予定調和の試合
なんとか一ヶ月は経たないうちに更新できました。
最近流行のパズドラをやり始めてしまったせいです。
まことに申し訳ないです。
ランクは低いんですけどね…もしフレ登録いただける方がいらっしゃれば、感想か、メッセにペコっと張っていただければ送ります。
「おっ!!?始まったぞ!!!椿!準備はできてるか!?」
飛影の屋敷で、テレビを酒の魚に見ていたダドマ達
ようやくの飛影の出番に、一斉に画面に食らいつく面々
「準備はいつでもOKだよ!」
ダドマの呼び掛けに椿は持っているマイクを上に掲げることで応える
【まずは赤コーナー!!人類最強の男ぉ!!マイケルゥゥゥゥゥ!ステップゥゥゥゥゥゥウ!!!!】
画面では、巨体の黒人が両手を挙げて入場していた
鍛えられた肉体
素人目にも判り、2メートルを越える長身
「毎度思うんだけど、なんで名前のばすんだろうな?」
それを見たダドマの感想である
「…その場のテンションというところかの?」
返事をしたのはギルギアである
それ意外も、マイケルのことにはあまり興味が無いようで酒を飲みながら横目で見る程度
唯一、好きなのか彗が真剣な眼差しで見ていた
【続いてぇ!!青コーナー!!超天才少女の護衛!!……えーと、めいしょぉうぅふめぇぇぇぇえぃい!!!】
『は?』
聞こえたのは
めいしょおうふめえい
つまり
名称不明
それは、名前ではない
「実況解説の椿さん、予想できるものとしては?」
「はい、恐らく名前は出せないからそのままでいいやメンドイといった所です」
実況解説の席は中々に良いポジションである
さりげなく、リタが隣に座ったことには誰も気付かない
当然飛影が名前だけ変で終わるわけがない
颯爽と登場し、駆け足でリングに飛び込んだ飛影
『…』
一同は絶句するしかなかった
タンクトップに黒のジャージまでは普通である
【これは…まさか、ひょっとこでしょうか!?】
そう、ひょっとこである
どこで売っていたのか、お面ではなく頭をすっぽりと覆う仮面であった
「えーと、これなら完全に顔が見えないからな!!完璧すぎる!」
完全に理解できないが、飛影にとってはこれが最善であるらしい
「いや、あれはアウトだろ」
周りが爆笑しているなか、彗がポツリと呟いた
相手のマイケルは、何かしら英語で審判に叫んでいた
あれは防具だ!ルール違反だろう…と
当然の常識内のクレームであった
「なんだ!?いちゃもんつけやがって!!」
飛影の必死の身振り手振りの抗議も虚しく、杏の外しなさいという一言であっさりと外す
その下には念には念を入れて付けていた包帯をぐるぐる巻きして顔のどのパーツも見えないようになっている姿があった
「あいつ、こうゆうとこはちゃっかりしてんな」
で落ちで終了かと思ってしまったダドマ
またまだ面白いことが続くとにやけながら、酒を飲む
飛影はマイケルを指差す
グローブを着けているため、腕ごと向けているように見えるが飛影には関係ない
ハンドサインで何かを言っているようであった
「第3roundの15秒でお前を倒す」
勝利予告であった
テレビの中でも杏が通訳したため、場が騒然となる
「彗がこういうときは挑発しろと言ってたからな!これで問題ないはず!」
「いや…確かに挑発するもんだとは言ったがしろとは言ってないぞ!!」
飛影が質問してきた時に、参考になるかと録画していた映像を二人で見ていた
なんでこいつら挑発してんだ?と戦う前の煽りを見た飛影の質問であった
こういう時(番組でやる場合)は、受けがいいからするもんだ。と答えたのである
面と向かって挑発しろとは言っていない
格下だと思っている相手からの挑発にマイケルも苛つきを覚えた
それに対する返答は、1roundでKOしてやるとのことである
そして、火蓋が切って落とされた
マイケルは半身になり構えて、リズムに乗るようにステップを刻む
狭いリングでは更にマイケルの放つ圧迫感は増す
対する飛影は、構えもせずに片腕を挙げて手招きをした
「さってっと、まずは頑丈さだな!ダドマ達め、学習した成果を見せてやる!!」
まずは様子見、と構えていたマイケルだが飛影の挑発によりそんな気は消え去った
二メートルの巨体
歩幅も当然でかい
飛影まで二歩で接近すると、長身とバネを生かしたミドルキックを放つ
防ぐこともせずにまともに食らった飛影は数十センチ足が地面から離れてロープまで吹き飛ばされる
「えっと、まともに攻撃を食らったら一回倒れるべきって秋野が言ってたな…今のも攻撃にカウントして良いのか?」
右腕がロープに引っ掛かり、ギリギリダウンではない
立ち上がろうとする飛影
「…よし、今のはまともな攻撃とカウントしよう」
立ち上がろうとして右足が力なくその場に倒れたかのように偽装する
通常、その一撃を食らえば内臓の一つや二つが破裂してもおかしくない
