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第14話 弟は既に。

 轟音が狭い裏路地に反響する。壁にヒビが入ったのは音によるものか、それとも


 「大丈夫兄さん!?」


「私達が来なければ危なかったな。」


 二つの影が俺に向かって駆けてくる。役職効果によるモノではなさそうだ。

 我が弟イチヤと国王側近の役職持ち、エリスである。


 「で、兄さんを殺そうとした糞野郎はどこへ?」


 今しがた俺と謎の銀髪美少女を殺そうとしていた全身レッドのサイコパス騎士ナイト(本名不明)は、弟或はレベル800の『西ウエスト賢者セイジ』かの起こした大爆発によってまたどこかへ吹っ飛ばされてしまったようだ。


 「イチヤ……お前がやったのか?」


「ううん、これは僕とエリスの合体技だよ。」


 へえ成程。合体技か。合体技と聞くと昔やっていたアーケードゲームの必勝コマンドを思い出す。まあそういうコマンドに限って重要な所では発動せず、アウトオブ眼中な雑魚エネミーにまぐれで炸裂したりするのだ。ホントああいう展開ムカつくよね。

 そんで歯ぎしりしてると後ろの方のベテランお兄さんが「あーっ、惜しい!」とか言ってくるの。

 でもガチ勢なお兄さんが怖い頃だから曖昧に相槌を打ったりする。

 そのお兄さんが自分の後に画面に向かって「キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!」とかやってた暁にはもうやる気さえ無くしてくる。

 俺は一体何の話をしているのだろうか。

 こんなどうでもいい話よりだ。弟の爆弾発言についてだ。んだんだ。



 「いつ合体技なんて出せるようになったんだ?」


「ああ、今のコレが初めてだよ。練習とかしてなかったけど、何か出来たんだ。」


 流石は俺の弟。伊達に神童の称号を弄ばしてはいない。

 ってこら。お兄ちゃんまだ合体技とか出来てないぞ。まともに自分の能力さえ操れてないんだぞっ。

 もはや兄と弟の立場を入れ替えた方が良いんじゃないか?なぁんて野暮なクエスチョンをしてはいけない。 俺が傷つくだろう。


 「エリス、俺にも……」


「ああ、すまん。これはセンヤには扱えんよ。」


「何…だとッ…!」


「イチヤの『聖騎士(パラディン)』の役職効果である聖結界を辺りに張り巡らし、そこに私が爆破魔法を打ち込む。すると爆破魔法のエネルギーは聖結界内を、まるでボールのようにぼむぼむっと跳ね返りまくって力を高め、地面に着いたら大爆発。下級魔法を使っても充分高威力のモノが出せるから重宝……」


「ぼむぼむと爆弾(ボム)は掛けたのか?」


「会話の中にもさり気なくギャグを放っていくこのネタセンスは、賢者たる者が持ち合わせねばならないものの一つだ。」


「賢者はネタセンスも要求されるのか……」


「ともかく、イチヤの聖結界には魔法の威力を高める効果もあるという訳だ。」


「これまた便利な補助(サポート)(ジョブ)だぜ……」


 いつかは俺と合体技を繰り出す日も来るのだろうか。

 俺は意識を研ぎ澄まし、先程の爆発で形を無くしたであろう俺の影に呼びかける。

 当然、返事は無い。

 思わず落胆して足元を見下ろすと、そこにはもう影が戻っていた。

 

 「あの赤い鎧の騎士の事だが、あれはきっと、当分は死ぬ事は無いだろう。」


「ええっ!」


 エリスの発した突然の爆弾発言に、俺は思わず声を上げる。


 「あの騎士は自身の剣との間に呪いの類をした繋がりがある。あの感じからすると多分『血盟』だ。」


「血盟とはなんぞや。」


「うむ……まあ呪いの一種だ。自身の血と契約者の血、二つを互いの体に混ぜ合わせる事で、自身の体に直接、交わされた約束を刻む。すると二人はその約束が達成されるまで、永遠の眠りにつく事は無くなる。達成された暁には即座にその身もろとも朽ちてしまうがな。」


 「んじゃそりゃ。とんだチートじゃねぇか!」


「それじゃ、『達成される事の無い約束』を交わせば二人は永遠に不死のままじゃないですか!」


 兄弟二人でぶうぶうと文句を垂れる。文句を言いながらさりげなく近づいてちっぱいを愛でようとしたが、失敗に終わる。俺の手を何らかの魔法でしびれさせたエリスは兄弟に対し引き気味で返答する。


 「だ、大丈夫だ。これでも一応呪いだからな。それ相応のリスクはある。」


「「リスク?」」


「うむ。それも恐ろしいものでな……」




 二人の役職持ちを逃した。こんな事は今まで無かった。

 数多の役職持ちがこの誓いの剣の前に屈し、首を刎ねられてきたのに。

 即刻、追わなければならない。


 「くぁっ……」


 赤い鎧の騎士、レドリー・ウェスコットは亀裂の入った鎧の右腕部分を抑える。

 心臓の急激な動悸がおさまると、彼はそっと鎧の留め具を外し、右甲を引き抜いた。


 あらわになった彼の右腕には、どす黒い焦げ跡のようなものが大きく広がっていた。




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