魔王と口悪女
なんとか1ヶ月以内に更新!
危ない危ない…申し訳ないです
「なんだこれ?」
学校が終わり、何をしようかと考えながら帰宅しようとした飛影
少しダドマと話すことがあり、リタや彗には先に帰ってて大丈夫だからと告げて珍しく一人での帰宅である
だが、校門から出る前までに飛影の足を止めるには充分な出来事が起きていた
そこには人混みができていた
校門を隠すように大量の生徒が山を作っていた
見知った者がいたため、飛影は気配を消しながら人混みへと向かう
「あーきーのー!」
肩を軽く叩く
「ひゃっ!!?」
気配を全く感じずに、肩を叩かれたことにより秋野の身体がビクリと震える
天使達との戦いのあと、魔力の操作を覚えた秋野は気配も敏感に感じ取ることが可能になったため、本来ならばこのような不意打ちも事前に回避することができていた
しかし、普段のただの女の子の友達ではなく魔王の飛影である
気配を感知することが不可能であった
そのため、秋野は肩を叩かれて驚き、セクハラだと思う前に反射的に後ろ蹴りを放っていた
「あっ先輩でしたか…驚かせないでくださいよ!」
放たれた蹴りが飛影の腹を捉えていた
「いきなり攻撃された俺の身に何か言うことはないのか!?」
「いや…どうせ効いてないですよね…あと気配消して近付く先輩が悪いです!」
秋野の蹴りは確かに飛影の腹に当たってはいるが、全て魔力によって防がれていた
「これ何かのイベントか?」
飛影は人混みを指差す
その人混みの中心を見ることは出来なかった
「私も今来たばかり何で何が何やら」
だが秋野も掃除当番で少し遅くなってしまって帰宅しようとしたらこのような状況になっていた
「騒がしいのと銃声は聞こえるんですけどねー」
秋野や飛影は身長が大きくないため、何が起きているのかはさっぱりわからない
だが、発砲音は聞こえてくる
テロリストかと最初は思った秋野だが生徒たちから歓声も聞こえるためよくわからないのである
「困ったな…しょうがない」
飛影は軽く溜め息を吐く
「《ちょっとそこどけ》」
言霊
簡単に説明すれば強力な脅しである
飛影が一言告げるだけで、人混みの中に人一人分通れる程度の道が開く
(相変わらず…)
常識はずれの飛影の行動に少しずつ馴れてきてしまった秋野がいた
飛影の後ろを歩いて最前列まで移動する
中心にいたのは、16歳ほどの年齢で短髪の黒髪、スーツを着ていて身長は160cm程で右目が黒色、左目が金色のオッドアイが特徴の少女がいた
右手には少女に不恰好なゴツい銃が握られており、少女の周りには気絶している男子生徒達が転がっていた
「…リタどゆこと?」
さすがの飛影もこの状況を一瞬で把握することはできないでいた
最初から見ているはずで隣にいるリタに問い掛ける
「そうですね…あの黒髪の少女と男子生徒が戦ってこの状況です…単独犯ではなく後ろの白衣の少女もその仲間かと思われます」
黒髪の少女の後ろには14歳ほどの年齢で腰までは届いていない金髪のカールした髪でダボダボの白衣を着ていて、身長は150cmと小柄な少女でブルーアイが特徴の少女がいた
「へー…強いのか?」
「そうですね…あの魔力で考えれば強すぎるといった所でしょう。魔力の操作はできてないですが、動きに無駄はありませんし、何よりよく考えています」
「なるほどね」
飛影がニヤリと笑みを作る
「どうやって戦うんだ?」
「普通に対峙して戦闘態勢になれば大丈夫です」
「なに?お前やるのか?」
リタの隣で話を聞いていた彗
「俺は後でやるから」
《風華・操風》
一陣の風が吹き、彗の身体が硬直する
「まて!なにする気だ!?」
彗の意思を無視して勝手に黒髪の少女に向かって歩き出す
「魔力はOK、魔法はNGな」
「俺よりお前をNGにしろよ!!!」
どれだけ足掻いても身体は言うことを聞かない
「次はお前か…冴えない面だな殺してやろうか」
銃を片手に黒髪の少女は彗を観察しながら、毒を吐き捨てる
「殺されてたまるか!ってかこれ解けねぇぇ!!」
力技で彗の身体を弾こうとするが、びくともしない
飛影がその様子を見てニヤニヤと笑っているのが、反対を向いている筈の彗にも察知できた
(こんにゃろ!!)
彗は魔力を全解放して無理矢理振りほどいた
その瞬間、耳障りなブザー音が鳴り響く
音の発信源は、白衣の少女の手にある小型の機械であった
「見つけた!!そいつ覚醒者よ!咲…気合い入れていきなさい!」
咲と呼ばれた黒髪でオッドアイの少女
「了解ですお嬢!」
銃を片手で回転させて遊ぶ
(覚醒者?)