「ダウンしたらカウント6ぐらいで立ち上がるものだって言われたな」
審判がカウントを取るなか寝転がり、カウントが6になった瞬間に勢いよく起き上がる飛影
だが、カウントは続く
理由は飛影がファイティングポーズを取らずに普段通り腕を下ろしているからである
「ちょっ!!構えて!!」
間一髪
カウントが9になりギリギリの瀬戸際で杏の叫びが飛影の負けを回避した
「え?構えないと解除されないのかよ、危ねぇ」
苦笑いしながらも椿は解説を続ける
的中率はさすがの100%である
「やっぱりあいつバカだろ」
「別の意味でハラハラしますね」
彗と秋野
何故か手に汗をかきながら、テレビに釘付けである
そこからは一方的な展開であった
飛影がとことん好きなだけ殴られ、マイケルの一撃は全てがクリーンヒットしているが最初の一撃以降はダウンすらせず、直立不動で立ったままである。
「完全に常人離れしてるけどいいのか!!?」
明らかに人間としての枠を超えているように見える
しかし、ダドマは首を縦に振る。
身体能力的には、現在の飛影は彗や秋野と同等以下、更に魔力は常人レベルである
普通の人間で可能な範疇である
ヒットの直前、打たれる箇所に魔力を集中して防いでいるのはご愛嬌といったところだ。
一方的な展開はゴングの音で中断する
判定で言えば圧倒的にマイケルの勝利である
打ち続けたマイケルは肩で息をしながら、わずかな休憩を体力回復につぎ込む
一方の飛影は、座りもせずにハンドサインで何かを杏と確認していた。
「次って、スピードであってるよな?…よしOK任せろや」
さすがの椿は、ハンドサインの内容はわからないが飛影の思考を読むことによって伝達可能である
続く第2ラウンド
第1ラウンドと同様に攻めてくるマイケルの攻撃を、全て回避に転じる
最小限の動きで回避していた飛影であったが、コーナーを背負っていて逃げ場はない
巨体で飛影の逃げ場所をなくし、渾身のミドルキックを放つ
「ちょっと…面白いことやろうかなっと!」
会場の誰もが、マイケルの放つミドルキックが直撃すると予想していた
だが、常識で計ることのできない絶対強者級はその予想を越える
放たれたミドルキックに乗り、反動を利用してマイケルの肩に着地
何が起きたかわからず、止まっているマイケルの肩より跳躍しすぐ背後に移動する
背中合わせ
会場が湧くが、マイケル自身はそうではない
マイケルの背後に存在する人物
ただの子供だと考えていた節もある。
しかし、第1roundであれだけの猛攻にもかかわらず、ダメージがない飛影に対して油断は何もない
飛影が受けから避けに転じたことにより、技術を生かしてコーナーに追い詰め、怒涛の攻めで押し切る手筈であったのであるが、まさかの1撃目で破綻する
頭の中では思考がまとまらないが、背後に感じるプレッシャーに対してマイケルは反射的に振り向きファイティングポーズを再開するが、そこには飛影はいない
再び背後にプレッシャーを感じる
「っ!!?」
そこでマイケルは理解した。
(…こいつ、遊んでやがる!!)
裏拳を放つがやはり、その軌道上には飛影はいない。
バックステップ、サイドステップ、ターンどんな動きをしても、変わらず飛影は背後に居続ける
「…審議だ審議!!!おい、あれ完全にアウトだろう!!!!!」
彗の申し立て
しかし、秋野と優希以外は別に普通だろうといった表情である
「ふむ、…おぬしが言っているのはあれが人間にはできないじゃろうと言うことであれば、それは間違いじゃよ」
接近戦の代表として、ギルギアが答える
「背中合わせじゃろ?見るとピッタリと背中を付けておる。つまり、相手の筋肉の動きがそのまま伝わるからの。先読みも可能じゃし、鏡合わせに動けばあの程度は誰でもできる」
同文というように、他の絶対強者級も頷く
(こいつら、判断基準がおかしい!!!!!!)
実質、彗や秋野もそれが可能なレベルまで強くなっているのであるが、意識的には一般人であるためそれには気づかない。
そうこうしているうちに、第2roundは終了していた
マイケルの疲労はピークである
だが、やはり飛影に疲労の色は見えない
そして第3roundが始まる
攻撃を行うため、飛影はようやくマイケルに敵意を飛ばした
「…っ」
それは、第1roundが始まる前から終わっている予定調和
一歩一歩とゆっくり飛影は足を踏みしめ前進、マイケルにできることは一歩一歩後退することだけであった。
ロープ際に追い詰められたマイケルは無我夢中で拳を放つが、飛影の腕が触れた途端に拳は軌道が変更されて、掠りもしない
「はい!これでおしまい」
飛影の拳がマイケルに突き刺さる
それだけで、人類最強の男マイケル・ステップの意識は無くなった
さて、これで予定調和な話は終了です。
やっとこさ本番といったところです。