よく使われるキーワード
ポイントなどを使ってジャンル別に色々と見てきました。今回はそれらのデータから一旦離れて、別のデータを使って分析していきたいと思います。
それでは今から何を使うのかと言いますと、キーワードです。絶対ではありませんが、大抵の小説に設定されているその小説を象徴する単語です。数多く投稿されている中から自分の小説を見つけてもらうためにも、このキーワードは欠かせません。
ということで、早速見ていきたいと思います。まずは『小説家になろう』全体でどのようなキーワードがよく使われているのかということを見ていただきましょう。
『小説家になろう』から取ってきたデータの中でキーワード項目に詰め込まれている単語を全部分解し、その上で集計しました。すごく面倒でした……
それはともかく、この「全体」表は小説に設定されている各キーワードの総計です。今見ていただいている表は上位30単語の一覧ですね。つまり、これが『小説家になろう』で最もよく使われている単語なのです!
どうでしょう。意外でしたか? 最もよく使われているキーワードは「残酷な描写あり」なんですよ。次点で「R15」です。皆さんそんなに残酷でR15なお話が好きなんですか? 私はそこまで残酷なのはちょっと……いえ、エッチなのは大好きですけどね!
私の嗜好はともかく、この一覧表を見て「おや?」と思われた方がいらっしゃるかもしれません。そう、「残酷な描写あり」と「R15」って単なるキーワードじゃないですよね。警告タグです。他にも「ボーイズラブ」や「ガールズラブ」もありますけど、これらが上位にきているんですよ。
この理由はおおよそ想像がつきます。通常のキーワードは作者が思うように設定しますが、警告タグの4つはそうではありません。この4種類の内容が苦手な方のために設定する場合があります。事前に避けられるようにするためのタグなわけですね。
そうなりますと、少しでも引っかかるかな?と思ったら念のためにと設定する作者も多いでしょう。更には、小説を読んだ読者からこのタグを付けた方がいいんじゃないの?と指摘を受けてつけることもあります。そんな感じでみんなが使った結果、「残酷な描写あり」と「R15」がワンツーフィニッシュを飾ったんじゃないでしょうか。つまり、小説の本質や作者の意図とは別に設定されている可能性があるわけです。
そういったことを考えますと、本当の意味での1位というのは「恋愛」と言えるでしょう。私はてっきり「ファンタジー」という言葉が実質1位だと思っていたので意外です。そうか、みんなそんなに色恋沙汰が好きか!
まぁ確かに恋愛というジャンルはありますが、別に他のジャンルでも恋愛の要素はいくらでも入れられますからね。歯茎ごと溶けてしまいそうな甘ったるいものからさらっと軽く揚げる程度のあっさりしたものまで、ある意味ファンタジーよりも汎用性が高いからこその使用頻度なのでしょう。
そしてその次が「異世界」です。これは順当なところでしょう。更にその次に「現代」です。ああ、ちょうどいいのでお話をしておきましょうか。この「現代」ですが、実は一覧表の下の方に似た単語「現代」というのがあります。このように、今回の集計では全く同一でない限りは別物扱いをしています。理由は手間が大変だからです。他にも「コメディー」と「コメディ」、「学園」と「学校/学園」があります。同じ意味で使われているのか、それともきちんと異なる単語として使われているのか調べようがないという理由もありますが。
こうして眺めていきますと、随分と見慣れた単語が並んでいます。しかもそれだけではなく、先ほどの「恋愛」や「ファンタジー」というようにジャンルを示す単語がよく出てきます。この一覧表内だけでも、「学園」「SF」「コメディー」「冒険」「文学」「ホラー」と8つも発見できました。キーワード検索対応なのかもしれません。
それと下の方に「ネット小説大賞」という単語がありますね。時期としてはそういうときでしたのでたまたま上位に現れています。私は余裕で落選しましたけどね……
こうして見ていきますと、警告タグや規格物のキーワードを除くと大体どのような単語がよく使われているのかが浮かび上がっています。ふむ、時代は異世界ファンタジーで恋愛が絡めるといいわけですか。現代であれば尚良いと。私には無理っぽいです。
さて、それでは次に各ジャンル別の上位キーワードを見ていきましょう。
各一覧表に載っているキーワードは全体のものと似ているところがあります。しかし、もちろんジャンル特有の特徴もあります。そういったところを紹介していきたいと思います。
――文学――
