体育祭 午後の部
体育祭終了です。
次話はハチャメチャの方で一話更新します。
午前の部が終了し、昼休み中のことである
「最後の種目の全学年リレーで順番を変えて欲しいんだけど!」
ご飯を食べ終えて、寛ぎモードに突入した頃を見計らい飛影は理事長であるダドマに交渉していた
放送席で教員用に配布される弁当をギルギアと、食べていたダドマ
「なんで?」
いきなりのことに、疑問しか沸かなかった
「面白そうなのがいる!!」
「へぇ…まぁ理解した、やっとく」
ダドマは弁当の残りを食べ終えて、さっそく準備に取り掛かる
やることが無くなり暇になった飛影はあとをダドマに任せて、退散する
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午後の部が開始される
飛影がやることは変わらない
自分が出る競技の時に、グラウンドに出て一位を取り椿達がいる場所まで戻る
出場している競技の全て一位を取っている飛影はある意味で注目の的になっているが本人としては気にしていない
そして、次に飛影が出場するのは騎馬戦であった
「頑張ろうぜ彗」
これは飛影が出ている種目の中で唯一の集団競技である
メンバーは上に乗る飛影と前に彗
右と左には同じクラスの生徒がいる
頭の帽子を取られるか、もしくは上にいるものが地面に着いたら終わりである
飛影は他の二人には眼もくれず、彗に笑いかけながら騎馬に乗る
騎馬は自軍の持ち場にて待機する
この騎馬戦は学年だけの枠に収まらず、全クラスでのバトルになる
勿論、点数は高い
「彗、集中しろよ…視界を広く持て、腰を落とせ重心を安定させろ」
上に乗った飛影が彗の頭を叩く
「わかってるよ」
去年もこの騎馬戦に参加した彗に油断は無い
この競技はかなりの大規模なものとなり、怪我は当然のようにするし、騎馬の上での殴り合いや騎馬のぶつかり合いも当然である
しかも、ルールによって決められている終了の合図が残りの一人になるまでである
20分以上は掛かる種目だ
『おおおぉぉぉぉ!!』
開始の合図と共に気合の掛け声が響き、地鳴りを起こしながら騎馬たちが進軍する
「それで?飛影作戦とかはあんのか?」
飛影達の騎馬も同じように前進する
「密集してる箇所に行け、んで騎馬を崩すな」
何しろ数が多いため、減るまでは密集してぶつかり合う
減ったあとは遊撃手や逃走するものや変わらず真正面から突っ込むものと分かれるが最初は作戦も何もない
「さて、はて、さてはて!!ようは、戦争だろこれは」
密集地域に到着
さっそく飛影の帽子を取ろうと背後から接近されていた
(こんだけ重心が高くてぶれるならば…居座るのは危険だな)
飛影は土台の確認をする
「戦争は量より、質だぜ!!…彗!なるべく近くにいてくれ」
飛影は騎馬から後ろに跳躍
背後から接近してきた騎馬の上に乗っているものを蹴り飛ばして落とす
蹴り飛ばした騎馬に着地して再び跳躍
違う騎馬へと攻めこむ
「すっげ…」
その様子を見て、主を失った騎馬である彗が思わず言葉をこぼした
飛影は一度も帽子を取ろうとしておらず、いかに騎馬から落とすかしか考えていなかった
飛影からなるべく近くにと言われたが、飛影が速すぎてあまり近付くことができていない
「30!!」
30個目の騎馬を崩した飛影は自分の騎馬へと戻る
着地の衝撃で騎馬がぶれるが、なんとか崩れずに耐える
「はい!!次行こう次!!」
次の密集地域へと進む
最終的な結果として見事飛影達の騎馬の勝利である
そして最後の種目の全学年リレー
全参加種目一位の飛影が第一走者として位置につき、ざわめきが増す
クラス外の生徒や保護者から見れば凄まじい成績を残している人物である
そして、もう一人
陸上部のエースに大差をつけて勝利した井上秋野がいた
この全学年リレーの特徴として第一走者は400メートル走りきるルールになっている
そのため、第一走者に一番脚が速いもの、もしくは中距離が得意なものを置く
飛影と順序が入れ換えられた選手は中距離が得意な者であった
「よっす!!」
スタート位置で飛影は隣にいる秋野に挨拶する
急に先輩に話しかけられて一瞬、驚いたように身体が震える秋野
「…こんにちわ」
いきなり話しかけられて戸惑いながら、挨拶を返して軽く会釈する
「…うん、面白そうだ」
飛影は上から下まで秋野を観察する
黒髪でサラサラした髪が肩下まで伸びている可愛いよりも美しいの形容詞が似合う
身長は155cm 程であるが
身体も無駄な贅肉はないが引き締まってもいない普通の少女である
ただの少女である筈なのに飛影の琴線に響いている
「何がですか?」
少し警戒心を強める秋野
普通の反応である
「いや、気にすんな、それよりも始まるぞ」
「え!?」
瞬時に秋野は教師に眼を移すと、腕を上げてスタートの三秒前を表していた
スターティングポーズを取り、深呼吸
そして開始される
スタートから飛び抜けたのは飛影と、秋野の二人である
(へぇ~バネがいいな、反射神経も申し分無し)
走りながら秋野を評価していく飛影
飛影よりも少し遅いといったところである
少しずつ差がついていっている
(あ~勿体無い!!)
