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災厄の生き様  作者: 火憐ちゃん
天才編
99/122

今日咲き誇る一柱の光

天才編ラストです。

「お前らは…許さない…必ず殺す」


飛影の目が、ドクター、ゴウライ、メルティを射抜く

少し離れた場所には、血塗れで辛うじて息をしている咲

ゴウライの手によって車に乗せられそうになっている杏


それだけ

それだけで充分であった


飛影は魔力を静かに抑え込む

一般人以下のその魔力では、到底魔法使い3人を相手にして勝利できるとは限らない


だが、絶対強者級の飛影の殺気だけで3人を怯ませていた


『っ!!?』


「ヒエー助けて!!!」


泣きながら杏は叫ぶと同時に飛影は拳を握る


(こいつらは…殺す…必ず…殺す…あは!…あははははは)


「アハハハハハ!!!!!!!!!!」


筋肉が断裂するのも覚悟で飛影は足に力を込める

最初の一撃でメルティを殺す

厄介な魔法使いを先に殺す


飛影はそれだけを狙い


「咲を助けて!!!!!!」


「…」


ピタリと飛影の動きが止まった


「急げ!!!今の内に撤退する!!領事館まで辿り着けば勝ちだ!」


飛影に不気味な気配を感じ取ったドクターは即座に撤退を指示する

その指示に従いメルティが車に乗り込みゴウライと共に杏を乗せて車が急発進


「咲!!」


杏の言葉は飛影の行動の優先順位を変更させた

魔力を抑えたとはいえ、15秒もあれば3人を殺して杏を救うことが可能であったが咲の救出が最上位になった


飛影が咲の元へ駆け寄り、身体を抱き上げる


「…ぁ?」


既に意識は薄れていた

腹部からの出血はもちろんのこと、腕や足から次々に出血している


(…魔法を食らったか!)


「おい!生きてるか!!?」


「…ぅるさい…お…お嬢は」


飛影の声に僅かに意識が戻る


「…連れ去られた…だが今はお前を優先する!」


「…ぁぁ…かなり…傷を…負ったが…お…前なら…治せ…るのか」


飛影の魔法は、炎の炎舞、風の風華、他のヘリオトロープ

炎舞や、風華では治療することはできないが、ヘリオトロープを使用すればハルカの回復魔法レーリスが使用できる


滅多なことでは、ヘリオトロープを使用しない飛影だがこのような場面では使うことに躊躇は無い


「…無理だ」


(…この傷は……もう…助からない…)


僅かに動揺する咲へ飛影は続ける


「咲に魔法は使えない…先天的に魔力が低すぎるんだ…一般人が100とするなら咲は1以下…低すぎる魔力は魔法に対しての抵抗力が皆無だから魔法を使えば今みたいに身体が耐え切れずに破滅する…」


