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天使への告白と決心

 セリーは夢を見ていた。かつて母親が幼いセリーをあやすかの如く、その両腕で抱いてくれていた夢を。暖かい柔らかな母親の温もりに顔が緩む。あの時は両親も健在で笑顔が絶えない暖かな家庭だったな。このまま両親の元へ行けばまたあの温もりを永遠に感じられる。もう少しで行くから待ってて。そう夢の中の両親に言おうとした彼女の手を、銀髪の自分より年上であろう白い羽を抱く少女が握った。セリーは彼女の名前を思い出そうとした。そう確か名前は・・・。


「アセレア・・・」

 セリーが目を開けると焚き火の炎と、炎により照らされる木々が目にはいる。どうやらここは森の中で、すでに夜を迎えているようだ。焚き火と木々が横を向いているのは自分が横向きに寝かされているからであろう。ふと視線を自分の身体に向けると、純白の羽が自分を覆っている。

「・・・え?」

 驚きに声をあげると純白の羽の主の優しい声が耳元に広がった。

「よかった。気がついたのねセリー。」

 セリーは急ぎ声の方向へ身体を向ける。その視線の先には上半身の服を脱ぎセリーに寄り添うアセレアの姿があった。

「ア、アセレアさん、これは・・・どうして服を・・・?」

「どうにかして冷えたあなたの身体を暖めたくて。服があると羽をこちらまで回せないのよ。」

 何てことはないという顔のアセレアは答える。

「そう・・・」

 その答えに納得しかけたところで、セリーは自身が気を失う前の光景を思い出す。

「って、なんで森から出てきたの!?あのまま隠れていれば見つからなかったのに!」

「それはあなたが倒されて」

「なんで!どうして余計なことをしたの!」

 セリーの言葉にアセレアは驚愕する。だが続く喚くような泣き声混じりの言葉を聞き、すべてを理解した。

「私はあの場で捕まって、殺されてそれでよかった!死ねばお父さんとお母さんに会えるもの!だからよかったの!余計なことをしたのしないで!」

 そう。両親がいなくなってから今まで、セリーは"孤独"と戦っていたのだ。だが自ら命を投げ出す勇気がなかったため、セリーは半ば自暴自棄に若い神官に食って掛かり、自らの命を犠牲にしようとしたのだ。アセレアは歳に見合わず気丈に振る舞うセリーを見て良くできた子という印象を持っていたが、すべてをさらけ出したセリーを知り、守ってあげたいという保護欲が生まれていた。

 その気持ちをアセレアは正しく理解出来ていなかったが、その後の言葉は不思議と自然に出てきたの。

「ねぇセリー。種族も名前も知らない私をどうして助けてくれたのかしら?」

「そ、それは・・・」

 半泣き状態のセリーは言葉を詰まらす。

「話し相手が欲しかった。家族が欲しかった。1人になりたくなかった。そうじゃないかしら?」

「・・・」

 セリーの返事はなかった。だがアセレアはセリーの頬を撫でながら優しく言葉を続けた。

「もう大丈夫ですよ。貴女はひとりではありません。私があなたとずっといます。」

 その言葉を聞いたセリーは目を見開き、再び眼から大粒の涙を流しながらアセレアに抱きついて泣いた。アセレアはセリーが泣きつかれて眠るまで、自身の身体と羽で優しくセリーを包み込みながら見守っていた。


 夜が明け森の草木を朝露が濡らす。アセレアは抱きつくように眠る幸せそうな顔のセリーの寝顔を見ながら今後のことを1人考えていた。多分セリーの家には昨日のうちに監視の目がついているであろう。いっそのことこちらから赴き、裁判とやらに望んでやろうとも考えたが、セリーの身を案じると愚考である。アセレアはこの世界のことは知らない。セリーも幼いため知らないことが多々あるであろう。不安しかない考えであったが、アセレアはセリーの頭を撫でつつ先へ進むことを決心した。


こうして天使さんの長い旅が始まったのである。

とりあえず冒険スタートまでのお話はここまで。

さてと、仕事に戻りますかね。

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