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天使の救出劇

アセレアとセリーはやっとゆっくり寝れたみたいです。

 アセレアとセリーは一晩過ごした宿を後にする。

「さて、では出発しましょうか。」

 そいうとアセレアは、宿場町へ入ってきた時の入り口へと向かう。途中まで何も言わずに着いてきたセリーであったが、不信に思い立ち止まるとアセレアに問いかける。

「お姉ちゃん・・・?そっちだと戻っちゃうよ?」

 その言葉を背中で受けたアセレアは振り向くと、いつもの微笑みを浮かべる。

「ええ。やはり"あのこと"が気になるの。だからもう一度あの騎士に会いに行くわ。」

「ええぇ!?」

 セリーとしては、魔狼の居る地へと向かうのは自殺行為以外の何物でもなかった。だがアセレアは自身満々にセリーに告げる。

「大丈夫よ。もし魔狼が居たら引き返せばいいし、いざとなればまた倒して見せるわ。」

「まぁ・・・そうだけど・・・」

 意志の固そうなアセレアの表情をみたセリーはやがて諦め、不安な表情を浮かべつつアセレアの隣へと駆け寄って行った。



 宿場町を出て2日が経った時である。セリーは見えない恐怖にびくつきながら、アセレアに問いかける。

「ねぇお姉ちゃん。結構戻ってきたと思うんだけど・・・。」

「ええ。それらしい魔力を感じ始めたわ。」

 その言葉を聞いたセリーは、アセレアに抱き付きながら辺りを見回す。

「まさか魔狼!?」

 そんなセリーの頭を撫でながら、アセレアはやんわりと否定する。

「いいえ、この魔力は人族の魔力ね。あれほどの部隊ですもの。行軍速度を考えると追いつく頃合いだったし・・・ん?」

 セリーを撫でていた手が不意に止まる。アセレアはその時、"この世界"で感じるはずのない魔力を感じ取っていた。その魔力はとても弱弱しく、今にも消えそうなほどである。

「そんなはずない・・・。だってあの子は・・・。でもこの魔力・・・。」

 アセレアの普通じゃない様子に、セリーはさらに不安をつのらせる。

「どうしたのお姉ちゃん・・・?」

 アセレアは決心すると、セリーに視線を向ける。

「セリー。少し急ぐわ。つかまって!」

 そう言うと、セリーの返答を待たずに彼女を片手で抱きかかえ、背の羽で空へと飛び立った。

しばらく飛んだ後、アセレアは帝国軍の野営地を見つける。野営地にはいくつもの天幕が張られ、歩哨が野営地周辺を巡回を行っている。アセレアはかすかに感じ取れる魔力を頼りに、野営地の端に張られ、立ち番の兵士が2人居る天幕に狙いを定めると、セリーを抱えたまま急降下した。



「しかし暇だなぁ・・・なぁここで見張ってなきゃだめなのか?中で楽しもうぜ?」

 立ち番をする兵士の1人が横にいる同僚に話しかける。

「なんだお前、"ああいうの"が好みなのか?やっぱり女は出るところが出ていねぇとなぁ。」

 そんな下世話な会話を途中であった。急に"何か"が空から舞い降りてきた。

「んな・・・!?」

 突然の出来事に言葉が出ない兵士達であったが、やがて正気を取り戻し腰の剣を抜くと、舞い降りてきた"何者か"に声を発する。

「何者だ貴様らは!?」

 舞い降りてきた"何者か"の1人であるアセレアは、かかえてきたセリーを地へと降ろすと、もう片方の腕で持つ戦斧槍を構えなおすと、兵士達の問いかけに答えることなくその戦斧槍を薙ぐ。完全に不意を受けた兵士達は、手に持つ剣で戦斧槍の刃を受け取めるが、その質量によって吹き飛ばされた。アセレアは吹き飛んだ兵士達が意識を失っていることを確認すると、意を決して天幕の中に入り、そして絶句した。アセレアの眼前には、天幕の柱に縛り付けられた褐色肌の少女、かつてアセレアの居た世界で妹分としていつも居たセルティの姿があった。



 目の前の光景にしばらく身動きできなかったアセレアであったが、我を取り戻すとセルティの元へと駆け寄る。そしてセルティを縛り付けるロープを切断すると、自然に倒れこんでくる彼女を受け止めた。アセレアはすぐセルティを楽な姿勢になるように横たえると、自身の魔力を注ぎ込みながら必死にセルティに呼びかけた。

「セルティ!!しっかりしてセルティ!!」

 その呼びかけと、身体への魔力の流入により、セルティがかすかに意識を取り戻す。その目は虚ろで焦点が定まっていない。やがてセルティは口をわずかに開くと、かすれた声で尋ねる・

「ね・・・さ・・・ここ・・・天国・・・?」

「いいえ、まだ私もあなたも生きているわ。セリー!こっちにきて!」

 意識が戻りつつあることにほっとしたアセレアは、いつの間にか目に溜まっていた涙を拭いながら、天幕の端で固まり立ち尽くすセリーを呼び寄せる。何が起きているのか把握できていないセリーであったが、アセレアの先程まで必死に呼びかけていた言葉から唯一分ったことをアセレアに尋ねる。

