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災厄の生き様  作者: 火憐ちゃん
コトハ編
59/122

コトハ


コトハ編のラストです


右腕が宙を舞う

綺麗に切断された腕を飛影は左腕で掴んで切断面と向きを合わせてくっつける


《風華・傷口固定》


腕を風で固定する

災厄として飛影は再生能力も常人よりは高いためこのまま放置すればいつかはくっつく


「ミリアはコトハを連れて退け!!巻き込むぞ!!」


瞬間的に魔力を爆発させるかのように解放

周囲に熱気が襲い掛かる


《縦横無尽》


ミリアは空中で着地

踵を返して一瞬にしてコトハの首根っこを確保すると上空へと跳躍して結界にぶつかる瞬間に飛影は結界に穴を開けて突破させる


「さて…はて…さて…はて?なんだっけな…あぁ思い出した…」


残された飛影といるかもわからない隠者

飛影は緊張感無く空を仰ぎ見る


小さく首を振る飛影

僅かな痛みと共に頬に切り傷が生まれるがそのまま後ろに跳躍

足に切り傷ができあがる


決して浅くはない傷

その性で着地時にバランスを崩す飛影


「ミーツ…だな、気配も感じないし、魔法の名前が隠者だし」


「な…」


隙を見せた飛影の首を跳ね落とそうとした隠者の剣が首の皮一枚で止まっていた

剣を止めているのは飛影の二本の指で白羽取りをしていた


隠者の姿は、メリア魔法学校のかつてのトップのミーツ

30年以上の月日が経っているが、外見に変化は無い

一瞬だけ驚愕に表情を歪ませる


「…お久し振りです。魔王さん…貴方を殺します…もうあの頃の俺じゃないですよ…絶対強者級を殺して絶対強者級になった…今じゃ貴方と対等ですよ」


ミーツが剣を軽く引くが

何の抵抗もなく飛影の指から離れる


「へぇ~絶対強者級か…」


「貴方には何の怨みもありません…ですが、俺自身の成長を感じ取るために殺されてください!!」


再び剣を構える


「今回は加減はしないからな」


飛影は構えもせずに笑うだけ


《隠者》


ミーツの魔法は進化していた

ただ気配を消すだけでなく、物理的に姿さえも認識することができない

その場から透けるように、姿を消す


「言いたいことは三つ」


ミーツは気配を完全に殺して指を三本立てた飛影に斬りかかる

今までなら首を跳ねることが可能であった


しかし身体を伏せてそれをギリギリで回避する


「どんなに気配を消そうが、絶対強者級は予勘がある」


続けて威力よりも手数を優先した斬撃も飛影の身体に掠り傷を負わせることはできるが致命傷には程遠い


「予勘のお陰でなんとなくわかる」


発達した第六感

飛影はミーツから少し距離を取る


《風華・万象》


「二つ目、気配を消す、更に姿も消せるのはかなり凄い…俺の目に写らないから相当な魔法だとは思うが、そこに身体はあるなら話は簡単だ」


風を操り、周囲の風を支配下に置く

気配を消して、姿を消して認識を無くすことはできていても、そこにいるという実体は消せないのであれば関係無いのである


予勘を使っている時とは違い、ミーツの行動を全て感じながら楽々と攻撃を避ける


「三つ目…これが絶対強者級だ…10秒生き抜いて見せろ」


《炎舞・地走り》


飛影の足に炎が灯る

ゆっくりと足を上げる飛影


(やばい!!)


危険を感じたミーツは全力で上空に跳躍する

タイミングを見計らったかのように飛影は大地を踏みしめた


変化は一瞬であった


ミーツの行動は大正解

飛影が大地を踏みしめた瞬間に炎が結界内

半径100メートルを一瞬で蹂躙した


(…桁が違う!!)


