ギリギリの勝負
色々とアクシデントがありましたが、
なんとか投稿できました。
遅くなりまして、非常に申し訳ありません。
もはや放送事故レベルまで番組を壊してしまった飛影と杏であるが、展開としては面白いものになっており視聴率は予想よりも高いものになっていた
そのため、無事に終了して今、飛影達は帰路についていた
タクシーで帰宅することを提案した咲であるが、ゆっくり帰りたいという杏の意見を尊重して少し遠い駅まで徒歩で歩いていた
テレビが終わったため、飛影は既に話すことも顔を出すことはできるようになっており、それなりに景色が良い街の外観を眺めていた
「お嬢が歩くなんて珍しいですね、明日は嵐でしょうか?」
「ちょっ…!別に歩くなんて普通でしょ!」
清楚な笑みを浮かべる咲
杏の返答が面白いのである
「普段は、そんな非効率なことしないわよ!と仰っているじゃないですか」
「べっつにー、思考する時には歩いたりするわよ」
杏の基準では、ただ移動する目的で歩くのは非効率なこと
思考すること目的に、歩いて移動するのは大丈夫とよくわからない天才ながらの基準を持っていた
「今は何か考えているのですか?」
「魔法を使える機械について」
「へーそんな機械造れるのか!?」
今までは空気を読んで、会話に参加しなかった飛影だったが面白い単語に反応した
「うーん、まだイメージが掴めてないけど、造るわよ」
造れる造れないの話ではない
杏にとっては造るか造らないか、である
「楽しみにしとくよ」
普通であれば、ありえないと言って切って捨てる飛影だが、杏ならばそれも可能だと思えていた
笑みを返す
そんな日常の中、ふと飛影と咲の視界に男女のカップルが映る
通行人はちらほら見かけたが、身長は二メートルを越えているガタイの良い男と、スタイルが良くモデルの様なブロンドの髪色の女という美女と野獣のようなカップルは目立っていた
時間は日が落ちるまでは1時間といったところで、影は長くなっている
飛影は特に意識はしないが、2メートルの身長を羨ましそうに思いながら男女と擦れ違う
そして女が、カシャっと金属音と共に飛影の影を踏んだ瞬間である
(は!?)
すぐさま異変に気付いたのは飛影である
何しろ当事者である
(…なんだこりゃ!?…身体が動かない…)
脚どころか指先一つ、眼球すら動かせない
更には魔力すら動かせることができない
そんな飛影に気付かずに、杏と咲はそのまま進んでいた
(…魔法使いか…一瞬だけ魔力の気配があったんだけどな~反応できると思って油断した…というかこれって結構やばくないか)
擦れ違ったはずの男女のカップルが立ち止まり振り替える
飛影の魔力は一般人並に抑えられており、一般人と同等である
「まず一人…」
カップルの女、メルティが銃を懐から抜き飛影の後頭部へと照準をつける
その際に、漏れでた殺気に咲が反応する
咄嗟に杏を自らの背後に移動させて銃を抜きながら振り返り銃声が鳴る
メルティが発射した銃弾は見事に飛影の後頭部を直撃していた
しかし、その銃弾は飛影の後頭部に触れたまま空中で静止している
その結果に満足したメルティは、咲の射線上から逃れるため飛影を盾にする
もう一人の男、ゴウライは2メートルの長身であるため、飛影を盾にすることができないが何も問題がないように、ゆっくりと歩きながら先たちへと歩み進める
「さて、邪魔者は片付けたってところで、俺らの目的としてはレガシー博士の頭脳を我が国にもちかえ」
「死ね」
杏の名前が出てきた時点で、咲のすることは決まっていた
躊躇い無く銃弾をゴウライの額へと発射する
(…二人とも魔法使いか…これは深刻にまずい)
何もできない飛影は、ただ見ることと感じることしかできていない
咲の放った銃弾は一般人であれば、回避することもできずに頭半分を吹き飛ばされていたであろう
しかし、ゴウライは避けもせずにまともに直撃したが無傷であった
額には土色の何かが覆っていた
(…こいつらはアイツと同じ魔法使いというやつか…お嬢を護ることが最優先…幸いにもお嬢の命ではなく頭脳が欲しいということは、お嬢への身の危険はないことが証明された…ならばやることは一つ)
咲は高速思考で考えをまとめて、判断する
このまま殺し合いになれば危険
それは本能が警報を鳴らしていた
一切無駄の無い動作で懐からカプセルを取り出して、宙へ放り打ち抜く
そのカプセルは杏の開発した爆薬
万能安心超小型爆弾K003
カプセルを打ち抜いた瞬間
光と爆音と爆風と煙が発生した
硬いが目と耳までは防がれないという咲の予想は当たりで、メルティとゴウライは怯む
だが最も被害を浴びたのは
(目がぁぁぁぁぁ!!!耳がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!)
