テストとテレビ
ギリギリセーフ!!
…
アウトですね…はい
少し気合いを入れなおします。
学力テスト…懐かしいですねーそんな話が今回の物語です
飛影と杏が出会ってから数週間の時が経っていた
それまでの間に、
出会った翌日、飛影の粋な計らいにより彗と秋野は同じ部屋の同じベッドに寝かしつけられており、先に起きた秋野が
「ふぇへ!!?わっ!?きゃう!!?どどどど…」
とよくわからない言葉を発しながらゆっくりとベッドを降りてその場でクルリと身体を回転させて、彗を再確認する
「ちょちょちょ!!はへぇ!?」
何があったかは記憶に無い秋野だが、何をやったのかを知っている原因は心当たりがあったため
「飛影先輩ぃぃぃぃ!!!!!!」
ダッシュで部屋を飛び出して飛影の顔面にドロップキックを放ったり
出会ってから一週間後、暇だった飛影が授業中にリタと麻雀を開始して10回連続、リタ親初手天和で飛影は何もできずに負けまくり、
「ちくしょぉぉ!!こんなのインチキだぁぁぁ!!!」
神の強運を目の当たりにして窓から飛び降りたり
同じことをアンジェレネでやっても全く同じ結果になったため
「このチートどもがぁぁ!!!!」
飛影は家を壊す勢いで拳を握り、なんとか抑えたりと事件らしい事件は起きていなかった
そして学校においての恒例行事
中間テストが終わり、結果が貼り出される日にそれは起こった
中間テストの結果は職員室の壁に貼られる
学年の一位から最下位まで全て漏れなく発表されるため、頭が良いものにとっては特に気にせず、得点を見て競いあい
アンダー50に入っているものは地獄の補習があるため、一年の内に数回あるかないかの神に祈るという行為をする日である
当然ながら全校生徒の興味がそちらに向けられるわけで、秋野もその中の一人である
「あっきー何位だった!?」
秋野の友人が話し掛ける
彼女本人は、既に順位を確認しており240人中、82位と中の上程度であった
そのため、余裕の表情で秋野を見ると
神頼みしていた
両手をきつく握り締めて、眼を瞑り必死の表情で祈っていた
幸いにも秋野には祈るべく対象がいた
(リタ先輩!リタ先輩!!どうか!どうか私に慈悲をぉぉぉぉ!!!補習は嫌だぁぁぁ!!なんで一週間近く勉強しなきゃならないのよぉぉぉぉ!!誘惑に負けずに頑張ったよ!!そもそも飛影先輩に勉強を教えてやろうと言われた時点で断ればよかった!!いや…まぁ安倍川先輩と一緒に勉強できたから最高だったけど!!!料理は美味しいわ、お菓子は最高だわと集中力を持続させる気が全く感じられないあのクオリティ!!意味がわからない!!!これで駄目だったら先輩に文句言いに行こう!)
この間、僅か一秒
覚悟を決めた秋野は順位を確認する
まずは一位
当然ながら秋野ではない
下の順位へと視界を移動させ名前を確認
「あった!!」
順位は186位
追試をギリギリ免れた
「ぅっし!」
小さくガッツポーズをする秋野
「おっ結果が良かったのか?」
そんな秋野に話し掛けるのは彗であった
「ふゅえ!?あああ安倍川先輩!?」
(ああこれがあっきーの言ってた先輩か)
彗との距離は50センチ程度
超至近距離である
彗に恋する乙女の秋野としては動揺が隠しきれていなかった
秋野と親しい友人はその秋野の反応で全てを理解した
「い…いえいえ!ギリギリ追試を免れたレベルです!安倍川先輩は!?」
「俺は62位だな…悪くも良くも無い感じ」
上の下程度の順位だというのに彗のテンションは低い
「どうかしたんですか?せっかく良い順位じゃないですか」
彗は黙って、自分の学年の紙を指差す
「…あぁ」
全て納得した秋野
こんな結果で納得できるはずは無い
「リタ~ここに順位が載ってるらしいぞ」
「順位ですか…あまり興味はありませんね…」
そんなときに、全ての原因の二人が現れる
本来であれば、文字が小さいので近付いて見なければわからないものであるが、飛影とリタの絶対強者級の視力であれば問題はない
「おぉーリタ一位じゃないか!」
一番右の一番点数が高い者はリタであった
「当然です。飛影の補佐として完璧で無ければ意味がないですから」
リタは自己採点を行ったところ全教科満点だったので当然ながら一位である
一位を取ったことは既にわかっているので順位はあまり興味が無かった
「飛影は33位みたいですね」
「そうだなー…おっす!彗に秋野!何位だった?」
気配を感じたため、秋野と彗へと歩みを進める
(い…市原先輩ですと!!?)