地面を埋め尽くす赤い炎

着地する隙間すらないマグマのように波打っている


《炎舞・大噴火》


「くっ!?」


飛影が指を僅かに上げる

それを合図に炎の海が質量を増して結界内、すべての空間を隙間無く埋め尽くした

避けようもない攻撃

気配を消そうが関係無い

全てを攻撃する一撃にミーツが取れた行動は魔力を使って防ぐことである


「くっそ…」


赤い炎はミーツの防御などもろともせずに、全身に軽度の火傷を与え酸素を奪っていく


「あと6秒~」


飛影は炎舞を解除し再び魔法の構築を始める


(チャンスだ!!)


ミーツは魔法の構築に必要な隙を見逃さない

完全に気配を消し、皮が無くなっている掌で剣を握りしめ飛影に接近

位置も気配も何もわからないままの一撃を防ぐことはほぼ不可能


《風華・バリア》


だが、飛影は防ぐことはしない

自身に風を纏わせる

ミーツの剣が飛影の身体に触れる直前


「がぁっ!!」


風が弾けた

風速にして120メートル程度の強風を全身に食らうミーツ

脚の踏ん張りも意味がなく、軽々と吹き飛ばされる


炎と同じように結界内全てを蹂躙する風は上下左右の四方どころか360度全ての角度から吹き荒れ、ミーツの骨を砕いていく


「あと三秒~」


満身創痍のミーツはすでに魔法を構築する余裕など無く、その姿は飛影に丸見えである

飛影は風華を解除する


「これが絶対強者級だ…」


紙切れのように空から落下するミーツに照準を定める

照準といっても気持ちの問題であるが


腕を無造作に振る

純粋な速さと力の一撃に衝撃波が生まれる


「…さすが…でした」


最後の最後にも避けようが無い攻撃が放たれてミーツは苦笑いを浮かべるしかなかった

まともに直撃したミーツは塵も残さずミクロ単位まで粉々に粉砕される


照準を付けた意味はなく、地面は深く抉れ

風の結界によって衝撃波が拡散し破壊し尽くす


「大勝利!!」


大きくガッツポーズしながら結界を解除する飛影


「…馬鹿げてるわよひ~くん!!何あれ!!!!?」


「さすがお兄さん!魔王は伊達じゃないの~」


驚きを隠せないのはコトハである

ミリアは巨大すぎるゴーレムを破壊した飛影の姿を見ていたため、驚きもしないが、コトハは耐性が無い


「安心しろ!!手加減はした!!」


飛影は誇らしげな顔で指を立てる


「しっかし…殺し屋を殺しまくったけど…まぁウチの財政にはなんの関係もないから良しとするか」


裏の業界がかなり厳しいことになるがメリアには関係がない


「それよりもお兄さん…腕は大丈夫なの~?」


「そうよひ~くん!!傷が酷いわよ!!」


片腕は切れていて、無理矢理くっつけているだけに過ぎない

にも関わらず飛影は気にしていない様子である


「こんなもんすぐに治る」


災厄である飛影は綺麗な切断面であり、切られた腕があれば再生する程度はある


「切られた腕が無事じゃなかったらさすがに不味いがな~」


その時は再生することが難しいためヘリオトロープを使用するしかない

緊急な事態でも使用することが憚れるヘリオトロープ


使ったあとの副作用が嫌すぎるので飛影としては安心である


「はぁ…ひ~くんは常識外ね…」


「コトハもだぞ」

「コトハもなの~」


「え!!?」


魔法使いになったコトハ

もともと魔力量だけでいえば反則級の上位以上


すっかり人の理から外れているのである


「けどコトハも私と同じなの~絶対強者級にはなれるけど本当の絶対強者級にはなれないの~」


「どういうこと?」


「んー私は絶対強者級だけど、気まぐれで世界を滅ぼせるほど火力は無いの~私の場合は、気まぐれで世界を滅ぼせる絶対強者級を殺すことができるから絶対強者級なの~」


これは飛影も初めて知ることである

絶対強者級には二種類あるのだ

気まぐれで世界を滅ぼせる絶対強者級と

