第8話 東への旅
一日に三話書いたけど、これはたまたま調子良かっただけね。
「クエスト受諾完了!さ、行くぞ君達!」
「おーう!…ってちょっと待てい!」
「ん?どうした、用でも足しに行くのか。」
「いや、何で勝手に話が進んでるんだよ!そもそもそのクエストは一体何だ!」
「大丈夫だよ!兄さんなら出来るよ!」
「イチヤお前も行くんだよ!?何でそこまで腹が座ってるんだよおお!!」
俺と弟、イチヤはこの異世界に召喚された。
召喚早々、俺達の召喚を画策したこの国の王が課したクエストは
一週間以内にレベル100まで上げなさい。
出来ねえよ!無理ゲーだよ!
軽返事で返してしまった事を悔やんでいる俺達の前に現れたのは、王の側近の一人にして『西の賢者』の能力者、エリス・アーガナ。
彼女は王の命令などではなく、個人的に俺達のレベル上げを手伝ってくれるというではないか!
あきらかに怪しいと思った俺だが、藁にもすがるというヤツで渋々彼女の申し出を受け入れた。
そして、そんな彼女が俺達に教える、一週間以内にレベルを100まで上げる必勝法というのが
「このクエスト、『東への旅』なのだ。」
「だからどんなクエストなんだよッ!」
「大丈夫だよ!兄さん!」
「大丈夫じゃねぇっ!」
「まあまあ。よく聞くのだ。この『東への旅』を私が選んだ理由は、このクエストが何だったからだと思う?。」
唐突に問いを投げかけられた俺は答えに一瞬つまる。
「えーと、報酬が良いクエストだったから?」
「それもある。だが少し違うかな。」
「分かった!」
「お、分かったのかイチヤ?」
「このクエストはいわゆるメタル系がぱかぱか出てくるんだよ!」
「おお!成程!」
はぐれた奴とか冠被ってる奴とかが出てくるのか!それは嬉しい!
「君達の言うメタル系とやらがどういったものかは知らんが、多分違うな。」
「えー。」
「オホン!じゃあ説明しよう。このクエストはだな、その名の通り旅をするクエストなのだ!」
「ゲホッゲホッ、ゴホッ!」
ごくりと飲み込もうとした唾が喉につまり、むせる。
弟が慌てて背中をさすってくれた。
心配そうにエリスも駆け寄ってくる。
「だ、大丈夫か?」
「あ、ああ、問題ない。」
スーハ―と深く息を吸い込み吐く。それを何度か繰り返す。
スー……ッ、ハー………
ようやく落ち着き、なんとかまともに喋れるようになった俺はもう一度、エリスに聞く。
「で、そのクエストは一体どんなクエストなんだ?」
「うむ。実はこのクエスト、その名の通り旅をするクエストなのだ!」
「ゲホッ!ゴホッ!ゴホォォォッ!」
どうやら聞き間違いでは無かったようだ。
「え、旅をするってまさか……」
「そう、行先も名前の通り、東だ。詳しく言うと、東の大陸で一番栄える王都ヤツルギだな。」
「ちょっと待て。そのクエストは本当にそのヤツルギとやらに行くだけで良いのか?何匹かモンスターを討伐したりそんな事は無いのか?」
「うむ。討伐はすればするほど良い展開になるかもしれないが、倒し過ぎてもあまり良くないから程々にな。」
「……え?」
「そう、このクエストは東の都まで旅をして、帰ってくるまでの様子を一部始終、この日記帳に記すという物なんだ!」
依頼主はどうやら、ある大きなお屋敷に勤めているメイドさんらしい。
そこの主の娘さんがまた病弱な娘で、屋敷のベッドに寝たきりなんだとか。
そしてその娘さんは、寝ているだけでは退屈な為、よく世話役のメイドに物語を読ませるそう。
で、色々読ませる中で一番お気に入りなのが、勇者や名だたる冒険者達の書いた冒険譚。
今回のクエストは、そんな娘さんを喜ばせる為に新たな冒険譚を書いてほしいというもの。
移動魔法等は使わずになるべく徒歩や町の交通手段を使って、このグランデイル王国から始まって山を越え海を渡り、東の都ヤツルギに着くまでのハラハラドキドキな道中を日記にまとめて欲しい。
つまり強敵の一人や二人とはかち合わなければならない。
「凄くいい出来の日記だとボーナスもで出るみたいだよ!」
「日記か……」
果たして三日坊主の俺に日記など書けるだろうか。あ、でも交代で書けばいいか。
「でだ。このクエストは旅をする。無論道中では数多の苦難が待ち受ける事だろう。でも、それが良い!この初クエストを通して、君達にはこの世界のイロハを叩き込んでやろう!」
成程。このクエストは俺達のチュートリアルとしてうってつけなのか!
ん、でもちょっと待て。
「つまり…」
「一週間で大陸間を往復する、という事になるな。出来るかどうかそこだけ心配だが。」
「おいいいい!?」
かくして、俺と弟と、賢者エリスによる「東への旅」が始まったのである。
正直な所、感想欲しいです!はい!
…言っちゃった…