第13話 主人公の条件
定期更新?いえ、知らない子ですね(;´・ω・)
サイコに反撃する事が可能になったとしても、俺の影が俺の命令を聞いてくれはしないのだから、俺は影にあとを任せてみるしかない。
俺は、サイコと共にやって来た銀髪の美少女の方を振り向く。
「あんた、まだ戦えるのか?」
すると彼女は手に持つ銀槌を大きく振り上げ、肩に載せる。
「当たり前でしょ。私も一応役職持ちだから。」
どうやら彼女はそれなりに役職を自分で操れるみたいだ。攻撃系統の役職だと嬉しいのだが。
「じゃ、影が奴を抑えているうちに一発決めてやってくれ!」
「分かったわ。」
言うなり彼女は思い切り銀槌をぶんまわしながらサイコに突進を始める。
「っせやああああああああ!!」
そしてそのまま銀槌を振りかぶって、サイコ目掛けて重い一撃を繰り出した。
「槌スキル…『スカル・スクラッパー』!」
彼女の銀槌は途端に禍禍しい紫色の瘴気で覆われ、サイコ諸共、地面を凹ます勢いで潰した。
ゴゥンッというとてつもない破砕音が鳴り響き、サイコの深紅の鎧に亀裂が何箇所も入る。
「りゃああああっ!!」
そのまま彼女はその重そうな銀槌を細い腕でぶんぶん振り回し、目にも止まらぬ猛攻を展開した。
「ぐ…ぁあっ……!」
サイコの方が悲痛の声を上げる。とっとと剣を離せば動けるのに、奴はそれをしようとしなかった。
むしろ、前より剣を握る手に力が込められている。
「おい、俺が言うのも何だが、その剣離せば?」
つい口を滑らした。決して故意で言った訳ではない。
ツンデレでもない。
しかしサイコは苦しそうに歪む鎧の兜をこちらに向けると、剣を更に力強く握りながら叫んだ。
「貴方達のような…下衆に……この剣が分かってたまるものかッ!」
ついにサイコの剣を握る力だけで、サイコの鎧の腕部分に亀裂が入った。怪物かこいつ。
「お、おい!早くこいつに一発デカいのを決めてやってくれ!」
「分かったわ……槌スキル『グラビティ・スタンプ』!」
再び彼女は銀槌を振り上げ、今度は銀槌の軌道の空間を歪ませたかのようなエフェクトの一撃を叩き込む。
名前からしてどうやら重力操作系のものだろうかという推測は見事に的中し、サイコの動きは時間が止まったかのように鈍くなった。
「体が…動か…ない……!?」
「スキル連鎖……槌スキル、『グラビティ・アンド・グラビティ』!!」
銀槌は再び輝き出し、今度はサイコを思わず目を瞑る勢いで地面にのめり込ませた。
先程のスカルなんちゃらと違い、地面には言葉の通り「陥没」が出来ている。
サイコの動く気配は無い。というか生きてる?
「な、なあ、今の技って、どんくらいのダメージを与えるんだ?」
「え?ああ、『グラビティ・アンド・グラビティ』はその気になれば竜を一頭は瞬殺出来るけど沢山力を使うし武器にも凄く負担がかかるから、そんなに連発は出来ないわ。」
連鎖だの負担だのと話を聞く限り、この世界でのスキル概念はどうやら奥が意外と深そうである。
「じゃ、じゃあ流石にあの野郎も……」
「ええ、多分だけど……」
ついフラグ発言をしてしまうとは、俺にも参ったモノだ。
案の定、陥没の亀裂が嫌な音を立てながら裂け目を広げた。
燻る煙の隙間から、一本の腕がぬっと現れ、地面の感触を確かめるかのように手を動かした。
「あいつホントに人間かよっ!?」
「…………」
どうやら、銀髪の美少女には思いあたる節があったようだ。
口元に手を当て、何かを考えるような仕草を数秒した後、
「逃げましょう。」
「え?」
俺の手をがっしり掴んだ彼女は、思い切り裏路地を駆け抜け始める。
「あっ、ちょっ、まだあの店には俺の連れが……!」
「だったら尚更よ。」
彼女につられて走りながら後ろを振り返ると、見てはいけないモノを見てしまった。
「殺ォォォォォォスゥゥゥウァァァァァッ!!」
「ひいいいいいいいい!」
何だよそっちもチートかよ!序盤でよく主人公の力を誇示する為のモブキャラとか、そういうのかと期待しちゃってたよ!
だがしかしっ!ここで更なるチートを見せつけ、能力の差を大いに誇示するのが主人公!俺のようなチートケースに至っては、同格のライヴァルキャラが存在する事さえ許されないんだよ!
「『闇騎士』ォァァッ!」
正直応じてくれるのか不安でしょうがなかった俺の呼び声に、俺の役職はどうやら反応してくれたようだ。
一度すりぬけられた手中に再び収めんとばかりに両手を大きく広げ迫る俺の影はまさにパラダイストビヘビの如し。
真っ黒な腕は伸び、サイコの鎧をひしと掴んだ。
「ついでにそのままやっちまえぇぇぇぇぇ!!」
従順になったらしい俺の影もとい『闇騎士』は、その左手を振り上げる。
俺のささくれだったシルエットは刹那の時を経て、「剣」の形を為した。
やる気が溢れ出る時ってありますよね。




