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天使達の街移動

どうやらアセレア達は神殿に目をつけられたようです。

 私はセリーと言います。

 少し前まで、私は1人でくらしていたけど、今はお姉ちゃん2人とくらしています。

なので今日はお姉ちゃんたちのことを書きます。


 アセレアお姉ちゃんは、天使さまです。

 背中から白い羽が生えています。きれいな白い羽です。その羽につつまれると、体だけでなく心もぽかぽかします。

 アセレアお姉ちゃんのスタイルは、同姓の私から見ても見ほれてしまうほどです。髪は銀色でサラサラして、私とちがってきれいなストレートヘアです。ですが、アセレアお姉ちゃんはおしゃれには興味がないみたいです。この前なんて、"じゃまだから切る"と言って、ナイフで切ろうとしていましたが、お願いしたら止めてくれました。あんなにきれいな髪を切ってしまうなんてもったいないです。今は私がプレゼントした髪紐をつかって後ろに束ねています。まるでお馬さんのしっぽみたいです。アセレアお姉ちゃんはいつも凛々しいです。だけど、たまに少し悲しそうな顔になります。私が迷惑をかけてばかりだからかもしれません。

ごめんね、アセレアお姉ちゃん。


 セルティお姉ちゃんは、エルフさんです。

 私が聞いていたエルフさんとは少しちがいますが、それでもエルフさんです。耳が笹の葉のようにぴょこんとしています。妹の私が言うと怒られるかもしれないけど、とてもかわいらしいです。セルティお姉ちゃんは日にやけたような肌と、少しくすんだ赤色の髪と瞳です。髪は私がこの前短くしてあげました。所々長さが違うかもしれないけど、セルティお姉ちゃんは"ありがとう"と言ってくれました。耳もぴこぴこ動いていたし、きっと本当に喜んでくれたんだと思います。だけど、この世界に来て悪い兵隊たちに捕まったときに付けられた傷跡が体中についてしまいました。セルティお姉ちゃんは"兵士たるもの気にしてはいけません"と言っています。私から見ても痛々しいのだから、本当は悲しいに違いないです。耳もうなだれていたので間違っていないと思います。

 セルティお姉ちゃんは隠し事が苦手みたいです。


 2人のお姉ちゃん達は、別の世界から来たと言っていました。きっとそれは間違いないです。あまりにこの世界を知らないし、たまにまったく知らない土地の話を2人でしています。今私とお姉ちゃん達は、お姉ちゃん達が元の世界へ戻るための"手がかり"を探していますが、いい結果はありません。


 だけど、私は悪い子です。

 お姉ちゃん達の探す"手がかり"が見つからないことに、安心しています。


 だって見つかったらまた1人になってしまうんだもの。




「セリーちゃん、何を書いているの?」

突然のセルティの問いに、セリーは思わず紙を隠す。

「だめよセルティ、乙女の秘密を無理に暴こうとするのはいけないことだわ。」

アセレアは、自身の武器である戦斧槍の手入れをしつつ、2人の攻防を見守るのであった。




 神殿を訪ねてから2週間、アセレア達はひたすら路銀を稼いでいた。アセレアとセルティ討伐の依頼をこなしつつ、余った素材を商店へ持ち込む。セリーは薬草を探し回り、摘み取ってきては依頼物として納品しつつ、あまった薬草で素人仕事ではあるが薬を作成する。

 また今後のことを考え、装備の一新も同時に行っていた。とはいっても、アセレアとセルティはすでに武器を持っているため、防具の充実化が主である。セルティは早々に魔物の皮で出来た軽鎧に決まったが、問題はアセレアであった。アセレアとしては、かつて自身が付けていたようなフルプレートが欲しかったのだが、この世界のフルプレートにはアセレアの背の羽を通せるような余地は無く、装着できないのだ。

「すまんな嬢ちゃん、この国の防具は人族に合わせて作ってあるからな~。」

 セルティの弓を購入した店の店主の言葉に肩を落とす。

「嬢ちゃんの背の羽を通すには結構大きな穴が必要だし、いじるといじった部分から傷んだりするぞ?それならいっそのことこんなのはどうだ?」

 そう言って一度店の奥に引っ込んだ店主が持ってきた鎧は、背中の部分が大きく開いており、背面は鎧としての機能していない。だが前面には金属製のブレストプレートとタセットが付いており、タセットの下は少し丈が短いスカートになっている。

「これは大分前に流行った、ある劇の主人公の衣装をモチーフに作られてたんだ。作りもそれなりなんだが、いかんせん女性の冒険者っていうのはゴツいのが多くてな?こういう鎧より、しっかりとした男物の鎧を好むんだよ。嬢ちゃんなら着こなせると思うんだがどうだ?安くするぞ?」

 アセレアもどちらかといえば機能を追い求め、がっちりと身を固めたかったのだが、かといって他に自分の付けられる鎧が無いのも事実である。仕方なく店主の薦めてきた鎧と、同色に近いガンドレットとグリーブに決めたアセレアは、1人心の中で呟いた。

(なんで私はこう"売れ残り"に縁があるのかしら・・・?)