飛影がメルティに捕まっていたときに魔力が低すぎたのは、これが原因である

咲の魔力が低すぎるため、飛影のいつも通りの魔力垂れ流し状態でも咲の身体には負担が掛かってしまう


魔法などもってのほかである

完全治癒を誇るレーリスであっても、魔法は魔法である


掛けた一瞬だけであれば、傷は回復するがその後に待っているのは肉体の崩壊である


「…そう…か…死ぬ…か…」


「…悪い…魔王っていってもできないことはあるんだ」


辛うじて笑みを作る飛影

その右手は握りすぎて出血していた


「…たの…みがある」


「なんだ?」


「お嬢…を…私の…かわりに…護っ…てくれ」


震えながら左手を飛影へと向ける

そんな力はもう既に残っていないにもかかわらずである


「…約束する」


すぐに飛影は握り締める


「…嫌…だな……私…もっと…生きた…かった……もっと…お嬢と…いたかった…」


咲の眼から涙が零れる


「…痛いの…身体が痛い…飛影……私を…殺して……」


全身から出血が始まる

身体が崩壊していく痛みに咲はもう耐え切れない


死ぬまではあと5分程

咲の願いに飛影の返答は決まっていた


「わかった…俺の取っておきで殺してやる」


咲を抱き寄せる飛影

服に血がこびりつくが気にしない


《炎舞・さようなら》

《風華・また会えたら会おう》


魔力を全解放すると同時に、風と共に無炎が周囲を包み空へと昇る

半径2キロが無炎に包まれ空高く成層圏まで辿り着く


周囲の迷惑は考えない

ただ咲のために使用する、咲のための魔法


「ありがとう」


最後の咲の声を飛影は確かに聞いた


僅か、10秒程度の放射

飛影が抱きとめていた咲の姿は無くなっていた


周囲に何も変化は無い

咲だけを焼き尽くしたのである


もう魔力を抑える必要は無くなった飛影は魔力をそのままに、杏の魔力を捕捉するために感覚を拡げる


=================================================================


同時刻


「…なんだありゃ」


車に乗っていたゴウライは眼を疑った

それにつられて、ドクターやメルティ、杏に運転手を含め全員がその方向を見上げた


「…闇?」


飛影の出した無炎が空に昇っていた

それは、魔法使い3人にとって想像つくが想像できない現象であった


唖然とするしかない

10秒ほど経つと、闇は一瞬で消え去った


「ドクター前方に!!!」


運転手の知らせにドクターは視界を向けると車の前方に飛影が立っていた


「っ!!?そのまま轢き殺せ!!あいつは何か危険だ!!」


指示に従い速度を上げる

およそ120キロ程で飛影へ車は衝突し、


《炎舞・消えろ》


消滅した


『っ!!?』


いきなり空中へと身が投げ出される

反応できたのは、ドクター、メルティ、ゴウライだけ


《硬化》


ゴウライの全身が土色に染まる

近くにいたドクター、メルティを掴み着地

運転手はビルに激突し、身体が拉げる


杏は飛影が優しく抱きとめていた


「ヒエー!!」


「助けにきた…だからちょっと待ってて欲しい」


くるりと回転し、杏を容赦なく投げ飛ばす


「ひぇ!!!?」


《風華・エアークッション》


5メートル程、投げ飛ばされ杏の身体に風が纏わり空中に制止する


「逃げられると思うなよ…」


構える三人に、飛影は一歩づつ近付く


《硬化》

《影縛り》

《術式開始》


ゴウライ、メルティ、ドクターが魔法を発動

メルティの放った弾丸が飛影の影を捉え、硬化したゴウライの拳と、咲を切り裂いたドクターの不可視のメスが飛影を襲う


《炎舞・陽炎》


「まず一人」


「がぁぁぁ!!」


ゴウライの拳に無炎がこびり付いた

小さな無炎であったが、決して消えることはなくゴウライの指先を焼き尽くして腕へと徐々に拡がっていく


「…ちゃんと縛ったはずなのに!」


「んなもん効かねえよ」


「っ!!?」


目の前にいた飛影はメルティの背後に移動

軽く指に触れ


《炎舞・陽炎》


無炎が纏わりついた


「あぁぁぁぁぁぁっ!!!」


「お前ら全員…苦しんで死ね」


《風華・微風》


ただ一人無事のドクターだったが

風が僅かに頬を切り裂く


《風華・浸食》


傷口に風が入り込んだ


「お前は咲のような目にあって死ね」


ドクターの腹が体内から切り裂かれた


「悲鳴は耳障りだ」


《炎舞・静寂》


ドクターが痛みで叫ぶ前に、喉が潰される

それは、叫んでいるメルティやゴウライも同じことであった


「ぁっ…ぃ…」


指先から始まり、腕、足、胸、耳、眼

あらゆる箇所が傷付けられ出血していく