聞きなれない単語に飛影の興味は増加する
「もうどうにでもなれだ!」
自棄になった彗はとりあえず現状を受け止めた
咲の右手の人差し指を凝視しながら態勢をやや前に傾ける
咲が発砲すると同時に右に跳躍
続く二発目も軽々と避けながら接近する
(ほんとに銃弾避けれるのかよ…)
銃を持った相手と戦ったことがない彗は漫画などでやっている指の動きを見てから回避するということを真似てみたのだが本当に避けれるとは思っていなかったのである
正面から接近するのは危険があるため、側面に移動し振り向こうとした瞬間に背後に回り込んで拳を開く
流石に女の子を拳で殴ることはできないため、掌打に変更して彗の顎をペイント弾が直撃する
(なっ!?)
右手ではなく左手
咲は背後に回り込まれた瞬間に二丁目の拳銃を腰から引き抜いて発砲したのである
「覚醒者といっても所詮はこの程度かゴミが」
(こいつ口悪!)
咲は整った顔で可愛い部類であるが、口から出るのは暴言であった
「ふむ…秋野…」
飛影は今のを見て、秋野に耳打ちを始める
僅か10秒ほど一方的に飛影が喋りかけ、終わった後の秋野の表情はなんともいえないような表情になっていた
「できると思えないんですけど…」
「できないなんて思ったら絶対にできんぞ!さて…と《みせもんじゃねえ、帰れ》」
このままヒートアップする予定であるが、その為にはまず邪魔な野次馬をどける必要がある
言霊を使用した瞬間、一斉に帰宅を始める生徒たち
残ったのは飛影達と、白衣の少女と咲
そして新たにダドマとギルギアが面白そうという理由で参戦した
「というわけで秋野頑張ってこい」
断っても拒否権が無いことは、既に彗によって理解した秋野は咲と対峙する
魔力を解放し魔法を構築
《集固》
「こいつも覚醒者…けど後ろの四人はそんなこと無さそうね…」
白衣の少女の手にある機械が再び反応する
その機械の反応で決めている少女は魔力を抑えている飛影とリタ、ダドマとギルギアを大したことがないと決めつけるが戦う者である咲としてはその判断はできなかった
「…おい貧乳」
「ひん!?…貴女には言われたくないんだけど」
秋野を貧乳呼ばわりした咲だが、咲自身もそこまで大層なものは持っていない
「後ろのやつらはなんなんだ?お前とさっきのは人間に見える…だがあいつらは何かオカシイ」
何かしらの知識や飛影達の行動を見ての発言ではなく勘である
「…さぁ?私にもよくわからないし」
「そうか…悪いがそろそろ真剣にやらせてもらう」
咲が2丁拳銃を抜くと同時に秋野は真上に跳躍し初弾を回避
(馬鹿が!)
咲は常識的な考えを持っている
空中では逃げ場がない、そのため秋野へ照準を合わせて発砲する
だが、秋野は反則級であり、魔法使いでもあり、足場にするだけなら魔法使用許可を貰っている
(今!!)
集固を使用して空中に足場を形成
銃弾を回避して一瞬で懐に潜り込む
「っ!?」
(今のはなんだ!?急に方向を変えた?)
「おっと!」
掌打を放とうとした秋野だが嫌な気配を感じて、咲の背後に回り込む
先程まで秋野がいた空間を銃弾が通りすぎる
(この人、よくわかんないけど咄嗟の動きが速すぎる…焦らず、じっくり…隙あらばで攻めよう)
秋野は態勢を低くして咲の側面に飛ぶ
しっかりと狙いをつけられて放たれるが、首を捻って回避しながら、砂を咲へと投げつける
「くっ!?」
目潰しを避けるため、眼を瞑る咲
発生した一瞬の隙を秋野は逃さずに蹴りを放つ
だが見えないはずにも関わらず、咲は正確に秋野へと照準を合わせて発砲
秋野の蹴りよりも先に眉間にペイント弾が直撃する
「へぶ!!」
態勢が崩れるが、秋野の蹴りは死んでいなかった
(やばっ!止められない!)
《風華・風玉》
間一髪の所で飛影の魔法が間に入り風が秋野の蹴りを受け止めて優しく押し返す
ついでに飛影の傍まで吹き飛ばす
「飛影先輩ありがとうございます!止めれなかったんで助かりました」
《炎舞・ペイント落とし》
「彗も秋野も無鉄砲すぎ…もう少し考えて戦えよ」
秋野の頭を軽く叩きながら、ペイントを焼失させる
「か…考えてましたよ!!?」
「意味が違う…まぁいいや…一度言ってみたかったし…」
ため息を深く吐いて飛影はニヤニヤと笑いながらゆっくりと、前に進む
「次はお前か?チ」
チビ…と言おうとした咲は言いきる前に口を閉じた
言いきったら死ぬ、そう思わせるほどの何かを飛影から感じ取ったのである
「ふっふっふ…彗と秋野を倒すとはなかなかやりおる!!だが、あいつらは四天王の中でも最弱!俺をあいつらと同じだと思うなよ!」
まるで勇者と戦う魔王のような雰囲気を纏いながら、咲を指差した
「餓鬼か…」
彗も秋野も無鉄砲なので咲に負けちゃいました
次話は盛大に負けフラグを立てた飛影が戦います