気まぐれで世界を滅ぼせる絶対強者級を殺せる実力を持つ絶対強者級


飛影は前者でミリアは後者である

ミリアも実際には世界を滅ぼすことはできるのだが、時間がかかってしまう

静紅も同じである

彼女も絶対強者級であるが、時間がかかってしまう


見分けかたは簡単であり、魔法が戦闘系か補助系かで決まる

戦闘系である飛影は炎舞で無炎を造りだしそのまま照射

普段は炎の内側しか熱を持たせていない無炎の熱を外気へと放つ

それだけで太陽以上の熱量をもった熱が世界を焼き付くす


基本的に魔王は戦闘系ばかりである

飛影は炎と風

ダドマは水

ギルギアは重力

ラインは雷

各々飛影のように本気の魔法を放てば世界を滅ぼせる


補助系はミリアのように直接的に威力が無いものである

ミリアの縦横無尽

コトハの時

ハルカの癒し


他にも

ダドマの方舟

静紅の盾や次元破壊

も当てはまる


「へぇ~初耳だ!!」


「まぁ補助系でも裏技はあるの~全魔力を解放して世界が耐えられなかったら滅ぶからいけるの~」


「ゆうちゃんって意外と頭良いのね…」


コトハとしては飛影並の馬鹿だと思っていたのだ


「まぁお兄さん!!報酬は今回いらないけど何かあったらお金次第で運ぶの~…私はそろそろここを離れるの~…お兄さんだったら私がどこにいても魔力でわかるの~」


「おぉ!!いきなりだな…まぁ魔力は覚えたしな…また生きてりゃ会おうぜ」


「そうね…私もゆうちゃんとはまた会いたいからその時は私も入れてくれるとありがたいわ」


根っからの縦横無尽なミリアは同じ場所にあまり滞在しない

メリアへの滞在は長くそろそろ場所を変えようと最後の買い物をしていた時に飛影と会ってキリが良かったのである


「ばいば~い」


飛影とコトハに笑顔で手を振る


《縦横無尽》


振りながら空へと歩き出す


「またな~」

「じゃあね」


飛影とコトハも手を振り別れた


「じゃあ今日は疲れただろうから家帰って休め」


「ん…わかったわ…」


コトハの頭を軽く叩いて飛影も家である城へと向かう

コトハも家に向かって歩き出す


「あっ…ひ~くん」


「なんだ?」


少し歩いてコトハから声をかけられて振り向く


「ありがとう」


「?」


一体何のことかわからない飛影

首を傾げる飛影に微笑むとコトハは再び歩き出した


>>>>>>>>>>>>>>>>>


「なにやってんだボケぇ!!」


城へと戻った飛影にリックスがドロップキックで出迎えた


「いきなりどうした!!?」


老体にドロップキックは堪えたのか一度深呼吸をするリックス


「噂でお前が死んだって聞いて心配してたってのに、城の目の前でガチバトル始めてんじゃねぇよ!!ってかあの焼け野原を何とかしろよ!!なんだ?あそこで農園を開けばいいのか!?あぁ!!?」


メリアでは噂が広まるのが早い

今回の件で釣りのために死に体の演技をしていた飛影

誤解を解いておらず、魔王の死亡がメリア中に噂として流れていたのである


そしてゴラリアとコトハの戦いで荒れた大地に止めをさした飛影

後片付けを忘れていた


「あっ…」


怒鳴り付けられ、完全に自分の落ち度だということに気付いた飛影


「…すまん!!!!」


頭を下げて謝罪をした


その後ダドマに頼み込んで焼け野原を元に戻してもらった飛影


「これで貸し二つな」


「う"ぇ!!?」


最後にダドマが言った言葉にびくついた



さて、次話は、飛影に娘ができる話です。

エリア編は一話ですね。


一話で17年分をつぎ込みます


その次は60話の記念として、特別話の予定です。


61話からはハチャメチャからの人は待ちに待った(ら嬉しいです)人間界編に突入します



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