コトハの戦い
大変お待たせして申し訳ありません。
ようやく通常運転で更新できそうです
今回はコトハの初バトル
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状況が急変?します
「意味がわからないわ…」
飛影の意味深な言葉から三分後である
ミリアが頷いた瞬間に飛影は風で三人を浮かして上空二千メートル
飛影が張った結界の中でコトハは呟いた
「私は準備できてるの~」
目の前で準備運動をしているミリア
「訓練だ!!」
つまりは戦えということである
飛影が何を考えているかはコトハにも理解できないがきっと意味があることなのだろうと諦めていた
「はぁ…飛影に何言っても無駄よね」
「うっし~…いつでもいいの~」
コトハは溜め息を吐きながら魔力を解放する
反則級の上位クラスの魔力
何と無しに飛影の弟子のようなスタンスにいるコトハであるが実戦の経験は皆無に等しい
その代わりにメリア城の図書館の魔法関連の図書は一年で読破している
知識だけでなら、魔王である飛影よりも、ミリアよりも詳しい
対するミリアもコトハの魔力を確認してから魔力を解放
反則級の中位程度の魔力に抑えている
(…私よりも魔力は下…だけど身のこなしから相当戦闘慣れしてそうね…魔法使いだと思うけど…どんな魔法かはわからないわね…ただ見た感じ遠距離より近距離が得意そう…力はそんな無さそうだから速度重視の肉体強化か補助系の魔法かしら…)
コトハはミリアを観察し、本で得た知識を用いて分析する
「いっくの~!!」
開始の合図もないまま、ミリアは動き出す
《縦横無尽》
その場で跳び跳ねてから空中を駆ける
予想外な動きではない
コトハとしては予想していた数十パターンの一つである
コトハは魔力で全身を強化して、後ろに跳躍
更に魔力を操作して巨大な手を造り出し振るった
「ん~?」
(…魔法じゃない?)
ミリアはコトハのことを魔法使いだと考えていたのだが、魔力で攻撃を行った時点でその考えは捨てた
魔法使いであるにも関わらず魔力を使って攻撃するのは愚の骨頂である
車があるのに押して歩くようなものである
「よいしょ」
ミリアは空中で跳躍して魔力でできた拳を避けながら、更に接近する
「…ふ!!」
魔力の拳が弾けて無数の手となりミリアの足首を掴む
精密な魔力操作
魔法使いでもできないようなものである
「あら~」
脚を掴まれて動きが静止するミリア
縦横無尽の効果でそれが魔力を使用している限りミリアにとっては何でもないことであるがわざと動きを止める
ミリアがその奥の手を使うのは命の危機か誰もいないとき限定である
絶対強者級はいくつもの奥の手を隠し持っていることが多い
ミリアもその中の一人である
情報を見せびらかすことになんの意味もないからだ
「これで!!」
動きを止めたミリアへコトハは魔力で大槌を造り出し叩き潰す
その行動に容赦はない
戦闘経験がほぼ皆無のコトハであるからこそ手加減のしようがないのだ
紙切れのように吹き飛ばされるミリア
「わぁお」
あまりの躊躇の無さに飛影は軽く驚いていた
「いったぁ~」
激突の瞬間に身体の向きを変えて着地する
直撃を受けた頭を押さえているがほぼ無傷である
魔力を使えるものと使えないものの戦いであれば今の攻撃でも身体が弾けとぶ程度の威力はあるのだが、魔力を使えるものは魔力で身体を覆い身体能力を強化している
そのために同じ魔力であるコトハの攻撃には威力が足りなかった
「ちょっと本気なの~」
ゆらゆら~とゆっくり揺れるミリア
動きを警戒してか、コトハは身構える
《縦横無尽》
「はやっ!」
「消えた!?」
コトハの視界からミリアが消え去った
左右上下
どこに消えたかも予想できない
飛影ですら、言葉を洩らすほどの速さでミリアは急速接近
気配を感じて後退しようとしたコトハの顎を拳が掠める
「っ!!」
下から上に突き上げるような攻撃
コトハがミリアの姿を追おうとして、上を向こうとした瞬間
「後ろなの~」
背後に移動していたミリアの掌打がコトハの背中に直撃した
「ぐ…」
「これでとどめ!!」
ミリアは抜き手に形を変える
喉元に突き付ければ勝利である
吹き飛ばないように力のベクトルを調整した一撃はコトハの動きを完全に静止させている
《》
「っ!!?」
ミリアはコトハから大きく距離を離す
飛影ですら戸惑っていた
動いたのはコトハただ一人
「きゅぅ…」
もともと肉体面は途方もなく弱いコトハ
