遠距離最強VS防御力最強
酷い更新速度…
本当に申し訳がないです
「さて…やるか」
「そうだな…いつでも来い」
砂漠世界、アンジェレネの作成した三つ目の世界である
互いに距離を取りながら、ダドマはだらりと両手を下げて、掌は相手に向けるという構えを取り
ガイアは片手をダドマに突き出すような構えを取る
無限の魔力
人間界の魔王であるダドマが遠距離最強である理由である
全魔力を込めた一撃を何発も放つことができるダドマ
相手が防御力最強であろうと、関係無い
「まずは挨拶だ!!」
《天変地異・無限一手》
ダドマは容赦も遠慮もなく、全魔力を込めて巨大な水の塊を放つ
ウォーターカッターと同じ高密度に圧縮して放つ一撃
全魔力を消費して構築しているためあまりにも巨大すぎる一撃
「いきなりクライマックスか!?」
《絶対防御・絶界》
ガイアの目の前に巨大な鏡が出現する
(こいつ…バカだな)
ダドマはガイアの反応に軽く溜め息を吐く
ダドマの一撃は全魔力を込めた一撃であるが、防いではならない
理由は無限の魔力である
防いでも魔力を消費すれば、それだけ残魔力に差が開くからである
水と鏡が激突
力任せの巨大の水の奔流を、鏡は割れることなく弾いていく
「…なるほど、防御力最強ってことは頷けるな…」
鏡と水が直撃した際に、ダドマは鏡の強度を理解した
ダドマの全魔力の一撃をその三分の二の魔力消費で防ぎきれるのである
挨拶代わりの一撃を防ぎきったガイアは笑みを溢そうとして、ダドマの魔力が全く減っていないことに気付いた
「どういうことだ!?」
(…幻覚?…相手の気配察知を誤魔化すとかか?…いや、そんな隙は見せていない…つまり何故かは知らんが魔力は回復していることだけが事実としてあることだ…魔力回復…相手に攻撃を受け止めさせることで魔力を回復?…いや対価として釣り合わない…もう一度観察したいところだが…そんな簡単そうにはいかないな…)
魔力を三分の二消費したガイア
つまりは、次の一撃は防ぎきれない
「じゃあ次行ってみるか」
《天変地異・無限二手》
再びダドマは全魔力を消費して魔法を放つ
「魔力が回復しやがった…!!?」
ダドマの種を明かそうと見に徹したガイアは現象の確認は行えた
全魔力で構築した後に魔力が回復
神から見てもそれはあり得ないことである
(…どこかに魔力をストックしている?…それか…そんなスキルを所持しているか…どっちにしろマズイ…な)
《絶対防御・吸魔防壁》
ガイアは残りの全魔力を込めて魔法を構築
「はっ!!…三分の二をさっきので使用したのに、無駄なことじゃねえか」
透き通るような鏡と、ダドマの水流が激突
当然ながら、先程より魔力が込められていない鏡は、僅かだけ拮抗し一瞬で砕け散る
「終わりか?」
「どうかな」
《絶対防御・吸魔防壁》
全魔力を使いきった筈のガイアは再び魔法を発動する
「おっ!!」
全魔力から換算して半分の魔力
その量をガイアは保持していた
ダドマの一撃が防ぎきられる
その時点でガイアの魔力は三分の二まで回復していた
「無駄だ」
「なるほどなるほど…魔力回復ってよりも吸引だな…相手の攻撃を防いで魔力を吸収か…確かにそれなら最強の防御力ってのも頷ける」
面白そうに頬を歪めるダドマ
ダドマの全魔力を込めた一撃を三分の二の魔力消費で防ぎきる防御力に加え
相手の攻撃の魔力を吸収して自分のものにできる還元率
硬く
相手の魔力を奪う
防御力最強の名に相応しい魔法である
「防御力はわかったから、攻撃はできねぇのか?」
ニヤニヤと笑みを止めないダドマ
真正面からダドマと勝負できるものは少ない
無限の魔力を持つダドマ相手にマトモな戦いをするのは少ないのである