 ちなみに、自身の鎧姿に戦士というよりも乙女らしさを感じて気恥ずかしかったアセレアではあったが、セリーに熱っぽい憧れるような視線で言われた「かわいい」の一言で、更に顔を赤くしてしまうのであった。



「それで、次に目指すのはどの国にしようかしら?」

 アセレアが商店で購入してきた地図を机に広げつつ、3人は夕食を口にする。アセレアとセルティの魔物狩りのおかげもあり、最近は温かい食事にもありつけるようになっていた。アセレアは咀嚼しているセルティとセリーに選択肢を示す。

「この都市へ来た街道は除くとして、選択肢は2つね。」

 西を目指して港町へ出るか、東を目指して隣国へ出るかである。港町へはそう遠くなく、頻繁に出ている荷馬車に乗せてもらえれば2日も掛からずに到達できるが、隣国を目指す場合は距離を考えるとかなりの日数がかかってしまうであろう。

「私は西がいいと思うな。」

 セリーの言葉にアセレアとセルティがほぼ同時に首を傾げる。

「港は人族以外の色んな種族の人がいるから、紛れるのには丁度いいかなって・・・。」

 その理由に、アセレアは納得する。神殿を訪ねて以降、常に監視の視線がある。さすがに宿の内部までは来ないが、窮屈であることに変わりはない。この街を出れば無くなるとも考えられるが、無くならない時のことも考えると、セリーの考えも馬鹿にはならない。

「それに!私、海を見たこと無いもん!見てみたいな海!」

 そんな可愛らしい理由が付け足され、思わず笑みがこぼれるアセレアとセルティは、港からなら船で他の地にも渡れると考え、港町へと向うことにした。

 それからアセレア達は商人街へと赴き、運良く残っていた港町への護衛の依頼を引き受ける。セリーは護衛の頭数に入らないため、一緒に連れて行ってもらうには報酬から天引きされてしまうが、魔物討伐により路銀に余裕のあるアセレア達にとってはさしたる問題ではなかった。



「では皆様よい旅を!」

 それまでお世話になっていた宿の受付嬢が丁寧にお辞儀をする。アセレア達は軽く会釈をすると、宿を後にし、まだ夜が明け切らぬ街を歩いて商人街を目指す。

「さすがにこの時間は人が少ないわね。」

「ええ。ですが監視は相変わらず続いているようです。」

 セルティの言うとおり、3人の後を追い続ける人影が相変わらず

「随分仕事熱心なことね・・・。」

 実際自分達がしたことが、監視をつけられるほどのことなのかと思いながら、


 まだ日が昇りきっていない商人街は、荷馬車の喧騒に包まれていた。どの荷馬車も御者台に屈強そうな護衛を乗せている。アセレアはそんな喧騒の端で待機する依頼主の下へと急いだ。

「お前ら、今日はしっかり働けよ!」

 依頼主である荷馬車の主である行商人は、笑いながらアセレアの肩を叩く。

「ええ、ちなみに今日通る道は護衛を付けなければならないほど魔物が多いのでしょうか?」

「魔物は出ねえんだがな、盗賊が多いんだよ。」

「盗賊・・・?」

「なんだ、何もしらねぇのか?最近この国も物騒でな。殺しに盗み、その他もろもろ色んなもんがはびこってやがる。そんなやつらから見たら俺らみたいな商人の荷馬車なんかまさに鴨だ。んなわけで、あんたらみたいな腕利きを雇って護衛してもらうんさ。」


「なるほど、ですがそれほどならば、軍が動いていてもおかしくないとは思うのですが?」

「あぁ、あいつらは国の荷物の運搬や、それこそ大棚の店の荷物の運搬には付き合うがな、残念なことに普通の商人がいくらやられようと知ったことじゃねえんだよな。」

 複雑そうな表情を浮かべる3人を見て、行商人は肩をすくめて苦笑する。

「まぁ嬢ちゃん達のような異族がどうかは知らんがな、人族っていうのはそういうもんさ。」




 今までトラブル続きだったアセレア達であったが、港町への護衛は順調に推移していた。すでに街道の先には港町の城壁が見えており、その奥には濃い青の水平線が広がっている。このまま行けば何の問題もなく、港町へとたどり着くであろう。

「お姉ちゃん!あれが海!?海なんでしょ!?!?」

 初めて海を見てはしゃぐセリーを見て、アセレアとセルティは苦笑する。依頼主の行商人は、そんなセリーに声をかける。

「なんだい、嬢ちゃんは海は初めてなのか?もう少しで到着するし、なんならこっちに来て見てみるといいぞ。」

 そういうと、馬の手綱を持ちつつ身をずらす。御者台に子供一人が座れるであろうスペースができたところに、セリーは腰掛け、行く先に目を向けながら、できるだけ遠くを見ようと必死に背を伸ばした。

「すみません、セリーがご迷惑をおかけして・・・。」

 アセレアの謝罪に、行商人は人の良さそうな笑みを浮かべる。

「なぁに、無事到着できそうなんだ。何の問題もないさ。それにしても、やっぱ嬢ちゃん達を雇って正解だったな。帝都でもちょっとした噂になっていたし。」

「噂・・・?私たちがですか?」

 初めて聞く話にアセレアが戸惑いを見せると、行商人はおうよと頷く。

「女だが、討伐依頼を難なくこなす、3人組ってな。盗賊ってのは討伐依頼すらまともにこなせない半端もんが多い。そんなやつらからしたら、嬢ちゃんの護衛する荷馬車を襲うってのは、自殺行為だろうよ。」

 どうやら自分達がこなしてきた依頼の数というのは、噂になってしまうほどのものだったらしい。あまり目立ちたくないアセレアは、今後は気をつけなければと考えていると、その真剣な表情を察してか、行商人が言葉を紡ぐ。

「だが嬢ちゃんたちも、気をつけろよ?俺は色んな国を巡っているからわかるんだが、最近この世界は何かがおかしい。大きな戦争がしばらくない平和な世界だというお偉いさんもいるが、俺らからしたら平和とはまったくもって言えねぇ。偽りの平和とでもいうんだろうな・・・。」

 どこか寂しさを滲ませる行商人の言葉が、アセレアの心に深く残るのであった。

セリーの日記の箇所で漢字変換していない箇所がありますが、わざとですんであしからず。

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