願いの天使
人間界編がようやく本腰入れれます
ちょっと毎日投稿できたと思いましたら、休日挟んで遅れました。
申し訳ありません。
飛影が人間界に居座ってから早一ヶ月
順調に飛影はクラスで強固な壁を作っていた
最初は、文字も書けない読めないでいた飛影だが、たったの一ヶ月で大抵の読み書きを習得して、全体的に授業についていくどころか既に追い越していた
「いや~疲れたな~彗」
つい最近にしてようやく、行き過ぎない程度の力の解放具合を理解した飛影
自身の机に頭を置いてだらけていた
「体力底無しの馬鹿が何言ってやがる!!?」
この一ヶ月、飛影に付きまとわれた彗は飛影に対する印象が変化していた
今の印象は、物凄く人見知りな体力馬鹿である
だが最初と違い、嫌だとは思っておらず普通の友人として飛影と接していた
「彗は俺のことをなんだと思ってやがる!?」
「体力馬鹿」
「ひでぇ!!」
学力では勝てなくなった彗だが飛影が体力馬鹿であることは否定できるものではない
サッカー
野球
バスケ
ドッチボールと様々な球技を行ってきたが、飛影が汗を掻いていたり息切れを起こしているところを見たことが無い彗
「あ~暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だぁぁぁぁぁ!!」
「うるせぇよ!!昼休みくらい黙って飯食えよ!!」
いきなり騒ぎ出す飛影にも慣れた彗は突っ込みを入れながら弁当を取り出す
飛影はいつものように弁当を取り出して彗の机で食そうと考えて
「あっ…」
あることに気付いた
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「うるせぇぇぇぇ!!」
再び騒ぎ出した飛影
「弁当を忘れた!」
「へぇ…やらんぞ」
いつも目の前で美味しそうな弁当を独り占めしている飛影にざまあみろと彗はニヤニヤと笑う
「やっちゃったな…」
「噂の優希さんとやらが悲しんでそうだな」
飛影の従者という話を聞いた彗
40代程のおばさんがせっせと作った弁当(彗のイメージ)が家に残されている
飛影の年代的に反抗期とも見られて、ショックを受けるだろうなぁ、と彗が優希に同情していた
「いや、朝大量につまみ食いしてたから悲しんではないな」
「ん?どういうことだ?」
「最近は弁当俺が作ってるから…確か優希が寝坊したときに朝食と弁当用意してた時に、優希が慌てながら弁当をつまみ食いしてから弁当係が交代した」
朝食私が作ります!!でも弁当はつまみ食いさせてください!と言った優希
それから毎日のようにつまみ食いしていた
「料理できんのかよ!?」
体力馬鹿としか認識が無かった彗にとってその情報は意外性しかなかった
「一応はな…ん?」
「なんか騒がしいな」
彗と飛影が気付いたときにはざわざわと廊下が騒がしくなっていた
「あ…優希か」
「飛影さぁん!!通い妻がただいま参上です!!」
私服にエプロンをかけていて、手には弁当箱、反対の手は飛影に敬礼していた
「どうした優希~?」
「きゃ~飛影さぁん!!」
ようやく飛影を発見した優希は興奮気味に飛影に抱き付く
「えぇ!!?」
彗の想像では優希は40代のおばさん
しかし、目の前にいるのは同じ歳ぐらいの少女であった
「おっと!!飛影さんの御友人ですか!?初めまして!!泣く子も黙る私とは私のことだぁ!!」
飛影から離れて自己紹介をする優希
「意味がわからねえよ!!」
特になにも考えていない優希の自己紹介は解読不可能であった
「おぉ…良い突っ込みですね!!これならば私が教えることはない!!免許皆伝です!!」
「初対面なのに何を教えた!?」
(な…なんで初対面でこんなにツッコミをしなきゃならない!?)
一瞬で疲労が溜まった彗
「そういえば結局は何のようだ?」
話を本筋に戻す飛影
「お弁当を飛影さんが忘れていたのでお届けにきました!!」
持っていたお弁当を飛影に渡す優希
「おぉ!!サンキュ!!助かったよ!!」
優希の性格上で判断して
恐らく中身はグチャグチャだろうなぁ、と思いながらも持ってきた優希に感謝して開ける
「…オイ優希」
「はい?なんでしょぶ!!?」
優希の頭を掴む飛影
弁当の中身はグチャグチャでは無かった
綺麗に半分だけ無くなっていた。
全てのご飯やオカズが二分の一になっているが、中身はグチャグチャではない
「弁当が二分の一になってるけど、理由はあるか?」
「美味しそうなんで食べました!!」
飛影の放つ威圧感もなんのそのと、真っ直ぐな眼で満面な笑みで即答する
「正直でよろしい…はぁ」
さすがの飛影も溜め息を吐く
席から立ち上がり、優希を椅子に座らせる
「弁当が食いたいなら食って良いぞ」
飛影は優希の笑みに負けてしまった
「本当ですか!!?」
「本当だ」
もうなんでもいいやと諦めた飛影
災厄として生まれている飛影は食事を取らなくても生きていける
嗜好品の一種のようなものである
「…でもそれだと、飛影さんのご飯は?」
箸を持って食べようとしたところで優希の手が止まる
「んなもんは気にすんな、腹減ってんだろ?」
飯代として自由に使えるお金は用意していたつもりである飛影だが、方法が悪くて不自由にしてしまったのだろう、と反省して新たな方法を考えながらも、笑顔で優希に食べさせようとする
「いえ、ぶっちゃけお腹一杯なんですけど…飛影さんの弁当見てたら食べたくなりまして」
「よし、今すぐ弁当を持って帰れぇ!!」
せっかく考えていた案は無駄になっていた
優希の頭を軽く叩く
「えぇ!!?せめて弁当を置いて帰らせてください!!飛影さんのご飯が無いじゃないですか!?」
「いらん、持って帰れ」
「この箸で私お弁当食べたんですよ!?ほらほら、この可愛い優希ちゃんと間接キスですよ!?」
「それに何の価値がある?」
「グッハァ!!」
飛影に一蹴されその場に倒れ込む
「乙女として…終わった…終わりました」
間接キスに何の価値も無いと断言された優希の精神的ダメージは大きい
楽観的な優希ですら、かなりのショックで立ち上がれない
「大丈夫大丈夫!そこまで乙女じゃないから!!」
(鬼だこいつ!!)