何もできない飛影であった
煙が充満するため、その隙にと咲は杏を抱えて小道へと逃走する
生放送の現場から半径5キロの道は全て頭に入れた咲は迷うことなく逃げるために走り続けた
煙が晴れて、メルティとゴウライの目と耳が正常になるまで5分経っていた
「あ~あ~逃がしちゃったねゴウライ」
「あれは予想外だったな…まだ耳が聞こえ辛い!!」
ターゲットを逃がしたにも関わらず、二人は特に慌てる様子も無かった
「まぁドクターがいるから大丈夫よ」
「とりあえず護衛は一人始末したろ?あと一人だけだっけか?」
まだ死んでいない飛影を指差して、咲を思い浮かべて指を一本立てる
「そうね…レガシー博士はあまり護衛を付けないみたいで常にさっきの女が護衛をやっているって聞いてるわ…だからこいつの存在はちょっと予定外だったんだけど」
「…ほんとにお前だけは敵に回したくないな」
「あら?私も貴方を敵に回そうなんて考えては無いけど」
(…しかし、これいつになったら解除されるんだ?相手の動きを完全に止めるなんて結構反則的な魔法だけど…制限とかも無さそうだし発動条件が少し難しいってところか?)
あれほどの騒ぎがあったというのにも関わらず、住民は一人も現れないどころか通行人すら通らない
2分ほどゴウライとメルティが会話をしていると、黒塗りの外国産の車が付近に止まる
「迎えが来たようね」
「よし、何も連絡が来ていないってことは全て順調ってとこだな」
先にゴウライが車に乗り込む
「貴方には何も恨みは無いのだけどね…これも仕事だから許してね…死ぬ時間くらいは知りたいでしょ?あと、2分って所かしら…痛みはないからそこは安心しておいて」
それだけ伝えて満足したメルティも車に乗り込み、飛影をおいて車を発進させた
(2分…ね…ということは10分程度拘束ってところか…魔力の総量くらいは調べたかったが無理なものはしょうがない…相手の魔力によって拘束時間が変化するってところかな?くそ…いつもの垂れ流しレベルだったら多分拘束されても2秒くらいだと思うんだけどな~…はぁ運が悪い…それよか拘束解除された瞬間、後頭部に当たってる銃弾が突き刺さるよな…今の魔力量じゃ防げないし…けっこう賭けだな)
溜息を吐きたいが、それすらもできない飛影は残り2分
拘束が解けるまでただ思考することしかできないでいた
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咲と杏
5分程逃げ回り、メルティとゴウライからはかなり距離を離したが別の問題が発生していた
咲と杏の目の前には、白髪に眼鏡を掛けていて30代前半の男ドクターが立っていた
その背後には、メルティとゴウライを載せた黒塗りの車の同種が3台止まっている
車からはいくつもの銃口が咲たちへと向けられている
(…先回りされた?…いや、単純に物量で探し当てたという感じが強いな…私の近くにお嬢がいる限りはあの弾が発射されることは無い…だが、私が死ぬ可能性も高い…逃走は不可能…援護も期待できない…ならば、目の前の敵を殺せば良いだけだ…)
絶体絶命の中、咲の思考は単純である
それに負ける気も更々無かった
飛影と咲が絶体絶命の大ピンチです