そんなダドマだが、今真正面から撃ち合える敵がいるのだ
嬉しくもあり、余裕もあり、そして油断していた
「攻撃か…あるぞ」
ガイアはそれを感じ取り同じような笑みを作る
突き出していた左手を右手に変える
「そいつは最高だ!!」
《天変地異・無限三手&無限四手》
《絶対防御・狂反晶》
ダドマは両手を使用して全魔力を込めた一撃を二発放つ
対するガイアは右腕に纏うように粒子上の鏡を構築する
単純な物量で二倍
ダドマの一撃を止めるのに三分の二は掛かるため、同時に止めるのであれば魔力のキャパシティを越える
《方舟》
ガイアの反応を見るために、ダドマは方舟を発動
自身の放った一撃をガイアの背後へと移動
ダドマの全魔力が込められた一撃が前後から同時に襲い掛かる
「何か勘違いしているようだが…俺は接近戦タイプの絶対強者級だ」
ガイアは横に跳躍して、ダドマの一撃を回避しながら接近
《絶対防御・吸魔防壁》
左手に粒子状態の鏡を纏う
「おもしれぇ!!」
ダドマは遠距離最強であり、接近戦タイプの絶対強者級ではない
《天変地異・双爪》
近接での全魔力を消費した一撃や無限の魔力、そして方舟という移動魔法を所持している
ダドマは両手に全魔力を消費して構築した水の爪を生やし、ガイアを迎え撃つ
力任せのダドマの一撃をガイアは左手の粒子上の鏡を使っていなす
魔力は吸収して、両手の鏡を強化
(ちっ…!!?…はええな)
一瞬で距離を詰めたガイア
右手の鏡が刃に変形しそのまま斬りかかる
態勢が崩れているダドマ
新たに魔法を構築する時間は残っていない
「もらった!!」
防ぐことも回避することも困難な状況
勝利を確信したガイアは声を荒らげて笑う
「っ…」
魔法を新たに構築する時間は無いダドマは、双爪の水を変換
圧縮率はそのままに、人間大の水の塊を射出
まともに食らえば身体を吹き飛ばすことが可能で防ごうとすれば、方舟を使用する隙を作れる
どっちに転んでもダドマにとって充分な結果が得られる
「ちっ…」
ガイアは防ぐことを選択した
咄嗟の判断で斬りかかろうとしていた右手を引っ込めて、水の塊を切り裂いた
「がっ…!!?」
次の瞬間にはダドマの右半身が吹き飛ばされていた
「あ…?」
「悪いな、隠していたわけではないが、左手の吸魔、右手の反射が俺の闘いのスタイルだ」
ニヤリと勝利の笑みを溢すガイア
ガイアの右手の鏡は反射の鏡
ダドマの最初の一撃の魔力を使って強化した鏡はダドマの全魔力を込めた一撃すら反射させた
切り裂いたのではなく反射させたダドマ自身の攻撃が右半身を吹き飛ばした
その場に崩れ落ちて失った身体を巡るはずの血液が血のように周囲に降り注いだ
「これが向こう側の序列三位か…となると、こちら側の圧勝になるな…サシで一位を倒すことはハルカでも難しい…というよりも、これと同レベが牙と矛を殺すのは不可能であるし…何より悲惨なのが魔界の魔王だったか…神の力相手に力勝負か…アイツは俺より強いってのに」
「…あぁ?どういう…こった」
俯せのまま、力の無い声でダドマが呟いた
「まだ生きてたか…しぶといな…そうだな…神の序列は実際にはユイチが三位だ…俺の吸魔や反射を使ってもアイツの攻撃は防ぎきれない…ただ五位くらいが丁度良いとか言って、序列五位になっているだけだ…お前より弱いやつが俺より強いやつに勝てるはずが無いだろ?」
それは当たり前のことである
今この状況こそが、それを証明する証拠でもある
「…なる…ほどな…あーしんどい…」
死に体であるにも関わらず、ダドマはどこか余裕がある
「…苦しませるつもりはなかったが、生命力が溢れているな…せめてもの手向けに今殺してやる」
《絶対防御・狂反晶》
