第20話 白魔術師はかく語りき
長きにわたるスラングを経て、酒饅頭復活です!
…ちょ、ごめんなさい更新しますから!見捨てないで!
「あいつの役職は…『白魔術師』だ……」
「ン!正解!でもって私の役職を見事言い当てた君は『西の賢者』だね?」
「何故…君の役職なんかだと、魔王側につく理由なんて無いだろう!?」
「ンン…差別はァ良くないよ、差別は。それを言うなら、そこに伏している彼女にだって、勇者側につき、勇者のパーティで補佐として活躍する権利がある。そしてその理論でいくと、私だってェ別に勇者の味方をしたい訳でもないし、君達勇者の仲間を名乗る者に楯突く権利は十分にある!」
「嘘だ…今まで『白魔術師』に選ばれた者に、魔王の味方をした者など一人もいなかったはずなのに……!」
「ンふふふっ、まあ、確かに勇者に楯突こうとすれば自然とそういう風に見られてしまうよネェ……別に私は、顔も素性も、得体の知れない魔王なんて輩に服従する気もないんだけどサァ」
「は?……魔王側にはつかない、というのか?」
「君達の見方は、両極端過ぎるンだよ。そんなんだから、いつまで経っても勇魔大戦とかいう負の遺産が残り続けてしまうンだよ?」
「……」
「私は、魔王側にも勇者側にも属するつもりはない。だが、君達の邪魔は行う。そこの『狂戦士』の邪魔もする」
両手を大きく広げて、ペストマスクの『白魔術師』は宣言した。その手には、いつの間にか黒で塗り固められたステッキが握られている。あれで攻撃を行うのだろうか。艶のあるそれは、ただのステッキのはずなのに何故か剣のようにも見えてくる。
不気味だった。こんな野郎、いつもならムカついて終わりの筈なのに、今回はやけに寒気がする。
奴から感じる底無しの狂気が、それと関係するのかもしれない。ショップ・ヒルデで戦った赤い騎士とはまた違う、狂気らしい狂気だった。
「…しかし、歴史は証明している。歴代『魔王』がこれまで行ってきた悪行から簡単に分かるだろう!『魔王』の役職を持った者は、平和と安寧、秩序なぞ望まない!もはや奴らは人の姿をした魔物。人類の敵だ!」
エリスが反論する。その口調からは、俺でも彼女の動揺と焦りが読み取れた。ちなみに、前の世界での国語の成績はあまりよろしくない方だ。焼肉定食。
「ンン…ッ、ッハハハ、ハハハハハハハハ!!」
突如、『白魔術師』は高笑いした。心底可笑しいというように、腹を抱えて思いきり笑っている。しかしながら表情をマスクで隠している為、相変わらず不気味だった。
「ハハッ、そうか、人類の敵か!かなり笑える冗談だ!では逆に問おう。現に今、私こと『白魔術師』は人類の味方、つまり勇者側へ反旗を翻している!歴代勇者パーティの回復の要がァ!君は今、これまで勇者側についてきた役職持ちは安全だと遠回しに言ッたが、本当にそれは正しいのか?もし、今回の勇魔大戦で全ての役職持ちが『魔王』に付き従ッたらどうする!?」
マスクで声はくぐもっている筈なのに、何故かハッキリと奴の声が聞こえてくる。エリスの心にはかなり響いたようで、俯いたまま反論する事は無かった。
「…少し、熱くなッてしまッたね。まとめると私は、この大戦においては第三勢力。という事になる。そして、私以外の全ての役職持ちをこの手で殺して最後に私も自害する。『勇者』と『魔王』がまだ現れていない今この時が、最高の殺しどきだという訳サ!」
「…おい、ちょっと待てよ」
つい、声が出てしまった。
「何だ?」
「あんたのやろうとしてる事って、意味が無いんじゃないか?」
「……」
「あんたは今、全ての役職持ちを殺す宣言をした。でも、俺の聞くところによるとどうやら、役職持ちってのは死んでもまた別の奴がなるらしい。だから、少し間は空くにしてもまた大戦は勃発し、過ちは繰り返される、そうだろ?」
「……」
「それに、どうせ全員殺すつもりなら最初はどちらかについていた方が、確実に全員を殺せるんじゃないですか?」
俺の完璧過ぎる弟による完璧過ぎるフォローも相まって、『白魔術師』は沈黙した。
と思いきや、奴は無言のまま、片手に持ったステッキを高く掲げる。降伏して、勇者側の軍門にでも降るのだろうか。
「…確かに、その通りかもしれないね。だが『勇者』に味方しろと?それだけは断固断る。私と『勇者』が分かり合える日は永遠に来ない。そして、勇者側につこうとしている君達とも…」
ゾクッとした。奴は今、「笑って」いる。ペストマスクで覆い隠しても何故か分かる。
「…分かり合える日は、きッと来ないだろうね」
『白魔術師』は掲げたステッキを、俺達へと向けた。
まるで、銃口を向けるが如く。