「お姉ちゃん。まさかこの人・・・!?」

 アセレアはなおも魔力をセルティに注ぎつつも、顔だけセルティに向ける。

「ええ。けど詳しいことは後よ。お願いセリー。ここからあなたとこの子を脱出させるから、この子をお願い。それから、あなたの魔力をできるだけ注いであげて!」

 唐突なアセレアのお願いに、セリーは顔を曇らせる。

「そんな!?アセレアお姉ちゃんは!?一緒じゃないの!?」

「ええ。私はあの騎士に会わなくてはいけないわ。この子をなぜここまでいたぶったのかも含めて・・・!」

 その言葉にセリーは頷きつつも、さらに顔を曇らせる。

「けど・・・私にできるかな・・・?まだ習い始めたばっかりなのに・・・。」

「大丈夫。セリーにならできるわ。お願いセリー。」

 そう言うとアセレアは、セリーの頭を一撫でし立ち上がる。そして投げ出していた戦斧槍を手に取ると、天幕の外へと向かっていった。

 天幕の外には、騒ぎを聞きつけた兵士達が各々武器を待ち構えていた。

「貴様!我々が帝国騎士団と知っての狼藉か!?!!」

 兵士の中の1人が仰々しく声を上げる。アセレアは声の主を睨み付けつつ、鋭く声を上げる。

「ええ。ですが用があるのはあなた方ではありません!そこをどきなさい!」

 アセレアの威圧感に、兵士達の包囲が一瞬緩む。だが、先程とは別の兵士が怒鳴り声を上げた。

「ふざけるな!相手は1人だ!やっちまうぞ!」

 その声に反応した兵士達が再び包囲を狭める。アセレアは戦斧槍を構えながら、それまで誰にも見せたことのない視線で迫り来る兵士達を見渡す。そして戦斧槍を握る手に力を入れた。

「手加減は致しますが、命の保証は致しません!それでもいいならかかってきなさい!」



「ようやく見つけたわ。」

 突然の来訪者に、天幕でくつろいでいた青年騎士は手に持つ盃を地に落とす。だがすぐに腰の剣に手をかける。

「貴様なぜここに居る!?衛兵!!侵入者だぞ!!」

 青年騎士が声を上げる。だが兵士が駆けつけてくる気配は全くない。

「皆様、そこで伸びていらっしゃいますよ?」

 その言葉に青年騎士はうろたえながらも、腰の剣を引き抜く。

「なら、私が直接相手をしてやる!」

 そう言うと青年騎士は声を上げながら、上段から剣を振り下ろす。だがアセレアは焦ることなく戦斧槍で剣を強打し弾き飛ばした。

「くっ・・・!」

 弾き飛ばされた剣とアセレアを交互に見ながら、青年騎士は後ずさる。

「騎士と名乗るには少し腕が足りませんね?そんなことより、あなたに聞きたいことがあります。」

 そういうとアセレアは、努めて冷静に青年騎士に尋ねた。

「先程別の天幕で、瀕死の少女を見つけました。あの子をあそこまで痛めつけたのは貴方達かしら?」

 その言葉を聞いた青年騎士は、額に汗を浮かべつつ口を開く。

「魔族の一族のあいつか?あいつからの情報収集は兵士達にすべて任せたからな。死なない程度にとはいっておいたが、どうせ死ぬ身だ。いつ死のうがあまり関係なかろうよ。」

「魔族の・・・一族・・・?」

「そうだ!あいつを連れてきた男がそう言っていた!あいつが魔狼をこの先の宿場町を襲って、住人や旅人を皆殺しにしたとな。町から逃げ出した者達も、亡骸を魔狼が貪っている様を見たから、生き残りはほぼいないだろうともな!」

 その青年騎士の証言を聞き、アセレアはなぜ青年騎士がアセレア達を"唯一の生き残り"と言ったのかを理解した。だが、新たな謎が脳裏に浮かぶ。アセレアは青年騎士に、丁寧に言葉をかけた。

「少女を連れてきた男の人相などは覚えているかしら?」

 だが青年騎士は鼻を鳴らす。

「ふん、貴様なぞに話すと思うか?私を脅した罪は高くつくぞ?」

 その返答を聞き、アセレアはこの人物からこれ以上の情報が得られないことを察し、深くため息をつく。

「・・・そうですか。では。」

 アセレアはそう言うと、天幕の入り口へと向きなおる。

「貴様!このまま逃げられると思っているのか!?」

 アセレアの視線がはずれたのを見計らい、青年騎士は弾き飛ばされた自身の剣へと駆け寄る。そして剣を手に取ると、再びアセレアに剣を向けた。その時である。

"ウォーーーーーーーーーン"

「・・・なんの声だ?」

 青年騎士は謎の声の方角へと顔を向ける。アセレアは振り返ると、冷たく青年騎士に言い放つ。

「私を捕えるより、魔狼をどうするか考えたほうがよろしいのでは?」

「何!?じゃあ今の声は・・・」

 アセレアは1人青ざめる青年騎士を天幕に残し外に出ると、セルティを連れたセリーが逃げた方角へと勢いよく飛び立った。


仕事が忙しくて全然投稿できなかったよー

いやぁ年度末近くなると大変やなぁ

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