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天使の水浴び

アセレアとセリーは朝を迎えました

 東の空から太陽が登り始める。セリーは差し込む日の光で目を覚ました。彼女はボヤける視界で辺りを見回し状況を確認する。どうやらアセレアに全てを任せ、仕事もせずに眠ってしまったようだ。思い至ったところで、アセレアの姿が見えないことに気がついた。

「アセレアさん?」

彼女は立ち上がり、アセレアを探し始めた。

 倉庫内にアセレアの姿が無いことを確認したセリーは、1人倉庫の外に出る。まだ夜が明けたばかりであるからか、倉庫前の道に人通りはなく静寂に包まれている。そんな中ふと水の音が聞こえたセリーは、昨日依頼主に教わった井戸へと歩みを進めると、ようやく一糸纏わぬ姿で水浴びをするアセレアの姿を見つけた。

 軽くウェーブがかったセミロングの銀髪に綺麗な白い肌。無駄が全くないすらっとした四肢。セリーよりは大きいが、慎ましい形のいい胸部。まるでかつて読みきかされた童話からそのまま出てきたかのような神々しい白い羽。性別が同じセリーから見ても完璧であった。ただ1つの問題があるとすれば、彼女には恥じらいがあまりないことだ。そんなアセレアの問題点に今は感謝しつつ、セリーに気づいたアセレアに声をかけられるまで、その姿に見とれていた。


 日もしっかりと登り、依頼主より賃金をもらったアセレアとセリーは、朝食を求めて屋台街を歩いていた。

「そういえばセリー、さきほどのお金はどれくらいの価値があるのかしら?」

「アセレアさん、それでよく今まで生活出来たね!?」

 アセレア問いにセリーは驚きを隠せなかったが、丁寧に説明を始めた。


 グロリア帝国では金貨、銀貨、銅貨の3種類が出回っている。流通の主体は銀貨と銅貨であり、金貨はセリーも見たことがない。それぞれ両替は可能だが、その年の発行枚数によって変動し、物価もその時々で変動するらしい。ちなみに今は銅貨1枚で黒パンが1個ないし2個手にはいるらしい。

「だから今日の食事代で昨晩の分は・・・」

 セリーはアセレアに苦労をかけ稼いだお金が、実はそれほどいい仕事ではなかったこと遠回しに告げた。仕事の拘束時間で見た場合、たしかに旨味は少ない。だがアセレアの考えはセリーの考えとは違っていた。

「けれど屋根の下で寝れたんですもの、欲張ってはいけないわ。おかげでセリーの可愛い寝顔もゆっくり見れましたし。途中で私の膝に涎を垂らしそうになったときはどうしようかと・・・」

 セリーはそこまで聞くと、顔を赤くしながら、藍色の外套を纏うアセレアをポカポカ叩いた。こうして2人の1日は和やかに始まった。




 同時刻、ニクトにあるの神殿の一室に、豪勢な料理を前にした3人の男の姿があった。そのうちの1人、セリーの町の司祭が苛立ちを隠せないまま口を開く。

「せっかく信心深い方々からの情報を無駄にして、2人の餓鬼程度も見つけられないとは、この町の兵も質が落ちたのではないかね?」

 頷きながら隣に座るセリーの町の若い神官が頷きながら合いの手をいれる。

「1人は空を飛べるのですぞ?城門からではなく、城壁から入られたのではないのでは?」

 二人の前に座るニクトの神殿の司祭は涼しい表情で反論する。

「ふん!そもそも貴殿らが押さえられなかったのが悪いのではないかね?」

 この言葉を聞いた前の二人は激昂し、わめき始める。ニクトの神殿の司祭はそれらを無視しつつ、内心でこう呟く。

(この低能力者め。そんなことだから、あんな田舎町、いや田舎村しか任されんのさ。)

 第一、種族が違うだけで異教徒と決めつけること自体、前時代的であり浅はかである。この町にも少数ながら異種族が住み着いているが、特に害をなすことはしていない。だが自分より地位の低い目の前の2人にここまで言われるのは非常に癪であった。

「まぁご安心ください。手はすでに打ってあります。」

 1人ほくそ笑むと、わめくのをやめ見合わせる2人目を無視し、料理に手をつけ始めた。


 朝食のスープをすすり終えたアセレアとセリーは、掲示板のクエストボードを眺める。昨日よりも多くのクエストボードが残っている。

「けど、さすがに腕を出さないで済みそうなものは無いわね・・・」

「そうですね、なら鳥人族を募集している仕事なんかどうですか?それなら紛れて大丈夫かも!」

 そういうとセリーは1枚のクエストボードを差し出す。

   依頼内容:近隣都市への手紙運搬

   依頼主: 商人街 アロー通信

   報酬:銅貨6枚

   鳥人族の方大歓迎。

 この町へ入る際の魔力が回復しきっていないアセレアが首を振るのを見て、セリーは不思議そうに思いながらも、ボードを元の位置に戻す。そしてその隣のボードを差し出してくる。

   依頼内容:給仕

   依頼主:歓楽街 酒場ウィンド

   鳥人族給仕専門の酒場です。

 たしかに給仕位ならできるだろう。アセレアはセリーからボードを受け取る。

「セリーはどうするの?」

「私はこれにします!」

 そういうと、セリーは商人街での売り子のボードをアセレアに見せる。

「では今日は別々に仕事をしましょう。終わったらこの掲示板の前に集合ね。」

「はい!」

 そしてアセレアとセリーはそれぞれの仕事へと向かっていった。

「おはようございます。ここが酒場ウィンドでよろしいでしょうか?お仕事のことで来たのですが・・・?」

 アセレアはたどり着いた酒場の入り口で声を上げる。だが人の気配が全くない。アセレアは直観的に身構えたが、背後からの接近までには対応できなかった。アセレアは後頭部を強打され悶絶する。今の一撃で仕留めきれなかったことに驚いた。アセレアが攻撃してこないと知ると仲間を呼び寄せる。

「司祭殿に伝えろ。異教徒を捕縛した。これより牢獄へ移送する。」


今日も1話だけ!

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