飛影が教室にいるときは、とことん飛影のサボりに協力するリタ
そして、一度もまともに授業を受けたことの無い飛影
にも関わらず真面目に受けている生徒たちの大半よりも良い点数を叩き出している
「62位だよ…」
真面目に受けている彗も不真面目な飛影に負かされた一人である
「うっし!俺のかちー!」
彗は真面目な方であるため、今回のテスト勉強はきちんと一週間前からスケジュールを組んで取り掛かっていたのであるが、飛影は合計一分ほど教科書をパラパラと捲っただけである
「秋野は?」
(な…名前で呼ばれてる…なんて)
「う…186位です…」
下から数えた方が早い秋野としては言うことすら恥ずかしいレベルである
「おぉ!!」
しかし飛影の反応は違っていた
何故か喜んでいる
「補習免れたじゃないか!!これは秋野とリタに対しておめでとうパーティーを開こうか!!」
重度の騒ぎたい症候群である飛影にとってそれが騒げることであれば何でもパーティーである
「へ!?」
「ってなわけで彗、秋野今日集合で!よろしく!!」
「ちょっ!飛影待ってください」
言いたいことを言い終わると、飛影はどこかへと走り去りその後ろをリタが追いかける
「授業始まるし俺も行くかな」
もうすぐ予鈴である
周りも人が減ってきている
「あっはい!」
彗ともっと会話をと考えた秋野であるが、緊張によりそれ以上の言葉は出てこない
彗もいってしまい、秋野も教室に戻ろうと反転し
「あっきーちょっと待て!!」
友人にその肩を掴まれる
「どうしたの?」
「市原先輩との仲の説明を求む!!!」
飛影は馬鹿である
背も低いし、一般人に向けた態度は最悪
授業をまともに受けないため、クラスの中では最悪と言っていいレベルで嫌われている
しかし、それはクラスのみである
クラス以外では、学力が高く運動神経も良く、顔が整っており豪邸に住んでいるという優良物件である
さらに、飛影の一般人に向けた態度は最悪という事実にフィルターを通すと寡黙でクールに早変わりする
簡単に言えば、人気者なのである
憧れを抱いているものもいるとかいないとか
「先輩との仲?」
さすがに遅刻はしたくないので、友人も秋野から手を話して教室に戻りつつの会話である
「そう!!名前で呼ばれてたり、名前で呼んでたり!羨ましい!」
友人の質問に秋野は今さらであるが、戸惑う
友人かと聞かれれば何か違う
恋人かと聞かれれば完全否定
他人かと聞かれればそれは違う
なにやら良くわからない関係である
「…先輩と後輩の仲?」
秋野が出せた答えはそれであった
「いや疑問に疑問で返されても…」
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結局のところ、拉致という形で彗と秋野は逃げる間もなく、リタ一位、秋野補習免除おめでとうパーティーに参加した
ようは騒げれば何でも良いのである
そして
「ふっふっふー!!」
パーティーも終盤になった頃に、良い笑顔の杏とどこかくたびれた様子の咲が屋敷にやってきた
飛影と出会ってから、杏は毎日屋敷に顔を出して飛影に協力を依頼している
その成果か、魔力を溜めて弾のように発射する銃を作成中であり、あとは色を塗って終わりレベルまで仕上がっていた
「ヒエー!テレビ出演が決定したわ!!!ヒエーも護衛として出てちょうだい!」
満面の笑みで飛影の手をとり振り回す
その後ろで咲が飛影を睨み付けているが、当然の如く飛影の返答は決まっていた
「いいぞ!!」
杏以外は飛影の笑顔に嫌な予感しかしなかった
作者も経験ないのですが
テスト結果を貼り出すなんてもうしないらしいです
さて…テレビです
全国放送に飛影が登場しちゃいます