ガイアは右手に鏡の刃を纏わせて、一人の敵として敬意を評して全力で振り払った
空気圧を反射させて衝撃を纏めた一撃は大地を抉りとった
《方舟》
衝撃が届く寸前にダドマは魔法を発動
「まだ足掻……」
潔く殺されると思っていたガイア
多少のイラつきを感じながら魔力の移動先を睨み、動作を停止した
「この姿になるのは、数千万年振りだな…」
巨大な龍
美しさを感じるほどのエメラルドグリーンの鱗を纏った
右半身が欠けている龍がいた
「…なるほどな…無限の魔力にその姿…ようやく合致したぞ…最古の絶対強者…神龍か…」
「…?…あぁ俺のこと知ってんのか?」
巨大な龍の姿に戻ったダドマは痛覚が鈍くなっているのか、声色に死に体を感じさせない
「少なくとも、神王の部下の我々で知らないものはいないな…」
一歩下がるガイア
「あっそ」
大きな顎で欠伸をするダドマ
発せられる威圧感は先程の比ではない
ここからが本番であると、ガイアは悟る
「…まぁ、死ねよ」
《天変地異・無限五手》
ダドマは全魔力を込めて、口から水流を放つ
「っ!!?」
《絶対防御・吸魔防壁》
大きさ、密度が強化された一撃はガイアが全魔力を込めて、防がせるには充分である
気軽に放たれた全魔力を込めた水流が、鏡と激突
「このぉぉぉぉ!!」
三分の二の魔力で防ぎきった一撃
しかし、全魔力を消費しても拮抗している
だが、拮抗でガイアは充分である
水流の魔力を吸収して、鏡を強化しながら相手の威力を減少させていく
たった二秒の激突
長い時間のように感じながらも魔法の一撃を防ぎきったガイア
安堵する余裕などは皆無である
相手の出方を伺う前に一瞬で距離を詰める
《方舟》
ガイアは距離を詰めようとしたが、ダドマとの距離が離れる
(便利だな…)
軽く舌打ちをしながら、再び距離を詰めに行く
「はい、俺の勝ちだな…まぁ三倍ってとこだな」
《天変地異・終演》
口から水流を放つダドマ
「ちょっと待て…!!?」
一瞬で異変に気付いたガイアは両手を前に突きだし即座に魔法を展開する
《絶対防御・狂吸鏡境
巨大な鏡を構築
全魔力を込めた防御
反射と吸魔を併せ持ったガイア最強の盾
「俺…この姿なら魔力を重ねられるんだよ」
龍がニヤリと笑う
このダドマが放った一撃は、今までの一撃の五倍の魔力が込められている
「カーテンコールだ」
質より量
ダドマはただ高圧縮した水を全力で放っているだけであり、質という点ではガイアが勝る
しかし、それは互いに同程度の時だけである
いくら質で勝っても五倍以上の魔力量が込められた一撃は、防ぐことも叶わない
「負けるかぁぁ!!」
一瞬
例えるなら炉端の石ころを蹴飛ばした
そんな感覚である
ダドマの一撃は、ガイア最強の防御を軽々と貫いて圧し殺した
「うーん…三倍にするつもりだったんだが…この姿だといまいち加減がわからねぇな」
思ったよりも、魔力を重ねてしまったダドマ
「さて…怪我どうすっかな…」
右半身が消し飛んでいるような状態のダドマ
龍の姿ならまだ活動はできるが、人型になると致命的である
しょうがない、と溜め息を一つ溢す
ダドマはかなり永すぎる年月を生きている
盗賊だった飛影と比較すると、量や質も劣るがマジックアイテムを複数所持している
《方舟》
秘密の部屋より、方舟で回復薬を移動
躊躇いなく瓶ごと口に含んで噛み砕く
人型に戻りながら、世界を出る扉を潜るときには傷は完治していた
余談だが、ダドマよりもラインの方が早く終わっていた
そのことで調子にのったラインが馬鹿にしたような笑みでダドマを出迎えて殴られたのであった
ダドマVSガイア
ダドマの辛勝
皆のダドマさん
危うく死ぬところでした
油断しているから…