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天使と初仕事

アセレアとセリーは仕事を探しに掲示板に向かっています。

「町で仕事を頼みたい人は、町の掲示板に自分の名前、仕事の内容、大体のお金を書いた板を掛けるの。この掛けられる板はクエストボードと呼ばれているの。」

 食事を終えたアセレアとセリーは、セリーの提案した掲示板を目指し大通りを進む。道すがら、全く事情を理解していないアセレアに、セリーが掲示板についてを説明する。

「仕事を受ける人はクエストボードを持って頼みたい人に会いに行くの。そこで仕事の細かいこと、具体的なお金を決めてようやくお仕事開始ね!」

「けどそれだと報酬がいい仕事に人気が集まりそうね?」

 セリーの話を聞いていたアセレアが、思ったことを口にする。

「うん。もちろんお金が高い仕事は人気があるよ。けどほとんどはグループで受ける仕事なの。商隊の護衛とか。」

「護衛には確かに人手が必要ね。1つのクエストは1つのグループだけなのかしら?」

「クエストボード1枚につき1グループだよ。だから掲示板のクエストボードの数のグループで分担する仕事もあるみたい。私がしてた薬草採取も、分担されたうちの1つだったの。」

 大体の仕組みを理解したアセレアは、まだ幼いはずのセリーの知識に驚いていた。きっとアセレアと出会う前までに、失敗しながら身に付けた知識なのであろう。アセレアは自分の前を歩くセリーに、今までの話の中で一番気になっていたことを尋ねる。

「けどわざわざ掲示板じゃ不便じゃないかしら?紹介所でも作ればいいでしょうに。」

 アセレアのその質問に、セリーは難しい顔をする。

「昔はあったみたいなんだけど、おーりょー?とか、よこながし?とかがあって無くなっちゃったって聞いたんだけど、何があったんだろう?」

 セリーがわからないと言っていた言葉の意味を知っていたアセレアだったが、必死に考えているセリーのかわいい仕草を見て、答えをいうのを少し伸ばしたのであった。


 掲示板の前についたアセレアとセリーは、掛けられているクエストボードを確認していく。すでに目ぼしいボードは他の人により取られており、残っているのはその日をどうにか過ごせるだけの報酬が記された簡単な仕事だけだった。だがそんな中の1つのボードの仕事内容を見て、アセレアは少し考え込むと、まだボードを見ているセリーに声をかけた。

「今日はセリーも疲れているでしょう?私がこの仕事をこなしますから、貴女は休んでいてください。」

 アセレアのその言葉にセリーは驚き反論する。

「そんな・・・アセレアさんはずっと寝てないじゃない!それにその格好じゃ・・・!」

「大丈夫だから。ね?」

「・・・」

 セリーはアセレアの側に寄り、アセレアの視線の先にあるボードを器用に外す。そして改めてボードの記載内容を確認すると、アセレアの顔を再び見る。そこには大丈夫と頷く、アセレアの柔らかい笑顔があった。


 アセレアが選んだ掲示板のクエストボードに記載されていた仕事には次のように記されていた。

   依頼内容:倉庫内の火の番

   依頼主: 商人街 オプティ商会

   報酬:1人辺り銅貨3枚

   最低2名必要。夕刻から翌朝まで。

 倉庫内に点在するかがり火の管理が主な役目であるが、点在するかがり火を確認するには倉庫内をくまなく回らなければならない。ようは"倉庫番"であった。

 夜間の倉庫内で灯りを絶さない主な理由はもちろん防犯である。灯りが点り、しかも倉庫内を定期的に見回る人がいれば、盗人もそうそう盗みには入れない。もちろんかがり火を一晩中灯すことで経費もかかるが、変に警備としてクエストボードを出すよりも、かがり火と安価に雇った火の番のほうが遥かに経済的である。

 問題があるとすれば一時的に雇う者が盗人であったであろう。だがそんなアセレア心配も、面談した依頼主の気前のいい返事で杞憂へと変わる。

「そこは依頼する者の義務さ!ようは人を見る目ってやつだね!嬢ちゃんたちなら大丈夫さ!」

 どうやらアセレアとセリーは店主の見る目にかなったようである。


 日が沈みかけた頃、仕事の説明を終えた店主の声が倉庫内に響く。

「それじゃあ嬢ちゃんたち!しっかり頼むよ!」

 樽や木箱が積み重なる倉庫の中にいるアセレアとセリーに主人が声をかけ、外へと出ていった。

「さてと、これでしばらくは楽に出来るわね。」

 主人の姿が見えなくなったのを見計らい、アセレアは留め具を外し緩めた外套から文字通り羽を伸ばした。

「ですが大丈夫でしょうか?私たちだけで・・・」

 そんなアセレアとは裏腹に、セリーはまだ不安そうであった。

「大丈夫よ。さぁ、まずはこれを敷きましょう?」

 そういうとアセレアは店主に借りた敷き布の片端をセリーに渡す。倉庫は石畳であるため、夜に腰を下ろすと少し冷える。店主は少女達を気遣い、主に馬車からの荷卸しの際に使用する敷き布を用意してくれていた。敷き布を倉庫の片隅に敷き終えるとアセレアとセリーは早速かがり火の巡回に向かっていった。


 月が高く上るころ、アセレアは自身の膝の上に頭を乗せ寝むるセリーの頭を撫でていた。はじめは目をこすりながらも懸命に起きていたセリーであったが、次第にその小さな体で舟を漕ぎ始め、今ではアセレアの膝を枕にし、寝息を立てている。

「今日のところはいいけれども、セリーのためにきちんとした寝床を確保しないと・・・」

 アセレアはセリーの幸せそうな寝顔を見ながら、夜が更けていくことを肌蹴た格好の自身の肌で感じていた。

今日は忙しいので一話だけ!

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