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災厄の生き様  作者: 火憐ちゃん
コトハ編
54/122

言葉の成長


今回はコトハの成長の一場面の話です


コトハが飛影と出会って一週間

コトハは毎日、メリア城の図書館へと通いつめて魔法の本を一日中読んでいた


そしていつも決まった時間に飛影がやってくる


その日もいつもと同じで、12時をまわったころである


「おっす~」


弁当箱を片手に飛影がいつものように山を築いているコトハの隣に座る


「…」


しかし、コトハは何も返さない

読書に集中しており、飛影に気づいていないのである


「…変わらないなぁ~毎日同じ時間に来てるのに」


さすがに1週間もすれば、キチンと気付いてくれるだろうと飛影は考えていたのであるが、コトハの読書に対する集中力を侮っていた

コトハ本人も、さすがに気にしていて時間を意識しているのであるが、読書を始めた途端にそれが頭から離れてしまうのである


「コ~ト~ハ~」


飛影はコトハを覗き込むようにして見るが、全く気付く様子はない

手を本とコトハの視界に置くとすぐにはねのけられる


「…」


そしてこれは、一週間ずっと続く飛影の恒例行事になっていた

どうやって、コトハで遊びながら気付かせるかということをである


今までの戦歴としては、

『本を取り上げる』は有効(ただし凄い不機嫌になる)

『本と視界の間に物を置いて邪魔をする』は無効(移動して避けられる)

『頭をなでる』は無効(全く気付かない)

『マッサージをする』は無効(全く気付かない)

『頬を突っつく』は無効(全く気付かない)

『身体を持ちあげる』は無効(本を離そうともしない)

『声をかける』は無効(全く気付かない)


であった


もはや、強制的に本を取り上げることでしか気づかせることができていない状況である

飛影としてはそれはつまらないと、色々と試行錯誤しているがまだ有効な手段が少ないのである


基本的には読書終了後に声をかけることが一番手っ取り早い方法である


(今日はどうしようか…)


悩む飛影である

初日は逃げてきたので黒のコートを着ていたが、実際目立ちすぎるためTシャツ一枚にしている


気付くものは気付くが、飛影も最低限しか気配を出していないため声をかけられれば気付くレベルにしている

それによって最も城に近いこの場所でも騒ぎにはならないのだ


飛影は魔王と言えばどうなるかの反応が予想つくため、なるべく隠すようにしている

コトハも気付いていないようで飛影としては安心である


(…よし)


飛影は考えをまとめて、周囲に誰もいないことを確認する


《風華・大車輪》


コトハの座っている椅子を風で浮かせ、その身体を椅子にシートベルトをするように固定した


指先で軽く円を描くと同時に椅子ごとコトハの身体が回転し始める


「…」


しかし、全くの無反応である

気にせずに読書を続けていた


(この集中力はすげぇな)


