表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ショートショート集

Pistol

作者: Yakumo Sugawara

 目の前に一丁のピストルがある。弾倉がレンコンのような形をした、所謂リボルバーと言われるやつだ。もちろん日本では民間人にとってなじみのあるものでは無いが、この際、その点は気にすることではない。さて、これで何ができるだろうか?


 ピストルと言えば真っ先に思い浮かぶのは犯罪行為だ。もっとも人によりけりだろうが…。ともかく話を戻そう。

 どうだろうか?マスクとサングラス姿で、どこか、お店か銀行にでも行くんだ。そして、ポケットからさりげなくピストルを取出して従業員に突き付ける。静かな口調で、こう言うんだ。


「あるだけの金をよこせ!」


 いや、待てよ。最近じゃ、どこでもすぐに押せる警報機が有るだろうし、逃げるときにカラーボールを投げつけられるかもしれない。はたまた、金を全部小銭なんかで用意されたら、腰を痛めるどころか一銭も持って逃げれないかもしれないな。仮に、仮にだが大金を手に入れて、現場から上手く逃げられたとしよう。そのあとが問題だな。のうのうと逃げ延びるなんて簡単ではないだろう。事件として瞬く間にニュースになるだろうし、身元が割れたらすぐさま手配されてしまうだろう。それに銀行だったら紙幣の番号も控えているだろうから、使うのも容易ではないな。


 それでは別なことを考えよう。そうだ、職場の威張り腐っている上司や嫌味な同僚をバッタバッタと打ち倒してやろうか。驚愕の表情を浮かべる彼らの顔面に銃弾を撃ち込んでやるのだ!いや、だがな、そうなれば殺人罪で一生ブタ箱にぶち込まれることになるわけだ。当然の話だがな。だが、そこまでする価値が有るかと言われれば、まだ仕事を辞める方がましだな。


 う~む。それならば悪事をして、のうのうと生きている連中を倒して行くというのはどうだろうか。そう、まさしく正義の私刑執行人だ。これなら罪に問われても世間では英雄だ。だが、ちょっと待てよ。そういうやつらをどう探せばいいのだろか。まさか、募集を掛けるわけにもいくまい。それにそういう連中は権力を盾にして、こちらの目論見を事前に取り押さえてしまうかもしれない。うむこれも問題だな。


 いっそのこと、これで自殺でもしてしまうか。こんな、くだらないことばかり考えるくらいなら死んでしまった方がましだ。では、どうやろうか?こめかみに弾を撃ち込もうか。待った。確か、この場合条件によっては弾が逸れて大怪我するだけで死なないことが有るらしい。それでは口に咥えて撃つか。だが、その方法では、たいそう部屋が汚れてしまうらしいがな。


 おっと、ここで気がついたのだが、そもそもここにあるのはピストル本体だけだ。銃弾が一発もない。これでは鈍器か物置にしかならないな。


「残念だ…」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