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災厄の生き様  作者: 火憐ちゃん
人間界編
68/122

水と秋の特訓


ってことで特訓な話です



いきなりのカミングアウト

魔法使いだと飛影が自己紹介する


当然ながら彗も秋野も魔法使いという単語の意味は理解している

テレビゲームを少しでもかじったことがあれば、十分である


「へぇ~」


もちろん、そんなことを信じる彗ではない

可哀想な子を見るような目で軽く拍手をする


「うわ!!?信じてないのかよぉ!!」


「当然だろ」


魔界と違い人間界には魔法という空想は広まっているが現実は限られたものにしか広まっていない

普通の学生として過ごしていた彗はどうしても信じることができない


「論より証拠」


例え片手で車を受け止めたといえ魔法のような突拍子も無いものを信じることはできない

百聞は一見にしかずというものである


「秋野は!!?」


彗は完全に否定しているが、秋野はずっと黙っていた

何かを考えているようで、ずっと顎に手をあてている


「へ?…あぁはい、魔法って使えたら素敵ですね」


飛影の声に反応しててきとうに解答する秋野


「…」


秋野は話を聞いていなかった

正確には聞けてなかったが正しい

この屋敷に入って嫌な感覚をいきなり感じたのである


どす黒い何か

負の感情

それが自分の身体にまとわりついているような感覚


「まさか…?」


飛影はポツリと呟く

この屋敷から感じるのは暖かさ


だが、嫌な感覚は強くなっていく


「秋野!!」


飛影が秋野の腕を掴む


「へ?…なんですか!?」


「いいか!!?何も感じるな!!考えるな!!優希菓子!!」


慌てた様子の飛影はキッチンにいる優希を急かすように声をあげる


「どうしたんだ?」


「ちょっとな」


飛影は僅かな魔力を秋野を掴む手に込める

秋野を襲っていた嫌な感覚が熱が引くように消えていく


「お待たせです~」


優希が微笑みながら紅茶とケーキを運んでくる


『おぉ…』


お店で売っているものよりも遥かに旨そうな出来に二人は感嘆の声を洩らす

優希がテーブルに飛影と彗と秋野の分を置いた


「それで、論より証拠だろ?上等だコラ!!」


《風華・パックンチョ》


ニヤリと笑いながら指を鳴らす

彗の分のケーキが風に包まれて浮遊する


「おぉ…」


糸も何も仕掛けはない

そしてケーキという柔らかなものが形を崩さずに飛影の目の前に浮かぶ


彗が触ろうと手を伸ばすが、見えない壁によって触ることができない


「それが魔法…ですか?」


「そうそう…俺の魔法は風を操ることだ、まぁ弱い魔法だがな…ぶっちゃけ俺落ちこぼれだもん」


「ぶはっ!!」


飛影の嘘にギャグ漫画を読んでいた黒鋼が吹き出す

周りからすればギャグ漫画で笑っているように見える


そのため、飛影の嘘に気付きはしなかった


「風…ってことはお前体育の授業とか、体育祭とかはもしかして」


「風使っていろいろと!!」


「軽く尊敬してた俺を殴りてぇ!!」


ニヤリと笑う飛影

当然ながら魔法は使用していない


何故飛影が嘘をついているか、理由は簡単である


