第17話 狂気の襲撃者
三ヶ月前の感覚を未だに取り戻せません……
本当、リハビリ感覚で投稿しています。駄文ですいません。
「貰ったぜ、あんたの命!」
そんな死の宣告と共に宙に舞った俺は、その意識が完全にブラックアウトしたつもりだった、が。
「兄さあぁぁぁぁぁんッ!!」
先程の物騒な一言を遥かに上回る声量で発せられた、我が敬愛すべき弟の怒鳴り声。驚いた俺は反射的に意識を急激な速度で回復させた。
見れば、落下している俺の真下には例の聖結界がどでんと敷かれている。そこへ向かって落ちろという事だな。言われなくともわかるさ。
俺は弟との絆を信じ、風に身を任せてそのまま落下する事にした。聖結界が、近付いていく。
とても大きく、あらゆる魔法攻撃を反射、物理攻撃を弾き返す無敵の役職効果。きっとあの聖結界の前ではどんなに巨大な竜だったとて、攻撃を躊躇って僅かな隙を見せるのだろう。それ程までに強大、強靭。本当に最高クラスの役職効果だ。
……ホントに大丈夫かな!?何か激突して俺が爆発四散したりしないかな!?そんなの嫌だよ!?
「詠唱…『揺蕩う微睡みの風』。」
少し離れた所に立っていた金髪賢者様はどこから取り出したのか、随分と威厳のある両手杖を構えてボソボソと何かをつぶやいている。と、彼女が杖を振り上げると俺の落下速度が急激に「低下」した。
ズンッという重い効果音と共に、暖かい布団で包まれたような感触が全身を支配する。何これ気持ちいい。これがきっと、この世界の魔法なのだろう。
地上から数メートルの位置で勢いを無くした俺はゆっくりと聖結界の上に落下する。すると、結界に足を付けた瞬間、みるみるうちに俺の負った傷が回復していった。
「……聖結界は回復も出来るのかよ!?」
「いや、それは私が結界に回復魔法を染み込ませておいた。接触をスイッチとして発動するようにな。」
「俺の弟の固有能力が万能過ぎる件について」
「役職に上も下も無い。そこに生まれた差は殆ど使い手の力量によるものだ。」
「さらっと傷つくような事言いやがって……。」
まあ俺の弟がハイスペ過ぎるのは否定しないがな。
時間の経過と共に薄れゆく聖結界を眺めながら、俺は今の現状を整理する。
「で、今一体何がどうなっていやがりますですか?」
「とりあえず落ち着け。そして気を引き締めろ。どうやら私達は新たな役職持ちと鉢合わせてしまったらしい。」
「新手の……役職持ちだと?」
「うむ。見るところによると相手はどうやら『狂戦士』のようだ。」
狂戦士。ゲームではよく敵サイドの役職となってるけど、俺の中の凶暴な殺戮マシーンというイメージはこの世界では合っているのかな。
「『狂戦士』は、数ある役職の中でもかなり危険で厄介な役職だ。役職効果は自身を傷つける事によって自身を強化する、いわゆる火事場の馬鹿力といえば分かるか?」
「体力が減ると、その分だけ攻撃力が上がっていくってワケか。」
「いや、別に攻撃力だけという訳では無く、総合的な身体能力が瀕死に近づくにつれ大幅に向上していく。つまり一撃で仕留めるか、傷付けずして拘束するといった手段をとらないとかなり終盤は厳しい戦いになってしまうな。」
「面倒くせぇ……。」
こういうエネミーはよくいるが、俺の普段のプレイスタイルは圧倒的なレベル差の元で戦うパワープレイの為苦戦を強いられることが多い。下手に少しだけ体力を残してしまうと詰む詰む不可避だからな。
俺は回復したてでうまく動かない体をバキボキッとほぐすと、弟と例の『狂戦士』とやらを振り返る。
弟は相手がこっち側に攻め込んで来ないよう、幾つもの聖結界を同時に貼ってうまくあしらっている。その表情はぱっと見いつもの余裕顔だが、よく見るとかなり汗をかいている。
いくら弟だからといって、無限にスタミナがある訳ではない。先程のサイコ騎士といい多重結界といい、初めてで慣れない役職効果を惜しみなく使用したツケが回ってきているのだろう。
そろそろ、弟も限界かもしれない。
「イチヤ!もう下がってろ!」
俺の声に振り返ったイチヤはほっとしたような笑顔を浮かべると、そのまま倒れ込むようにこちらへ下がってくる。同時に、何重にも張り巡らされた聖結界も一気に消滅する。
「ここからは、俺がやる。」
イケボを意識しながらゆっくりと歩み出た俺は、正面にいる『狂戦士』と対峙した。
「兄さん!殺っちゃって!」
弟のちょっぴり物騒で可愛げのある声援を背に受けながら相手の姿を視認した俺は
「……え?」
思わず絶句してしまった。それもそうだろう。なぜなら、今俺の前にて巨大な戦斧を構えるそいつは。
「何だよテメー、まだ生きてやがったのか?へへっ、まあもう一回殴ってやればいい話だしな!」
萌ゆる桃色のボブカット。
「アタシの前に立った奴ぁ、みんなミンチになっちまうんだぜ?」
頭をポンポンと撫でられるくらいの低身長。
「さあ!テメーの肉も切り刻んで、コットンコットンのシチューに……
そして、不敵な笑みにキラリと光る、まだあどけない犬歯。
これは、これはこれはこれはまさか、まさかッ!
「嘘だろう………ダゼっ子ロリ…だと……?」
やっぱりまたロリでした。
Q:ここは果たして理想郷なのでしょうか?
A:いいえ。どんなフラグも叩き折られてハイスペ弟に持って行かれる、ロースペ兄の絶望迷宮です。




