犠牲
さてバトルです。
朝のニュースをお伝えします。
今朝方、○○市にていきなり意識を失い衰弱するという事件が多発しています。
原因は調査中とのことです。
○○市に感染症の疑いがあるため、外出を控えるようにしてください
なお、現在のところの犠牲者は1059人です。
「あら…○○市ってここじゃない!?外出を控えるようにって…彗ちゃん?」
「彗なら学校に行ったな」
「大変…呼び戻さないと?…まぁいいか」
「そうだな…アイツなら大丈夫だ」
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「…なんだこりゃ!?」
次の日のことである
昨日の下校時に秋野にかけられた願いの天使に願われた呪い
秋野が死ぬように願われた残りの三つを消化し終わり、完全に解放された
彗も秋野も身体は少し疲れていたが眠気を我慢して、日頃の習慣によって学校へと登校した時のことである
彗が学校の門に着くと、何故か立ち止まっている飛影と秋野に挨拶しようとして横目にあるものを見た時の一声だ
「おう、おはよう!!」
彗に気づいた飛影は笑みを浮かべながら挨拶をかわす
「…おう…なんだこれ?」
「桜の木ですね…」
校庭の中心にそびえ立つのは昨日までは生えてもいなかった巨大な桜の木が生えていた
大きさは高さ30メートル程
満開に咲き誇る桜は見るものに威圧感すら与える
「なんでこんな季節に?」
桜の季節からは三ヶ月程遅い
しかも、昨日まではなかったものである
「魔法…ですかね…」
少し前までは、不思議という言葉で括り、珍しいで終わらせていたが今の彗と秋野にはある確信が持てる言葉を知っていた
「…だよな…」
二人は意見が合ったことを互いに確認して、答え合わせのために飛影を見る
「正解!あれは願いの天使が願いの対価として得ていた魔力がこもった木だな。一定量を越えたから咲いたんだろう。その代償として願いの天使に願った人間が今意識不明の重体だそうだ…この学校の生徒の大半はぶっ倒れてるだろうよ」
二人が望む以上の答えが即答で返される
「は!!?」
「もしかしてニュースでやってた」
ニュースを見てから、家を出た秋野と見ないで家を出た彗の反応の違い
「ニュース見てたんならなんで外出してんだ?」
外出を控えるようにと呼び掛けがかかっていたにも関わらず登校する秋野
その理由は簡単で、学校から連絡がないので休みだと思わず、皆勤賞を狙っていることが原因である
東東高校の皆勤賞は豪華なことに、旅行券(国内どこでも)である
そのため、東東高校は異様に出席率が高い
「狙いは、内包している魔力を取得することか?」
「その通りだ」
『!!?』
飛影の問い掛けに答えるのは新たな登場人物
桜の木の傍に、天使がいた
どこにでもいる優男のような印象を与える姿でその背中には白い翼が生えていた
いつの間に現れたか、彗と秋野には知覚できなかった
「願いの天使だな…」
飛影は願いの天使を睨み付けると、腰に刺していた刀を抜く
「銃刀法違反ってわかるか!!?」
「知らん…それよりも、彗と秋野突っ込め…アイツを木から離せ…あの木に願った者から対価として得た魔力が格納されてる。説明したかもだが、魔力は生きるのに必要なものだ。あの木の魔力を狙いの天使に吸収されれば…今倒れてる奴ら全員死ぬぜ」
飛影は笑いながら
そのまま斬りかかるわけではなく、刀を地面に突き刺す
《風華・暴弓》
飛影はその場で態勢を低くして、風の弓矢を創造
限界ギリギリまで弦を引き、矢の威力を上げるために風を溜める
「あの魔力を取らせたら危険だから…いいから突っ込め!!」
状況を理解できない彗と秋野に急かすように声を荒げる
「なんだこの打ちきり間近の漫画な展開はぁ!!」
「バトルものよりも恋愛ものの方が良いです」
二人は昨日よりもスムーズに魔力を纏い、身体能力を向上させる
熊やらライオンに比べれば、天使は弱そうに見えてしまう
少なくとも二人は余裕を持ちながら接敵する
「子供二人に魔法使いが一人か…数は丁度良い」
天使が魔力を解放
一瞬で彗と秋野の背後を取る
(はや…い!!?)