更に追い討ち
飛影としては気を使っての一言であった
その純粋な好意が更に優希にダメージを与える
あまりの酷さに脳内で彗がツッコミを入れていた
「…ひ…飛影さんの馬鹿ぁ!!」
うわぁぁん、と泣き叫びながらやけ食いとして飛影の弁当を残さず食べきる
「悪い悪い!!」
さすがに泣くとは思っていなかった飛影は優希の頭を撫でで落ち着かせようとする
「お弁当が美味しかったんで許します!!次は無いですよ!!飛影さん肩こりました!!」
お腹一杯になり、満足した優希はすぐに笑顔へと戻る
そして、ついでとばかりに飛影へとおねだりをした
(従者と雇い主じゃないのか!?)
彗の脳内でのツッコミも虚しく飛影が溜め息を吐きながら、優希の肩を揉み始める
何の抵抗もなかった
(まぁ…そんなことはどうでもいい)
それよりも、彗にとってこの二人のコントのような絡みが発生している中、優希が見ている前で食事をするという居づらい空間が居たたまれない
他の生徒達は既に我関せずの精神で各々食事をしていた
「あ~極楽です~…あっ!!飛影さん思い出しました。面白い情報を手に入れましたよ!!題材は天使です!!多分流行りもの好きな学生さんである彗さんならお分かりかもですね!!」
優希も初対面で名前呼び
彗は飛影で少し慣れたためあまり気にすることは無かったが、優希の言った天使という単語には覚えがあった
「天使?…確か願いの天使ってやつだっけ?」
決して悪くない学力を持つ彗
脳内で検索をかければすぐにヒットした
「正解です!」
彗の解答に優希は笑顔になる
「どんな話なんだ?」
飛影は口を挟みながら優希の肩を揉み続ける
「この付近で流行っている怪談みたいなものですね…彗さん間違っていたら御指摘を…あるところに天使がおりました。その天使は心優しく人のために尽くせる天使でしたが、力が弱く人の眼には映りません。どうしようも無い天使の前に神様が授けたのは携帯電話、その携帯電話を使って天使は人の願いを叶えることができるようになりました。力が弱く十全の願いは叶えられません。しかし微弱ながらも願いが叶うことで見せた人間の笑顔を見てそれだけで天使は満足です。さぁメールがきたら願いをこめて返信なさい、天使が叶えてあげるよ…そんな話です。…合っていますか?」
長く喋りすぎた優希は飛影からお茶を受け取り一息つく
「そうだな…大方合ってると思う。携帯電話が流行りだした頃と同時期に流行ったな」
もはやどっちが従者だかは気にしない彗は流しながら、数年前の記憶を開ける
「そうですね…一度鳴りを潜めた話ですが、ここ最近になって再び流行りだしました。しかも、実話として」
「デマじゃないのか?」
彗の記憶にもそれはあった
願いの天使
いきなり携帯にメールが届く
そこに願いを入れて返信すると数日の内に叶う
宝くじで四等当たったという噂もある
「私の知り合いにも、メールがきた方がいてよく切れる包丁を頼んだら次の日に5000円くらいの包丁をゲットしたらしいです」
「マジか…」
「あ~すまん…」
気まずそうに飛影が口を挟む
「ケイタイってなんだ?あとメイル」
魔界の魔王である飛影
しかし魔界には携帯電話は無く飛影にとっては理解できないものであった
「あ~」
事情を知っている優希は忘れていたという感じ
「今の御時世で知らないやつがいるとは思わなかった」
飛影のアホっぷりに動揺を隠せない彗
仕方ないという感じで彗はポケットから携帯電話を取り出して飛影に見せる
「なにこれ!!?」
一瞬で眼が輝く飛影
「え~と…持ち運びできる電話です、他にも文章を送るメールがあります」
「電話!!?これ電話!!?こんなちっちゃいのか!!?それに手紙も送るのか!?…欲しい!!メッチャクチャ欲しい!!えっ!!?いや、マジで!?」
未知のオモシロ物質に興奮する飛影
「欲しい!!どこいきゃいいんだ!!?」
「携帯ショップ」
今すぐに彗のを貰いたい衝動を我慢する飛影
「優希場所は!!?」
「知ってます!!」
「おっし、さぁ行くぞ!!」
授業があるなど気にもせず、優希の手を掴んで教室を抜け出す
「あっ…彗」
教室を出る寸前、飛影が顔だけ覗かせる
「その天使、本物だから注意しろ」
「は?」
それだけ言うと、満足そうに携帯電話を買いに行く飛影
残った彗には疑問だけしか残らなかった
次は学校イベントの王道体育祭です