ぱっと見た印象になるなるんですが、全体的に学校が舞台になっていることを連想しやすい言葉が上位を占めていますね。「高校生」「大学生」「学園」「学校/学園」「中学生」とありますし、間接的に連想できそうな言葉として「青春」「少女」「少年」「日常」なんてものもあります。学校を舞台にした方が書きやすいのかもしれません。
上から順番に見ていきますと、「文学」「現代」「恋愛」が上位3位を占めているのはさすがですね。特に違和感はないです。更に下に視線を移しますと「ファンタジー」なんてキーワードがあるんですか。ちょっと驚きました。ファンタジー文学、あるいは文学的ファンタジー? どんな内容なんでしょうね。
次が「短編」と「ショートショート」です。これだけ上位に表れているということは、短編小説がそれだけ求められているということなのかもしれません。他には「SF」や「異世界」ですね。私にとって文学といえば純文学ですからどうしても違和感を感じてしまうだけなんですが。
――恋愛――
文学と同様に、全体的に学校が舞台になっていることを連想しやすい言葉が上位を占めていますね。「高校生」「学園」「学校/学園」「大学生」「中学生」って、文学と全く一緒ですね。間接的に連想できそうな言葉として「青春」「少女」「少年」というキーワードがあるのも一緒です。
他のジャンルでもそうなんですが、ジャンル名と同じキーワードが最もよく使われています。しかも2位に3倍近い圧倒的な差をつけてです。恋愛ジャンルなのに更に「恋愛」と強調するのはどういうことなんでしょうか。
次に目についたのが「幼馴染み」と「三角関係」というキーワードです。恋愛小説の王道ですよね。このふたつのキーワードを設定した小説も多いのではないでしょうか。他には「ドキドキ」や「らぶらぶ」なんてキーワードが目立ってました。こういうキーワードが多いと何か安心します。
あと、「年の差」というキーワードもありました。勝手な想像ですけど、10代の女の子が大人の男と恋愛するような話なのかもしれません。逆ですとショタコンみたいになっちゃうんですが、そういうのも多いのでしょうか。
――歴史――
キーワードの中に時代を現す言葉が散見できます。「戦国時代」と「江戸時代」が特に人気があるようですね。それに続いて「幕末」、意外なことに「平安時代」なんて言葉もあります。あと、大雑把に「中世」なんて言葉もありますね。日本ですと鎌倉時代や室町時代を指しているかもしれません。
上位に「タイムスリップ」というキーワードがありますけど、歴史物にタイプスリップは定番のひとつです。ある意味、ファンタジー世界の異世界転移と同じと見なせるでしょう。あ、よく見たら「転生」って言葉があります。ということは、この「タイムスリップ」というのは転移の言葉を置き換えたものと言い切っていいでしょう。転移先が異世界なのか過去なのかの違いだけですからね。
他には「戦記」や「架空戦記」なんてキーワードもあります。ジャンルとして戦記があるにもかかわらず歴史ジャンルで公開しているということは、歴史上の人物を主人公に据えているのかもしれません。それか、タイムスリップした主人公を中心にしているのでしょうか。
面白いところでは「新撰組」と「新選組」ですね。歴史物はさっぱりなんですが、実在したのは「新撰組」の方ですよね? となると「新選組」は書き間違いなんでしょうか? それともわざと? 私にとっては今回一番の謎キーワードです。
――推理――
やはり推理物だけあって、それに類するキーワードが多いです。代表的なものとして「ミステリ」「ミステリー」はそのものを表していますし、「殺人」「探偵」「刑事」「サスペンス」「犯罪者」「殺人事件」「復讐」「事件」という言葉も代表的な言葉といえるでしょう。というか、これらのキーワードで世の推理小説の大半をカバーできるのではないでしょうか。それくらい推理物では定番の言葉ですよね。
あれ、そういえば、この「犯罪者」っていうキーワードはどういうことなんでしょうね? 犯罪者が存在する小説っていうことなんでしょうか? 他のキーワードはその言葉を付ける理由が大体予想できますけど、これだけわかりません。あ、犯罪者の視点で語られるということなのかもしれませんね。不思議なキーワードです。
――ファンタジー――
一番人気のファンタジーですが、最も目立っているだけにどのキーワードも見たことのある物ばかりです。ある意味最も説明しにくいですね。
上から見ていきますと、「異世界」「魔法」「恋愛」「冒険」と続いています。大体どんなファンタジー小説にも盛り込まれている内容ですよね。これらの要素がないファンタジー小説を探す方がむしろ難しいのではないでしょうか。