ギリギリ眼で追いきれる程度だが身体が反応しきれない
二人は勘だけを頼りに横に跳躍
蹴りの風圧が二人に届く
「外したか…まぁ数は同じにできたようだ」
意味深な言葉
そもそも三体一の状況
数を同じにするには、秋野と彗を倒す
もしくは
「まさか!?」
嫌な考えが浮かんだ彗は、目の前にいる天使を無視して振り返る
「…っ!!」
一人増えて、飛影を倒しても数は同じになる
その考えは的中していた
もう一人の天使が飛影の背後にいた
そして飛影の胸には剣が突き刺さっていた
「…クソ…!!…巻き添えだ」
苦痛に顔を歪ませながら、飛影は笑みを浮かべ
桜の木を壊すために溜めていた風の矢の圧縮を解除する
「飛影!!」
「先輩!!」
「…!!?」
圧縮を重ねた風は解放され、大爆発を起こした
風速120メートルの暴風が周囲に爆発し、小規模な範囲を粉々に粉砕した
荒れ狂う風は彗や秋野
天使に叩きつけられる
「無駄な足掻きだったな…」
飛影を突き刺した天使が傍らのもう一人の天使の傍に着地する
掠り傷を負っている程度であった
飛影がいた場所には小規模なクレーターができており、飛影の身体を確認することさえ叶わない
いや、確認することはできた
臓物や骨が細かく粉砕されて周囲に撒き散らされている
「…嘘だろ…」
人が死ぬ
目の前で起きた、挨拶をかわすかのように自然に一つの命が摘み取られた
そんな非日常に、彗の思考が追い付かない
「安倍川先輩!!」
秋野の声で我に返った彗
眼前には剣を構えていた天使が振りかぶっていた
「!!?」
咄嗟に身体を屈めて回避する彗
二撃目が襲い掛かる瞬間
空から飛影の風によって高く舞い上げられた刀が傍らに突き刺さる
考えることすらせず、彗は刀を抜くと同時に切り結ぶ
「願いの天使の一人…ウリエルだ」
つばぜり合いも一瞬で彗はすぐに吹き飛ばされる
「ぐっ」
ガタイは彗とあまり変わらないが圧倒的に力で負けていた
魔力による身体能力の強化
魔力差によるものである
吹き飛ばされつつも、態勢を整えてすぐに横に跳ぶ
ウリエルの追撃をかわしつつ一閃
「安倍川彗だ!!アイツを殺したからって敵討ちとかする気はねぇがムカつくんだよ!!」
彗の一撃を軽々と防ぐ
秋野は彗を援護するためにウリエルへと接近
「お前の相手は俺だよ」
空から声と風切り音
秋野が音のした方を向くと空に浮かんでいるもう一人の願いの天使
そして光の矢が秋野へと放たれていた
「っ!!」
ウリエルへと向かっていたが進路を変更
全力で後方に跳ぶ
「中々の上物だ…俺らが絶対強者級になるための礎となれ」
《カナン・ドライブ》
願いの天使の手が光に包まれる
瞬間
光の散弾が秋野を狙い打つ
細かな光の粒の一つ一つが地面に突き刺さる
まともに食らっては身体中が穴だらけになる
咄嗟に魔力を全解放して意識を回避に専念する
「俺はガブリエルだ!!」
「佐藤秋野…飛影先輩を貴方は殺したし、なんか顔が気にくわないからその顔面を絶対に殴る!!」
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「おっ…始まったの…」
「酒の摘まみには最適だな」
東東高校の屋上
彗達の戦いを見ながらギルギアとダドマは酒を呑んでいた
少し力を貸せば一秒で終了だが、あくまでも手は出さず見物である
「これ貰うぜ」
そんな二人の傍に飛影が着地して、ワインを一本拝借して呑み始める
絶対強者級の二人にとっては何が起きたかは見ていたため驚くことはない
ただ心臓を刺されて風を解放
どさくさに紛れて動物の骨や血肉をぶちまけてダドマとギルギアの方に高速で移動しただけである
「この勝負は中々不利だな…」
ダドマがそう感じるのも無理はない
魔力差や、魔法使いとそうでない者の差、空を飛ぶものと飛べないものの差がある
彗と秋野には勝ち目が無いといっても過言ではない
「大丈夫だ…良いものが観れるぜ」
不敵に笑う飛影
(…固有能力かの)
まるで何が起こるのかをわかっているかのような飛影
ギルギアは一つ頷き一気に酒を煽った
飛影の性格の悪さは随一です
残りはバトル
しかし…最近書くのが難しくなってきましたね…