた。







さて!

第1章もクライマックスに突入します!


やはりRi:Nを出すと必ず誰か死ぬなーっと書いていて思いました。

今回は夢に出てきた銀髪の少女の存在を出させて頂いてます。

この少女は誰を救おうとしているのか。



さてさて!


さらわれた真琴。

そして相変わらず行方不明な司。

果たして真夜は妹を救うことが出来るのか!!


次回もお楽しみ!


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