ここまでになるとさすがの飛影でも尊敬してしまう

とりあえずと回転は続けさせておき飛影自身はどこからか持ってきた本を読み始める


10分後

コトハの顔が真っ青になったところで飛影は魔法を解除


更に10分後にコトハが読み終わった


「おう」


「…こんにちわ…貴方何かした?物凄い気持ち悪い…吐きそう」


まだ顔が真っ青になっているコトハ

当然といえば当然であるが、その状態でも読書を続けていたのはコトハであった

飛影は少しひきつった笑みを浮かべ、弁当箱を見せる


「休憩がてら飯を食おう。そうすりゃ吐き気も無くなるさ」


張本人である飛影は誤魔化すために弁当を開ける

ちなみにであるが、ここは飲食禁止である

図書館の管理者にお願いして許可を貰った飛影

弁当を作るときに、作りたがる従者を必死になって止めさせて作った作品である

子供の時とは違い、見た目も味も格段にレベルが上がっている


「いただきます」


一週間の恒例である

コトハとしても今まではずっと読書を続けていたため、昼御飯はほぼ抜いていた

折角用意してもらって、更に味も旨いのでコトハも甘えていた


「今日は何を教えてくれるの?」


食事の合間の会話

昼御飯を食べ終わった後は、実施という形で飛影から魔力操作について教えてもらっていた


「そうだなぁ~…魔力の解放と抑えるのは説明しただろ…部分的に強化も説明したし…じゃあ…今日は魔力操作の色々を説明と実施かな」


飛影が説明したことはコトハは既に覚えていた

物分かりが良すぎる

それが飛影の印象である


一度教えたことをすぐに理解して発展させる

通常では考えられない程の回転の速さ

そして、飛影と出会ってからコトハの魔力は増加していた

何かが切っ掛けで所有魔力が増加することを飛影は知っていたが実例を見たのは始めてである


「わかったわ…けど本当に無料でいいのかしら?本で読んだけど魔法関連を教わるには大金が必要とあったわ」


コトハは飛影から軽く指導を受けているが、一銭も払っていない

魔法とは人間であれば一生をかけて修得できるかわからないそのレベルである

魔力が高いだけで魔法を修得出来るわけではなく、向き不向きとなる


魔法を扱うことに向いているものは少年少女、果ては生まれた時から使用できる

前者がメリア魔法学校のSクラスにいる者で、後者がメリアの王族である


「お金はいらんし、そんなことはない。メリア魔法学校も向いている者に魔法を教えているが、授業料に差は無い。まぁ魔法使いの紛い物は詐欺とかで確かに法外な値段を吹っ掛けるらしいけど」


俗に言う詐欺である

飛影は金にも興味はないためそんな詐欺を行う気はない

あるのは、コトハという少女がどこまで面白くなるかといった感情である


そして昼御飯を食べ終わる


「よし、じゃあコトハ…よく視ろよ」


飛影は周囲二メートル

迷惑にならないよう最小限の大きさで結界を張る


飛影はカガリから教わってきたことを教えている

自身の魔力を操作して手の形を作り本を持ち上げる


飛影自身は動いておらず、傍目から見れば手品であろう

しかし、魔力の動きに集中して視ていたコトハにはそれが理解できた


「…いきなり難易度上がってないかしら?」


「そんなことはない、解放と抑えるのと部分的に強化ができればできるぞ。まぁ手の形はまだ作らなくていいけどな…あとはイメージだよ」


飛影の説明を聞いて少し考え込むコトハ

手に魔力を集中したりしている


これもいつものことである

コトハは絶対にすぐ実践はせずに必ず考えていた

考えて理解できなければ、飛影に再確認する


「…何となくだけど法則がわかったわ」


(今回は早いな…)


コトハの法則がわかったという言葉

飛影は理解できていないのであるが、コトハ曰く何事も法則があってその法則が理解できれば簡単とのことであった


「…」


手を前に出して、眼を瞑り集中するコトハ

もやもやと霧のように魔力が本を包み込む


「…これでいいの?」


本は宙を浮き飛影の目の前を漂っていた


「充分!!充分!!」


飛影は自身の顔がにやけているのがわかった


(こいつ…面白い!!)


魔力操作

魔法を扱う上での基本であり土台である

飛影の場合は土台を作る前に大宮殿を作成してしまって、大宮殿を持ち上げて無理矢理土台を作った感じとなるが、それでもカガリから教わった内容のお陰で飛影の今の実力があるといっても過言ではない


その重要な土台

ここまで完璧にマスターしていることに飛影は面白いと感じる


「次はもっと重いものを動かしてみよう」


「わかったわ…ちなみに貴方は本気ならどれぐらいいけるの?」


コトハの小さな疑問


「俺か?」


飛影は少し考える素振りを見せて指を窓に向ける


「…レベルが違うわね…」


窓から見えるのは根から引っ込ぬかれた大木である

コトハは魔力を伸ばした気配すら感じ取れなかった



次話はコトハの精神的な成長の話です。


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