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災厄の生き様  作者: 火憐ちゃん
人間界編
67/122

魔法使い


更新が遅くなりました

今回はようやく、本編の序章な話です


体育祭から三日後である

飛影は彗と下校中であった


「お前って何か運動やってたのか?」


帰宅途中での彗の問い

コンビニで買ったアイスを食べながら飛影は首を傾げる


「いや、体育祭でもそうだし、日頃の体育でもお前ずば抜けてるから気になっただけだ」


彗も運動神経は良い方だが、飛影はずば抜けている

いくら平凡が自慢の東東高校であれど、経験者やエースよりも遥かに高い実力がある


毎日のように絶賛勧誘されているが、飛影はすべて無視で帰宅部のエースとして活動している


「ん~彗にならそろそろ言ってもいいかな」


ぶっちゃけて言えば隠すのが面倒になった飛影

アイスのスプーンを口で上下に振る


「何が?」


「今日は家に遊びこいよ」


ニヤリと笑う飛影


「別に構わないが」


あっさりと承諾する彗

飛影はその答えに満足したように、空になった容器を投げる


「ポイ捨ては」


ポイ捨て反対の、環境を大事にする彗は飛影を咎めようとして、空の容器の行く末を見て口を閉ざす


綺麗に放物線を描きながら風に流されることも無く、ゴミ箱に捨てられた


「…はぁ」


勿体ない

それが彗の溜め息の理由であった


確実に出るとこに行けば、世界一も夢じゃないと彗は思ってしまう

既に魔王であり、世界一である飛影のことを知らないからである


「ん?」


飛影は目の前を歩いている人物に気付く

それは飛影が体育祭の時に面白いと思った少女の秋野である


(あらまぁ…ついでに誘うかな~面白そうだし)


「あ…ん?」


「どうした?」


秋野の名を呼ぼうとした飛影は寸前で止める


(…どういうことだ?)


秋野の後ろ姿を凝視する飛影

その眼は魔力を見るためのものであった


飛影が不思議がる理由

秋野の身体を覆う魔力が所々黒く染まっていた


それは願いの天使に願ったものの特徴

秋野がそれをするような人物であれば、飛影の感性は反応しない


そして、それ以上に一つの願いで一ヶ所の黒が染まるのに対し秋野の魔力は実に十ヶ所の黒があった


まるで願いではなく、呪いのように


(……そういうことか…)


「なに見てんだ?って体育祭の時の子か」


黙り続ける飛影の視界の先を見る彗

その後ろ姿には覚えがあった


「…まずいな」


飛影はぼそりと呟く

そのまま彗の背中に腕を回し、前方に向けて押す


「うぉ!!」


彗は三メートル程、強制的に進まされ


「きゃ!!?」


更にその勢いで秋野を巻き込んで倒れる

その瞬間秋野がいた場所に植木鉢が落下して破片が散らばる


(…今のが無かったら、この子に当たってたな)


呼び掛けても逆に、止まることで当たってしまう


「あ…ありがとうございます…」


秋野もそれに気付いたようで、最初は不審者かと思ったが、起き上がって礼を言う


「あ…いや」


確かに彗が助けたように見えるが、飛影が押さなければ気付きもしなかった

悪ふざけとも言えないタイミング


「おぉ~人助けとはやるな~彗」


しかし、飛影は知らぬ存ぜぬで笑いながら二人に近付く


「彗?…安倍川先輩!!?…と体育祭の時の先輩!?」


彗の顔をよく見ていなかった秋野

飛影が彗の名を呼んで、秋野は彗の顔を見て真っ赤に染まった


「?…なんで俺の名前を知ってるんだ?」


飛影が覚えられているのであれば、理由として簡単であるが、彗は自身が単品で覚えられていることはあり得ないと思っている


それを聞いて秋野は見るからにわかりやすく肩を落とした


「伏せてろ」


そんな秋野や彗に構わず、飛影は頭を掴み無理矢理伏せさせる


「いたっ!?」

「なんだ…よ?」


彗の視界には高速で迫る自動車

彗達の壁になるように飛影が立っている


逃げる時間は無い

飛影に伏せさせられなければ気が付かなかっただろう


(あの車…運転手がいない…!!?)