それに続いて「転生」「チート」というキーワードがあります。今の『小説家になろう』のファンタジー小説に数多く盛り込まれている設定……と、思っていたらあまりそうではないようです。確かに上位にランクインしていますが、設定数が5千~6千くらいなんですよね。ファンタジー小説の数が10万弱ですから意外と使われてないように思いました。そういう意味では「バトル」というキーワードも同じです。もっとたくさん使われていると思っていたんですけどね。
逆に「魔王」というキーワードが上位30位内に入っているとは思いませんでした。確かに魔王をクローズアップした話は見かけますが、こんなにたくさん使われていたんですね。
あと気になるところといえば、「超能力」というキーワードですね。どちらかというとSFのジャンルで使う言葉に思えるんですが、まさかファンタジーのジャンルで見かけるとは思いませんでした。あ、「現代」がランクインしているので、これと一緒に使われているのかもしれませんね。
――SF――
私なんかですとSFと聞けば科学技術が発達した世の中や宇宙に進出した人類なんかをすぐに思い浮かべます。そういう世界は大抵未来のお話なんですけど、キーワードの上位にありますね、「未来」って。もう少し下に目を向けると「近未来」という言葉があります。あ、「宇宙」もありますね。
他にもSFを連想させるようなキーワードがないか探してみますと、いくつか見受けられます。まずは「ロボット」ですね。最早定番と言っていいでしょう。自分が乗り込めるほど巨大だったり人間と見た目が変わらない美少女だったりするのかもしれません。ちょうど「アンドロイド」というキーワードもありますしね。
お次は「VRMMO」です。これを実現するための技術のことを考えますと確かにSFで正しいと思います。しかし、このVRMMOで取り扱っているゲームは大抵ファンタジー物で、その中に取り込まれて何かをすることになりますから、私の印象としてはファンタジーなんですよね。ですから、ごく個人的な意見ですけど、VRMMOがSFに表れていることに違和感があったりします。
あと驚いたのは、「エンターテイメント」なんていうキーワードがあることです。私なんかですと『小説家になろう』へ投稿されている小説はほとんどがエンターテイメントだと思っていますが、SFの場合ですとこのキーワードが上位に入るくらい投稿された小説は娯楽小説じゃないということなんでしょうか。いや、きっとキーワード検索対策なのでしょう。恐らくそうなんだと思います。
それと、「魔法」というキーワードも上位に食い込んでいるんですね。ファンタジーのジャンルで「超能力」というキーワードを見つけたときくらい違和感があります。どんなお話なんでしょうか。
――ホラー――
ぱっと見たところ、ホラーらしいキーワードがいくつも目につきますね。「オカルト」から始まって、「殺人」「霊」「悲劇」「幽霊」「怪談」「ゾンビ」など、定番ともいえる単語が並んでいます。
変わったところでは、「バッドエンド」というキーワードがあります。こういうホラー物ですと、犠牲者はつきものですから全員仲良く生還というのはなかなかありませんが、主人公を中心としたグループは助かることが多いです。しかし、「バッドエンド」とわざわざ設定しているということは、全員が死ぬか不幸になるような結末なのでしょう。私としてはなくてもいいような気がするんですが、バッドエンドが嫌いな読者のための配慮なのかもしれません。
それと、文学と同様に「短編」と「ショートショート」というキーワードがランキング入りしています。ということは、短編も需要があるということなのでしょう。相性が良さそうなのはわかりますので、これは納得できます。
――コメディ――
一見すると何か傾向がありそうな気がするんですが、どうにも微妙ですね。「高校生」や「学園」という学校関連のキーワードは見受けられますが、そこまでではなさそうです。むしろ、何でもありというのが特徴なのかもしれません。
ちょっと変わってるなと思ったのは「残酷な描写あり」というキーワードがランクインしていることですね。コメディーなのにそんな描写があるんですか? スプラッタ風のギャグなんかをかますんでしょうか。次は「ハッピーエンド」です。このキーワードがよく使われているということは、バッドエンドな終わり方をする小説もあるってことですよね? 一体どんなお話なんでしょうか。見たいような見たくないような……
一番よくわからなかったキーワードとして「ライト」があります。一体どういうことなんでしょうか? ヘビィな話があるってことですか? 上位30位にランクインしているということはよく使われているということです。一体どんな小説なんでしょう。