「まぁいいや!!とりあえず本題!秋野、お前命狙われてる」


「えっと…さっきも聞いたんですけど冗談ですか?」


命が狙われている

一介の女子高生にそんなことを言っても、所詮知っているのは映画などのフィクションの世界のことである


「ちなみに、真犯人はわからないが殺そうとしてるのは願いの天使だ」


「願いの天使ってあの噂のやつか?」


「天使が命を狙うんですかね」


「そうだ、秋野はあと八回は命の危険に合うぞ」


「多くないですか!!?」


一回や二回ならまだ頑張れる気がした秋野だがさすがに無理である


「そこでだ、俺はお前らを鍛えようと思うんだがどうかね?まぁ俺自身の実力は大したことないが二人が自分の身を守れるくらいには強くできる」


『ぶはっ!!』


話を盗み聞きしていた黒鋼と椿が同時に吹いて腹を抑えていた

もう片方の手はしっかりとギャグ漫画を握っていて、それで吹き出したかのように見えた


「…ん~私はお願いしようかと…二回も死にそうになりましたから先輩の言うことには説得力がありますし」


植木鉢が落下しただけでは偶然だと割りきれたが、二回目の車の突撃での不思議な現象を体験しては信じるしかなかった


「ちなみに俺が狙われては」


「ないな」


そんな秋野とは関係無く、ただ本当に飛影のノリで連行された彗

飛影の即答に少し頭を悩ませる


「ちなみに俺が手伝うのと手伝わないでなにか変わるか?」


「秋野が死ぬか生きるか。ちなみに彗にも危険はいっぱい」


冗談とは思えない声色

彗は会ったばかりのあまり面識が無い少女である秋野を視界に入れる


あまり会話は無くても、出会ってしまった少女が死ぬ危険があるにも関わらず、放置することは彗にはできない


一つ溜め息を吐く


「付き合うよ」


さすがに目覚めが悪くなってしまう

そして魔法にも興味があった


「サンキュー」

「あ…ありがとうございましゅ」


飛影は笑みを崩さず

秋野は、顔を真っ赤にしながら舌を噛んで

彗に礼をする


飛影が嘘をついて弱いど言っていた訳はこれが狙いであった


飛影の絶対強者級の実力があれば、今回の願いの天使の件は一瞬で片付く

しかし、今回の飛影は目的が違う

彗と秋野が面白そうだからこちら側に引き込む


それが飛影の狙いだ


「さて…」


お茶を飲み干す飛影


「とりあえず二日もあれば、魔法は無理でも魔力操作くらいはできるようになるか」


命を狙われているが魔法という未知のものに心は惹かれており、どのようなことが行われるかを想像して軽くテンションが上がる秋野


「とりあえず秋野はこっちな」


「はい」


二人一緒ではなく別々

彗を待機させておき、秋野を連れて移動する


着いたのは飛影の部屋の前


「秋野は、この部屋で寝ろ。それで充分だ」


「はい?…魔法の修行とかじゃないんですか?」


漫画に出てくるようなものを想像していたがまさかの睡眠学習である


「これも修行!!」


飛影は扉を開けて秋野を入らせて、扉を閉め


《風華・なんだっけ?アルカトラズ?》


風の結界を貼る

何かのテレビで見た脱出不可能な監獄を思い出した飛影

実際は、それよりも遥かに脱出不可能である


「ふんふ~ん」


鼻唄を歌いご機嫌な飛影


(これで秋野はなんとかなるな~)


