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第2話 手榴弾(の、様な物)

一夜の千夜に対する呼称は「兄さん」になりました。

成長というヤツです。

 目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界だった。

 なぁんて、そこらの携帯小説でよくある始まり方だが、俺はそんな事は起きないと思っていた。

 起きては欲しかったのだが。

 そして今、その悲願が達成為されようとしていた。

 だが、生憎クラスの可愛い子と一緒にトリップした訳ではない。

 俺の隣に立っているのは


 「兄さん!。」


 俺の弟、一夜である。

 俺は悟った。ハーレムルートは既に封鎖されたし、と。


 異世界トリップは、最終的に主人公の周りに可愛い子がわんさか集まってハーレム状態となるのがお約束であろう。それで他の魅力的な女の子に気を引かれつつもやっぱり本命は、中々振り向いてくれない幼馴染。他のハーレム要員にヤキモチを焼いちゃったりしてね。

 でも最後にはハッピーエンド……と、これらはよく見かけるが、同じ様なのばかりという訳でも無く、やはり作り手側も色々考えていて、色んなパターンがあったり少し違っていたり、この類の携帯小説は日々進歩しているのである。

 とその前にそもそも、何故俺達が異世界と思われる所に飛んだのか。


 話は少し前に遡る。



 俺は久々に、一夜の誘いもあって近所の家電量販店に顔を出していた。

 俺は、新たにスゴロクが追加されたあの某MMORPGの新バージョンディスク、弟は高性能のゲーミングキーボードが今回のターゲットである。

 買い物に兄貴を誘うあたり、一夜もなんやかんや言いつつ兄の事を慕ってくれているのだ。


 「兄さん、あっちのキーボード売り場だよ!。」


 まぁ、お目当ての品がネトゲ用のキーボードの小学五年生というのも、可愛げがあっていいのではないか。いや、無いか。

 とか思いつつ、キーボードを無事購入した後、弟を連れて近くの某アニメショップに出向いてしまう俺の方が可愛げなど皆無だった。そもそも求められていないのだが。

 街路樹が等間隔に設置された並木道を弟と並んで歩きながら、俺はぼーっとそんな事を考えていた。


 「そろそろ昼だね、兄さん。」

「おう。そこのファミレスで昼飯といくか。」

「あそこはポテトがへにょへにょしてるんだよなあ。」


 こうして青空の下、一夜と下らない会話を交わすのは何年ぶりだろうか。

 まあいつも、弟とは夜空の下で金策しながら今後の採集クエストの効率化についてチャットしているから良いのだが。良くないか。

 結論を言うと、たまにはこういうのも悪くないという事である。

 それにしても、太陽が眩しい。こんなに平和過ぎると何かが起きそうで逆に怖い。


 「きゃああああ!!。」


 案の定、何かが起きてしまった様だ。

 慌てて目線を空から目の前に戻すと、前方の群衆が騒めき立っている。


 「どっ、どうしたんだ!?。」

「分からん。離れるなよ。」


 さりげなく兄の貫禄を我が弟に見せつけて親密度を上げた(様な気がする)俺は、状況を把握しようと小走りで群衆に近付いた。



 それから先の出来事はあまりにも唐突過ぎて、断片的にしか覚えていない。

 まさにスライドショーの様にという奴だ。

 

 まず、群衆に俺が近付いた刹那、群衆の合間を縫うようにして黒いフードを目深に被った「如何にも」な奴が現れた。


 そいつが騒動の原因だったのだろう。


 群衆は一気に、あのモーセが海を二つに分かつ例のシーンの如く割れ、フードを中心に道を作った。


 そしてその数秒後、フードが俺或いは一夜に向かって走ってきている事に気付いた俺は、咄嗟に一夜をかばう様にしてフードの前に立ち塞がる。

 無謀な兄貴だった。今思い返せば自分でも笑ってしまう。


 フードは立ち塞がった俺を一瞥すると、そのロングコートの中に手を突っ込み、黒光りする「それ」を無造作に取り出した。


 「それ」は……手榴弾(の、様な物)だった。


 フードは思い切り振り被ると、その手榴弾(の、様な物)を俺達に向かって投げつけてきた。


 手榴弾(の、様な物)の起爆ピンは既に抜かれていた。


 そしてその手榴弾(ry)は、驚きで体の硬直してしまった俺の腹にぶつかると、カチリと嫌な音を立てて……


 起爆。そこで俺の意識は途切れた。



 「兄さん大丈夫!?目が遠い所を見ているよ!?」

「……大丈夫だ。我が弟よ。」


 こうして、今に至るという訳だ。

 手榴(ry)で異世界で飛ぶというのは浪漫が無いが、飛べただけまあ良しとしよう。

 にしてもここは異世界のどこだよ。


やっと異世界来ましたね。

長らく待たせてすみません。

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