それと、文学・ホラーと同様に「短編」と「ショートショート」というキーワードがランキング入りしています。ということは、短編も需要があるということなのでしょう。相性が良さそうなのはわかりますので、これは納得できます。
――冒険――
以前ちらっと書きましたが、冒険というジャンルはファンタジーと重なる部分が大きいです。そのため、使われるキーワードが似てしまうのは仕方のないことでしょう。
あえて違いを見つけようとすれば、「旅」でしょうか。冒険小説はもちろん、ファンタジー小説も基本的にあちこち行きますから旅は欠かせない要素です。しかしあえて「旅」というキーワードを多用しているんですね。ということは、旅をすることそのものがメインテーマということなのでしょう。
――学園――
他のジャンルで学園という単語が上位キーワードとして常連のように出てきていたので、このジャンルは基本的に何でもありと言えるでしょう。一覧表を見ても、他のジャンルで出てきたキーワードばかりです。
頑張って違いを見つけようとするならば、「部活」というキーワードですね。なるほど、確かに日本の学校生活では当たり前のようにあります。これは学園物ならではといえるでしょう。学園のジャンルで上位にランクインしているのもうなずけます。
――戦記――
さすがに戦いに関するキーワードが多いですね。「残酷な描写あり」と「R15」を除けば「戦争」が最もよく使われているようです。戦記物ですからある意味当然ですね。
その中でも目についたのが「太平洋戦争」です。歴史の方のジャンルに入れてもいいのではと一瞬思いましたが、これはまだぎりぎり歴史というには時代が近すぎるのでしょう。他には「自衛隊」ですね。そういえば異世界の軍隊と自衛隊が戦うっていう小説がありましたね。漫画化やアニメ化したあれです。あの影響なのかもしれません。
他には、変わったキーワードとして「艦魂」が挙げられます。そもそもどう読めばいいんでしょうか。船に関する話ということはわかるんですが……うーん、謎ですね。
――童話――
童話という言葉を見て私が思い浮かべるのは日本昔話です。ですから、2位の「ファンタジー」というのは少し意外でした。一覧表の真ん中辺りに「異世界」がありますから、妖怪の代わりに妖精が出てくる童話なのかもしれないですね。
あと、30位にぎりぎり「小学生」というキーワードが引っかかってました。他のジャンルですと中学生以上ばかりでしたが、やはり童話といえば年端もいかない子供がよく出てくるでしょうから納得できます。
――詩――
何の根拠もないですが、私はてっきり文学と似たキーワードが並んでいると思っていました。しかし、思った以上に違いますね。何より学校関連のキーワードがありません。その代わり、「心」「人生」「死」「孤独」「失恋」「別れ」などといった情緒的あるいは哲学的なキーワードが並んでいます。
それと、さすがに詩というだけあって、「歌詞」「詞」「ポエム」「詩集」といったキーワードがランクインしています。なるほど、歌詞もありなんですね。
――エッセイ――
これはまた話をしづらいですね。このジャンルもある意味何でもありなんでキーワードにまとまりがありません。その中でもあえていえば、実話あるいはそれを元にした小説が公開されていることでしょうか。そうなると「日記」や「思い出」というキーワードも実話系といえるかもしれませんね。
それと、やっぱりここにも「ライト」ってありますね。どうライトなんでしょうか。
――リプレイ――
私にとってのリプレイとは、TRPGのプレイ模様を台詞中心の小説風に仕立て上げたものです。ですから、リプレイというジャンルにはそういったものばかりがあると思っています。しかしキーワードに「TRPG」があるということは、そうじゃないやつもあるということなんでしょうか。あ、小説に書き直したものもあるのかもしれませんね。
あと、さすがにリプレイだけあってゲーム名もちらほら見えますね。かつて遊んでいた身としては懐かしいです。
しかし、「F0001-1」や「F0014-5」ってなんなんでしょうね?
――その他――
ジャンルからして何でもありなので、まとめようがありません。一覧表のキーワードだけを見てみますと、他のジャンルで書けそうなものですが、きっとそう単純なものではなのでしょう。
随分と長くなってしまいましたが、以上です。
ジャンル別に見ていきますと、やはりそれぞれ特徴がありますよね。『小説家になろう』全体でよく使われているキーワードを土台に、各ジャンル特有のキーワードが使われているように見受けられます。
それでは今回はここまでとします。