「上体の力を抜け、入れすぎ!!」
「はい?」
当初はどんなものか、秋野に対してコミュニケーションを取ることが目標であった飛影だが気付けば口を開いていた
走る速度を秋野と同じにして差がこれ以上つかないようにする
「…だから上体に無駄な力を入れてるから遅い」
「はい!?」
「走り方もわからないのか!?」
リレー中
余裕そうな表情で秋野と並走して、アドバイスを行う飛影
秋野としては訳がわからないことである
「それと脚はもっと一歩一歩大きく踏みしめろ、400メートルも2メートルも変わらない、あと上体に無駄な力」
一通りアドバイスを与えて気は済んだのか飛影は再び加速
少しずつ差を開かせる
残り150メートル
(…えっと、上体の力を抜いて?脚をもっと踏みしめる!!)
よくわからないながら、試してみようと思い立った秋野
飛影から言われたことを心の中で思い返し、実行した
ただ上体に無駄な力を入れずに大地を踏みしめる際の力を強くした
それだけのことで
それだけの変化で開いていた差が止まる
「おっいいね!!」
飛影は秋野が接近してきた気配に気付いて首だけ振り返る
「それじゃあ最後に…乙女には必須なものだ!!」
「はい!!?」
「乙女に必要なのは!!気合と!!?」
残り50メートル
「根性とおしとやかさです!!」
飛影と秋野は並走し第一走者とは思えないデッドヒートを見せていた
飛影は規制限界の秒速11メートルで爆走中である
それをただの少女である秋野が並走している
そして、逆に飛影に差をつけ始めていた
(やべっこれ負ける!?ちょっとなら…)
規制限界を僅かに越えようと飛影が魔力を僅かに解放しようとした
《グラビティ》
「やべぶ!!?」
瞬間的に100倍の重力が飛影の頭上に降り注いだ
ギルギアの魔法の気配には気付いていたが避けきることができずその場で地面と激突する
『え!!?』
観客全員がまさかの展開に驚きの声を上げる
(いや、これはヤバイでしょ)
その中の三人はこれから起こる展開に青ざめていた
「ぶち殺す!!」
飛影はすぐに起き上がると、バトンを投げ捨てる
その間に秋野は次の走者にバトンを渡していた
「ちょっ…大丈夫ですか!!?」
額から血が吹き出ている飛影の身を案じる心優しい少女の秋野
「あはは!!平気平気!!あははははは」
笑う飛影
決して走らずに歩きはじめた
その先には当然、ギルギアがいた
校舎の屋上である
どこにいようがいまいが飛影には関係ない
校舎の縁を足場に、忍者のように屋上まで移動する
「良いとこ邪魔しやがって…殺す」
「規制を破った貴様が悪いじゃろうが…まぁ殺す」
にらみ合いながら殺気を解放していく
《方舟》
「はい、行ってらっしゃいってか行け!!」
殺し合い開始三秒前の飛影とギルギアを暴れられる場所まで移動させた
結果は見事、飛影達のクラスが優勝した
紅白もとれたが、学年では最後のリレーで勝利した一年に優勝されてしまい二冠であった
クラスの打ち上げには、MVPである飛影はいなかった
その時間、飛影は全身の骨が骨折しており、自宅のソファでギルギア殺すと呪詛のように呟いていたという
おまけ>>>>>>>>>>>>>>>>>>
「しかし、あやつの面白そうなのがいるというのが魔法使いになるものじゃったら、恐ろしいものじゃな」
「なぜだ?」
ギルギアから飛影の話が出たことに驚くダドマ
あっても、殺したいとか殺す等のまともなことではない
「ふむ、我に観察眼というものか第六感というものが乏しいからもあると思うのじゃが、魔法使いでないただの人間が魔法を使えるかどうかを一目で見極めておる…それは恐ろしいことじゃろ?」
観察
それは戦いにおいて重要なファクターの一つである
相手がどう動くか、どんなことを隠しているか
事前に知れば知れるほど戦いは有利に進める
既に億単位で生きているダドマやギルギアでも飛影のように魔法使いの可能性を見極めることはできていない
「そういう解釈か…」
ダドマはギルギアの言葉に一つ頷く
「俺の考えだが…種族としての能力だと考えている」
「種族?」
「例えるなら…俺の無限にギルギアの鎧のようなものだな」
種族としての固有能力
自身も持っているため、ダドマが何を言っているのかはわかる
だが、何が言いたいのか理解できていないギルギアにダドマは続ける
「飛影は面白いで一括りにしてるがな…あいつは災厄だろ?あいつは簡単だ、戦いが全て、殺し合いが全て、血を見るのが大好き、そんな災厄として生まれてきた、そしてあいつは戦闘凶になっている。まぁ外見はあんなんだがな…あいつの能力は自分を殺せるものの発見だ…本人は無自覚だが、自分を殺せる程の実力を持つ、または自分よりも高い能力を持つ者をあいつは面白いと無自覚に感じ取っている…どうすれば強くなるのか、自分を殺せるやつの成長をあいつは一番理解している。だからあいつは観察眼じゃない、ただ自身を殺せるやつを選別してるだけだ」
憶測に過ぎないが、ダドマには自信があった
それは根拠もないが、この生まれてから今までの経験で判断していた
「ふむ…つまり奴はただの自殺願望者か」
どこか納得したようなギルギアであった
「なら…いくらでも殴りたい放題じゃ」
ニヤリと妖艶な笑みを作った
この体育祭では秋野と飛影が出会うまでの話です。
次からは本格的に天使に関わります。