エンジンすらついていない車という鉄の塊が、およそ100キロ程度で迫っていたのである

車体は僅かに浮いておりタイヤは地についていない


「ふん…」


ただの車ではなく、魔力の通った車

飛影が人間界についたばかりの時に破壊したものよりも硬く速い


片手だけ出す


「なにやってるんですか!!?」


秋野がようやく気付くが既に眼前まで迫っている


飛影の出した右腕に車が襲いかかる

質量の差、速度による勢い


魔力が通っているとか関係無く、彗や秋野の脳裏に飛影の身体が粉々に砕ける姿が容易に想像できた


『っ!!?』


衝突音と共に、二人は眼を瞑る


「…これで残り八つ」


「は!!?」

「え!!?」


飛影の声が聞こえた彗と秋野は思わず眼を開ける

片手だけ


まるで受け止めるかのように優しく開いた手のひら

そしてその手のひらの先にはひしゃげた車があった


飛影達の周囲には大勢の通行人

眼を見開いてその現場を見ていた


「やべ…ダドマにどやされる…」


魔界と違い超常現象が一般的ではない人間界

大事になると面倒なことになる


「あ~あ~」


飛影は喉を軽く抑え発生練習のように声を出す


「《今見たことは忘れろ…ついでに気絶しとけ》」


言葉を放った瞬間

彗と秋野を除いた他の通行人達がその場に倒れる


『はい?』


更に戸惑う二人


言霊などではない

飛影がやったことは簡単である


殺気を放ちながら言葉にしただけ

本能的に恐怖を与えて、意思を無視して脳に直接飛影が言葉にしたことを実行させる


飛影に殺されるという恐怖以上のことで脳が思い出そうとする、または気絶するのを拒否できるのであれば効くことは無い


精々反則級の中位までしか通じない

つまりは、かなり強力な脅しである


(これでいいだろ)


一つ満足げに頷いた飛影は彗と秋野の手を掴む


「さっそくだが、秋野、命狙われてるっぽいから連行!彗はその場のノリ的に連行だ!!」


返事も聞かずに走り出す飛影


「へ…?命って!?え!!?」


慌てている秋野や


「その場のノリ的ってなんだおい!!?」


意味がわからないで文句を言い続ける彗を強制的に引っ張り屋敷を目指す


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


「ただいま!!」


無事に屋敷に到着した飛影達

飛影の屋敷は一般的に見るとかなり豪華なものであり、意味がわからない+屋敷の雰囲気に気圧されている彗と秋野


「おかえり」


そんな三人を出迎えたのは黒鋼であった

ギャグ漫画を無表情に読んでいた黒鋼は、飛影に腕を掴まれている二人を一瞥し会釈する

それは無表情ながらも二人に対して同情するかのような会釈であり、二人には伝わった


「飛影さん!!おかえりなさぁい~御客様とは珍しいですね~」


キッチンからひょっこりと顔を出して、笑顔で再び戻る優希

キッチンからは甘い匂いが漂っていて、何かおやつを作成しているようであった


「そこ座って」


飛影は掴んでいた腕を離して、ソファを指差して二人を促すとキッチンへと向かう


茫然とする二人だが、立ちっぱなしでは不味い気がしてソファに向かい合うように座る


「…」

「…」


向かい合った二人だが会話は無い

そもそも秋野は顔を赤くしながら彗の顔を一切見ようとしない


「飛影さん何やってるんですか!!?」


「彗と秋野に茶を」


「そんなに私の仕事をとって楽しいですかぁ!?も~!!いいから私に任せてくださいぃぃ!!」


キッチンから聞こえる飛影と優希のやり取りをBGMにただ座っていた


「あれ?お客さん?」


二階から降りてきたのは椿である

一度顔合わせした彗と初めて見る秋野を見る


「初めましての女の子と久しぶりの彗君か」


場の空気を一瞬で理解した椿はニコニコと笑いながら秋野の隣に座る


「え~と椿さんだったか?」


「椿でいいよ、歳は近いし」


「えっと佐藤秋野です。お邪魔してます」


椿と初対面の秋野は口を開いて頭を下げる


「秋野ちゃんね…よろしく!!まぁどうせ飛影の馬鹿が無理矢理連れてきてキッチンに行って優希ちゃんに怒られているって状況だと思うし、ここは自宅と思って寛いでて構わないよ~」


飛影の行動はそこそこわかる椿は見事予想した

だが、その代償に少し常識が狂っている椿

一介の学生に屋敷で寛げは無理である


「すまんな、待たせた」


キッチンを追い出された飛影

彗の隣に座る


「あっ…」


飛影に軽口の一つでも叩こうと考えていた椿だが、飛影の表情を見てそんな雰囲気ではないことを、察知した


(これは…関わっちゃダメなやつだ!!)


飛影の真剣な表情

しかし、椿には解ってしまった

奥底に眠る笑み


その笑みは飛影が面白いことを考えている時の笑みである


「黒鋼君~なに読んでるの~?」


即座に立ち上がり黒鋼の近くへと移動する


「さて…本題かな…とりあえず、自己紹介だな。俺は飛影、魔法使いだ」


『はい?』


彗と秋野は軽く引いた笑みを作りながら聞き返した



あとはもう一直線です!!

願いの天使編の終了まであと四話ぐらいですかね。


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