ミリアの最初の攻撃で意識がすでに朦朧としていたのである
その場で気絶して倒れた
「ぅおっと!!」
ギリギリで飛影はコトハを支えて背負う
「お兄さんならわかったと思うけど~…その子魔法使ったの~」
「まぁ魔法だな…でもなんの魔法だかは今のところ全然わからん!わかるのは何かをしようとしたことだけか」
気絶する一瞬前
何かの魔法を使おうとした気配があったのである
気絶しているコトハを見てミリアは笑みを浮かべた
「戦闘中に魔法を創造しようとしたなんて、さすがに驚いたの~」
「面白いだろ!?」
本来であれば静かに集中できる場所で魔法の創造は始めることが普通である
と言っても
最初から使えたり(炎舞)、欲しくなってなんかすぐ覚えたり(ヘリオトロープ)、気付いたら使えるようになったり(縦横無尽)
と絶対強者級は普通でないことが通例だ
「けど身体能力が低すぎると思うの~さすがにあれで気絶はビックリなの~」
「体力が本当に無い子なんだよ」
本の虫であるコトハの体力は恐ろしいほど無い
ちゃんとした師匠では無いため、魔力の使い方は教えてはいるが戦闘方法までは教えていない
「ふ~ん、伸びそうなのに勿体無いの~…魔法を教えてあげればいいの~」
「魔法は俺には無理だ!!使えるだけだし~魔法三つ持ってるけど感覚で習得してるし~」
「あは!!私と同じなの~」
魔法を習得するには感覚派と知識派の二種類あり、飛影もミリアも感覚派である
十人十色とは言ったもので一人一人の魔法の習得方法は違う
知識派も最後は自身の感覚になるが過程が違いすぎるし、何より感覚派は完全に感覚のみであるため、教えるにしても余計にわからなくなるだけである
「あっ…お兄さんに耳よりの情報なの~裏の話だけどメリアに殺し屋がいるの~ここ30年くらいで有名になって殺し屋としては確かな腕があるそうよ」
ミリアの雰囲気が僅かに変わる
「へ~」
「依頼成功率100%、業界的には私と直接関係ないけど守り屋と殺し屋は大打撃らしいよ」
守り屋はいわゆるボディガードであるため、殺し屋とは対極の存在である
その殺し屋はその守り屋ももろともせずに確実にターゲットを殺す
信用が落ちる守り屋と腕の立つ方が好まれるため殺し屋にも今仕事がない
「私の所にも来てね、安全に目的地まで運んでほしいとか。お兄さんのお陰でお金あるから断ったけど」
当然目的地までの移動で運び屋にも仕事が来る
魔界の運び屋として一番の腕であるミリアへの依頼は少なくない
「それで?」
「その殺し屋が、ある国に依頼されて今メリアにいる。ターゲットは魔王」
「おぉ…俺かい!!」
唐突に話が始まっていて、よくわかっていなかった飛影だが、ようやく理解した
更にニヤニヤと笑うミリア
「その噂が拡がって他の国でも、殺し屋に依頼してるし実力を見せようと依頼されてもいないのに動いてるのもいるから今は裏で魔王殺しが流行っとるよ」
「嫌な流行りだな…そんなん流行になった日には大爆笑だ!!」
うはははと笑う飛影
世界中の殺し屋から狙われているという命の危機でも飛影は笑みを浮かべる
まるで今のこの状況が楽しいことだと思っているかのようにである
魔王の影響力というのはとてつもなく大きい
大戦を一人で終わらせた実積もあり軍事力という点では飛影を抱えた国が随一となる
今は世界一のメリアてあれど、もともと大国であった国にとっては嬉しいことでもない
逆に顔色を伺うという屈辱にも耐えているのだ
飛影という軍事力を奪ってしまえばどうとでもなる
それが他の国の考えであった
「殺し屋か…それは面白そうだ!!」
「お兄さんは私の予想と変わらないね…私も手伝うからそこら辺は安心してくれていいよ」
「おっ…悪いな!でも情報だけで充分だ!!」
「言い方を間違えたよ、面白いから混ぜて」
肉食獣の笑み
手伝いであれば飛影としては巻き込むわけにはいかないという考えが浮かぶが、混ぜてとなれば話は別である
「戦いは嫌いじゃなかったのか?」
「今の私は大好きだよ。仕事じゃなくてプライベートだし、殺し屋には何回か邪魔されたこともあるから」
「なるほどな」
考える素振りを見せる飛影だが、答えはすでに決まっていた
「じゃあよろしく!!」
「任せるの~!!」
ハイタッチ
二人の手が叩き合わせられ小気味良い音が響いた
「そういえば、なんで口調変わるんだ?」
「秘密なの~」
読んでいただきありがとうございます。
話中の
《》
↑だけのものは脱字とかではないです。
紛らわしいと思いますが、何卒ご理解願います。