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第1話 兄と弟

 英堂えいどう千夜せんや、高校一年生。


 主な趣味として漫画やラノベ、音楽を嗜む。アニメも稀に見るが、時間がかかる為そこまで好きではない。金に糸目を付けずこだわり抜いた漆黒のヘッドホンは宝物だ。

 音ゲーを得意としていて、空き時間を見つけては鍛錬に励んでいる。

 机の上には通好みのラノベを躊躇無く積み上げ、一心にスマホの画面を見つめながら、タンタカタンとリズミカルなタップ音を刻む俺を、周囲の人間はどう思っているのか。


 「気持ち悪ぃな。」


 そんなところだろう。実際、俺自身もそう思っている。

 スマホで音ゲーするくらいならLINEの返信作業でもしてろよ。という様なリア充的観点からの指摘は、指摘してくれるだけありがたいと思う。

 だが残念ながら返信作業に勤しめる程俺のLINEにはメッセージが溜まらない。

 マメにチェックしている訳ではない。こちらに届くメッセージの件数がただ単に少ないだけだ。

 親と、数人としか連絡先を交換していないのだから仕方ないだろう。そりゃ過疎るわ。

 唯一俺のLINEを盛り上げてくれているのは、俺の弟くらいだろう。


 俺の弟、英堂えいどう一夜いちやは小学五年生。まだガキだ。

 そう、あいつはまだガキなんだ。俺より五年も後に生まれたんだ。

 だがあいつの人間としてのスペックは、俺を遥かに凌駕していた。


 まず。塾にも通わずして、中学受験をする輩達と対等或いはそれ以上の学力を有している。

 ガリ勉かと思いきや、スポーツも万能。球技からマラソン、体操まで軽々とこなす。

 性格も嫌味に感じない程度に気配りが出来る性格の為、老若男女に好かれる。

 更には社交性、コミュニケーション力も高く、教師陣からは賞賛の声が尽きない。

 学力は平均値、運動に関しては人並み以下の兄と比べると凄い弟だ。

 そして自然に比べられてしまう兄の苦労も並のものではないのだ。


 だが、そんな弟でも(回数は少ないが)失敗を犯してしまう事はある。

 俺が今まで弟を見てきた中で一番の失態は、俺自身も深く関係している。

 というより、俺がいなければ弟はあんな失態は踏むどころか、かする事もなかっただろう。

 その点に関しては、俺も申し訳ないと思っている。

 そう、弟の犯した最大の失態とは。


 「兄の趣味(・・・・)に興味を持ってしまった事」である。


 あれは初春、一夜が小学四年生になり、俺が中学三年生になりたての頃だった。

 俺が丑三つ時に自室でPCの照明に照らされながらまとめサイトを巡回していると、重く静かな音と共にドアが開き、弟が入ってきた。

 

 「おうふっ!?。」


 予期せぬ来訪者に俺は思わず奇声を発してしまう。

 そんな俺を純粋な目で見つめながら、弟はこう言ったのだ。


 「にいちゃんはいっつも、夜に何を見ているの?。」


 何って言われましても。

 未だテンパり気味の俺は何とか姿勢を立て直した。


 「えっとね、その、ニュースだよ。」

「何のニュース?。」


 俺がたった今閲覧していたのは、俺が個人的に目をつけている新作ラノベの批評スレだった。だが、それをそのまま弟に伝えた所で分かってもらえないだろう。

 だから俺は、丑三つ時に己の趣味を、弟に一から説明する事にしたのだ。

 明日は日曜日だし、少しくらい夜更かしさせても問題は無いだろうという、賢明な兄の判断の末であった。



 時計の針が四時を回る頃、弟はもう以前の弟では無かった。弟は汚れてしまった。いや、汚してしまった。

 俺がついにダウンし、薄汚い部屋に転がった毛布を適当に取って、それを羽織り静かな眠りについた後も、弟は俺のPCを占領し、見事なタイピングでネット中を疾風の如く駆け回り自ら毒されに行っていた。


 今では弟も自室に大型PCを設置し、小学五年生の癖に複数タグを展開し、同時に複数のアニメを見つつまとめサイトの巡回、某ネット掲示板のスレッド保守等をこなしている。

 弟の部屋から某美少女STGのBGMが聞こえて来る度に、俺は罪の意識にかられている。

 まあ、相変わらず学問運動共に完璧なので問題は無いのだが。



 そもそも、こうして弟の事を呟きつつも、現在進行形でPCを使い弟と一緒にMMORPGのレベリングをしている時点で、このクズ兄の方が重症なのである。

 

 

 不定期更新の見切り発車という酷い有様ですがなるべく頑張ります。

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