3人とも、行動不能に陥ったことを確認して杏へと振り返る飛影


「怪我は無いか?」


「私は大丈夫…ヒエー、咲は?」


飛影なら何とかしてくれると根拠の無い自信があった杏

その飛影の傍に咲がいないのは、どこかに安静にさせているかと考えての発言である


「…手遅れだった…いや違うな…俺が間に合わなかった…だから殺した」


実際にあの傷を負った咲を救うのは不可能であった

だが、

もし飛影が影に縛られたときの魔力が多かったら

もし飛影がメルティの最初の魔法を回避することができたら

もし飛影が歩くのは面倒だからと、ダドマに《方舟》での移動を頼んでいたら

そんなもしもの話があれば、咲は今も無事であった


「…咲はヒエーに殺して…ってお願いしたのね…」


俯く杏

飛影の説明は、そんなもしもができなかった自分を責めさせる様に言葉足らずなものになっていたが、天才である杏はそれを全て汲み取って理解した

その表情は飛影から見ることができないが、涙が落ちていくことは見ることができた


「ごめんな…」


《風華・圧迫》


飛影の後ろでゴウライが、僅かに立ち上がろうとする気配を感じて魔法を発動

風を使ってゴウライを地面へと叩きつける


「ヒエーは悪くないわ…悪いのはこいつら…こいつらは私が殺すわ…」


再び顔を上げた杏の眼は赤く腫れていたが、その眼は強い光を宿していた

懐から携帯電話を取り出し、素早い動作でボタンを押下していく


「全破壊衛星光線…K011、威力が高すぎるから使う機会無かったけど…ヒエー、周りに被害が無いように防いでくれないかしら」


「わかった…いつでもいいぞ」


携帯の画面上に、

GPSを使用した正確な緯度・経度と

発射するわよ!あっはっはー!!というメッセージが表示されている


後は決定キーを押下するだけで終わりである


《風華》


威力が高すぎると具体的ではない説明に、飛影は周囲の風を掌握させることで準備が終える

飛影と杏の視界に移るのは、半死半生で喉が潰され呻き声すらあげれない3人の人間の姿が映っていた


「あんた達のせいで咲が死んだわ…返せとは言わない…だから私はあんた達に一つだけ言葉をあげるわ」


決定キーを押す


「死んで」


空が一瞬だけ光った


(やばっ!!!)


《風華・包み風》


何が来るのか理解した飛影は、ドクター、ゴウライ、メルティを包むように風の膜を作る

上空からの攻撃だけを伝わせるため、上には膜を張らずに開けっ放しにする


その瞬間

一柱の光が落ちた


全破壊衛星光線

K011は、杏が作成した中でも一番高火力の兵器


地球の周りを周回させて、杏の指示で24時間以内に地球上のどの地点でも爆撃可能な太陽光からエネルギーを取得している大出力レーザー砲である

最大出力で発射すれば、およそ半径50km程の領域であれば破壊可能

核シェルターに篭っていようが関係なしに、破壊することができる


防ぐ術など、現代の兵器では皆無である


K011(Ver0.50)を作成した時に、杏が呟いた一言

「やばっ…ちょっとやばいの作っちゃった…もうちょっと威力抑えておこ」


魔力が込められていない純粋な破壊の力


照射は一瞬


(…よし!!)


《風華・包んで終わり》


上だけ開けっ放しにしていた包みを閉じる

瞬間


破壊の衝撃が風の膜の中身を蹂躙する


「すっきりしたわ…行きましょヒエー」


後に残ったのは、何も無い

風の膜で覆っていたため、周囲に被害は無い

ただ、風の膜内にいた3人の姿が消滅しているだけであった


「あぁ…これからどうするんだ?」


「まずは~咲の墓を作らないとね…死体が無いなら思い出の品だけ埋めることになりそうだけど…それからは~、私のやる事は変わらないわ…私の知的好奇心を満たしてくれる何かを作るだけ!!目下としては魔法ね!!」


「じゃあ研究材料がいっぱいあるし、家に下宿するか?」


「そうするわ!」


「じゃあタクシーでも使って帰るか?」


「そうするわ!」


「いつまでも引きずるのは賛成できないが、今くらいは泣いたって良いんだぞ」


「…そうするわ」


飛影の胸元に顔をうずめる


「うっっ……っっ…咲ぃ…」


ずっと一緒に過ごしてきた者が居なくなる

自身の力不足のせいで亡くしてしまったカガリのことを思い出しながら杏が泣き止むまで飛影はずっと頭を撫でた


災厄終了まで、あと3章ってとこですかね。

次章は、氷の悪魔の話です


3日前から胃腸炎になりました。

食中毒らしいです…(今は治りました)

皆様の熱中症や食中毒にお気をつけて良い休暇を…


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