秋野を飛影の部屋に閉じ込めた理由


佐藤秋野という少女

その魂は影響されやすいものであった


影響というと語弊があるが、影響が正しい


魔力が高いものは周囲に影響を与える

飛影が幼少の頃に攻略していた遺跡の罠なども同じである

高い魔力を持つ宝からの影響を受けて変質している


本来であれば、100年単位になるものであるが、佐藤秋野は特別影響を受けやすいのである


東東高校にはダドマ、ギルギア、飛影と三人の絶対強者級がいる

普段魔力を抑えている三人だが、それでも周囲に影響を与えてしまう


秋野も入学前はただの少女であったが、影響を受けて魂が変質し体育祭の時のようにヒトを超えた


飛影の屋敷に入ってからも影響を受け続けており、初めは感じていなかった願いの天使による呪い

他の者からの願いで死ぬことを望まれた秋野への呪いを感じ取るほどまで変質している


変質では語弊があり、正しくは進化、成長といった類いである

そのため、飛影は日頃使用して魔力が染み付いている部屋へと入れたのである


また、屋敷の範囲内であれば更に成長は速まる


「さて…待たせたな~」


「それで俺は何されるんだ?」


中庭で待たされていた彗

彗の場合はちょっと待っててと言われただけで何をするかは聞いていない


「簡単、簡単!…俺と純粋に戦えばいい!!まずはレッスン1…魔力を使おう!!」


「は!!?いやいきなり言われてもどうやんだよ!!」


飛影は彗の言葉を聞かず、手に持っていたナイフを彗に放る


「殺す気でこいよ、俺も殺す気でやるから」


飛影は笑いながらポケットから同じ形のナイフを取り出した


「ちょ!!?マジで言ってんのか!!?」


「マジだよ!!」


飛影はナイフを構えて彗に接近する


「大丈夫大丈夫!!身体能力的には彗と変わらないから!!」


これは本当のことである

飛影は極限まで力を抑えているため、もしかすると彗よりも弱い可能性がある


「ほんとにマジかよ!?」


彗は落ちたナイフを拾い構える

ナイフを使ったことはないが、何となくで構えているだけである


飛影はそのまま切りつける

その動きに容赦は無い


「っ」


頸動脈に向けて放たれた一撃を受け止めようとして彗は宙を舞った


「ナイフは避けろ!!防ぐ利点が無い!!」


防ごうとした彗の手を掴み投げた飛影はそのまま倒れている彗に振り下ろす


「これで一回死亡」


眉間に刺さる直前で止まる


「どこが俺と変わらねえだ!!全然強いじゃねえか!!」


「いんや、変わらんよ!!ただ使い方を知ってるだけだ!!彗が弱いだけ~」


彗からナイフを取り上げて、自身のナイフもポケットに収納する


「次は素手だな」


彗を起こして再び構える

ニヤリと笑う余裕綽々な飛影


「やってやろうじゃねえか!!」


どちらかと言えば負けず嫌いな彗

更に飛影の態度で一気にムキになった


「来いや!!」


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


その頃秋野は


「暇だなぁ~あ~けどベッドがふかふかで暖かい~温い~」


ベッドでゴロゴロと転がっていた


(けど、魔法に魔力か~面白そうだな~)


初めての現実味を帯びた魔法という言葉


(どんな魔法なんだろな~)


想像に夢を膨らませて


「はぁ~」


深い溜め息を吐いた


(安倍川先輩、忘れてるっぽい…)


再び溜め息を吐いた秋野はふて寝した


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


そして彗は


「おっ魔力操作できてきたか!?」


開始して一時間

彗の動きは見違えるようであった


今も彗の拳が飛影の頬を掠めた


秋野程ではないが彗も充分に影響を受けやすい

飛影が仕掛ける本気の攻撃の殺意や敵意、そして攻撃として放たれる魔力によって彗の魂の扉を抉じ開けたのである


「と思ったらまたしょぼくなった!!」


「意識的にできるか!!」


まだまだ、扱うには時間が必要なようであった



暑くなってきたので涼しくなる話


部屋で寝ようとしたところ、何か動く気配を感じ取りました

一瞬眼が疲れているのかと思いましたが

視界の隅に何かが動いたことを捉えました


自分がいる場所はベッド

布団にくるまり、寝る準備万端でしたが背筋が凍るかのように嫌な感覚が脳に警報を鳴らしました


疲れて眠くなった身体に鞭を打ち、起き上がって電気をつけた瞬間


一匹の黒の流星がそこにはいました

自分がさっきまで顔を置いていた枕との距離は15センチ程


「…っ!!!!??」


流星は4センチほどでここらでは見たことが無いほどの巨体

二本の触角が揺れて自分が側にあったジャンプを掴みとり、投げようとした瞬間でありました

もう枕も布団もジャンプも買い替えよう

その覚悟で放とうとした結果


流星は壁を駆けました


「!!!!!!???」


慌ててジャンプを投げつけますが、流星は容易く回避

いや、流星の放つ気配に怖じ気づいて震えながら放ったからでしょうか


ジャンプは流星に当たることは無く、逆に攻撃をしたことによって奴は興奮し始めて縦横無尽に駆けていました


そしてそれが何を意味するか

時間は午前三時


一人と一匹の睡眠時間と命をかけた殺し合いが始まった瞬間でした


勝負は朝日が昇るまで続き、

午前五時


流星によって根気と睡眠時間を奪われ、いつ襲ってくるかわからない緊張感に負け眠りで敗北によって幕を閉じました



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