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災厄の生き様  作者: 火憐ちゃん
メリア編
52/122

飛影のことが


タイトルはハルカの台詞です


いつもの従者の格好

そして背中に黒い綺麗な翼が生えているハルカ

いつもと変わらぬ笑みで微笑んでいた


「…なんでこんなことしたやつの関係者かは知らないが、ハルカ…お前は殺す」


右腕は力無くぶら下がり

胸からの出血は止まらない飛影

だが、左手で刀の形にした黒鋼を構える


飛影の魔力は全魔力の半分以下

対してハルカの魔力は全力の飛影と同等レベルで、更に無傷である


相手がハルカだろうと飛影は関係ない

敵は殺すだけである


「…えぇ!!?」


飛影から膨大な殺気が向けられるハルカ

その場から一歩引いて驚いていた


「ん?ハルカはこの事件の関係者じゃないのか?」


その反応に飛影は殺気を抑えて刀も下げて、問う


「いえ、寧ろ元凶です!!」


ハルカの清々しいほどの返事に殺気が復活し構える飛影


「あぁぁぁ!!飛影さん!!!!?怪我してるじゃないですか!!」


ようやくハルカは飛影の怪我に気付いた

そして無造作に箱を持ちながら飛影へと接近する


戦闘開始

そう判断した飛影は刀を一文字に振るう


「わわ!!」


だがその一撃がハルカに直撃する前に、箱をきちんと閉め忘れていたため箱の中身が飛び出した


「どういうつもりだ?」


箱の中身は包帯などが入っている医療箱であった

飛影の攻撃が止まる


「飛影さんは座ってください!!怪我してるのに無理は駄目です!!」


落ちた道具を拾うためかその場に屈みこむハルカ

殺してくださいと言っているものである


「何がしたいんだ?」


「まずは、飛影さんの治療です!!」


拾い集めて医療箱にきちんと仕舞うハルカ

殺気も敵意も無いハルカに飛影は戸惑いを覚える


そして再び立ち上がると、再び箱が閉まっておらず中身が飛び出した


「あぁ!!?」


「はぁ…相変わらず馬鹿だな」


ハルカの馬鹿っぷりに飛影は大きく溜め息を吐き、ハルカと一緒に物を拾う


「飛影さんは座ってください!!」


「座ってるぞ」


地べたに座り込んで物を拾っている飛影

ハルカの言う通り座ってはいた


「屁理屈です!」


まったく!!と怒りながら飛影の右腕にテキパキと治療を始める


「うわぁ…痛そうですね」


「骨も靭帯もズタズタだからな」


「うわぁ…」


飛影の右腕は赤黒く変色して腫れており、元の形が想像できないほど酷いものであった


「戦う気はないんだったら話せ…じゃなきゃその首は跳ねる」


飛影は治療を行うハルカの首筋に刀を構える


「…飛影さんはあの頃のことを覚えていますか?」


「…ハルカ…相変わらず意味がわからん…あの頃ってどれだよ」


神妙な表情でハルカは語り出そうとしたが、飛影に一蹴された


「ちょっ!!?今そういう空気じゃないですよ!!」


「知るか!!」


「じゃあ頑張ります!!飛影さんは三年前の今日のことを覚えていますか?」


「覚えてるぞ、街でボロボロな服着て、泣きじゃくってた身寄りが無いハルカを拾った日だな」


三年前の出来事であるが、飛影は即答で返す


「私は神様です!」


「もう突っ込むのめんどくさい…とりあえず続けなさい」


唐突すぎて理解が追い付かないが先に進まないと判断してスルーする


「酷いです!!…えっと私は神界という神様の世界の一神でした…」


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


神界


魔界・人間界・天界

三つの世界に加えてのもう一つの世界でこの星は構成されている


魔法の世界

科学の世界

天使の世界


そして、神の世界


三つの世界は同格であるが、神界はその上位の世界である

三年前、そんな神様の世界にハルカはいた


三つの世界でいう魔王のように

同じ立場で神王という存在がいる


ハルカは神王の部下の一人として日々、過ごしてきた

しかし、飛影とハルカが出会った当日


「あわわ!!」


ハルカは神王にお茶を持っていく途中

脚を絡ませて転倒


白髪の老人である神王は一つ溜め息を吐いた

熱々のお茶は神王の頭にかかって全身を濡らしていた


「…ハルカ」


「ごめんなさぁい!!」


それは、いつもの光景であった


「これで丁度千回だ…下界落ち」


しかし神王がハルカにお茶を引っ掛けられた回数が

1,000回になったとなれば、いつもとは違っていた


「えぇ!!?」


神王が指をパチンと鳴らす


「わわわわ!!?」


ハルカの背が縮み、三歳ほど若返る

輝く白の翼は黒に染まり、身体に格納される


そして床に穴が開いて堕ちた先は、魔界であった


知らない人間達で溢れかえり知らない土地で力も失いただ一人で放り出された


「…っ…ぅう…グスン」


少しだけ若返り15歳ほどの少女はその場に屈み泣き出し始めた

周囲は物言わぬ雰囲気に関わりを持とうと思うものはいなかった。


「…どうかしたか?」


ただ一人

飛影を除いて


ハルカに手を差し伸ばす飛影


「ぅわぁああん!!」


そんな飛影の優しさに触れてハルカは飛影に抱き付いて大泣きし始めた

それが飛影とハルカの出会いである


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


「という訳なんですよ飛影さん」


嬉しそうに笑顔で語りきったハルカ


「…なんか突っ込む気も無いわ」


そんなハルカに飛影は呆れていた


「そんなわけで、私は飛影さんに大恩があります!!」


その後、ハルカは住む場所もお金も身寄りも無かったため、飛影がメリアの従者として働くように紹介したのである


「それでこの騒ぎか…恩を仇でってやつだな…」


飛影の左手の力が僅かに増す


「ち…違いますよ!!飛影さん誤解ですよ!!誤解!!」


「怪我人も出てるし建造物も破壊されてるが…何が誤解だ?」


「飛影さんは、ギルギアやダドマとたまに喧嘩してますけど、殺し合いじゃないですから…飛影さんの気付かない内にストレスが溜まっているんですよ…だからこそ、私はこの計画を立てました」


それは災厄として生まれ、絶対強者級にまでなった飛影としてどうしようもないことである

誰かを殺すということを本能から好いている

しかし、命のやり取りも行いたい


ギルギアやダドマとの喧嘩はあくまでも喧嘩で命のやり取りは生まない

絶対強者級との喧嘩によって強い者との戦いを行うことはできている

それによってまだ重症ではないが、少しずつ飛影には欲求不満が溜まっていた


欲求不満から生まれるストレスは飛影のことを蝕んでいた


「飛影さんが全力を出せる絶対強者級で殺せる者を集めました」


「…」


「私の神としての力はもう戻っていたので、絶対強者級が暴走しても御せる程度の実力者しか集められなかったですけどね」


肉体は成長し、元の姿と同じレベルまで成長し


「私は計画の開始を記念日である今日にしました。これが私の理由です」


一通り説明が終わり、飛影の治療も終えたハルカ

いつのまにか、ハルカの首筋に置かれていた刃は無くなっていた


「やりたかったことは理解した。そして敵意も殺意も欠片も放ってないから、信じよう」


「ほんとですか!?」


「だけど、この損害は許せることじゃない…」


睨み付ける飛影

事実、メリアに与えられた損害は酷いものであった


幸いにも死者自体は出ていないが、負傷者は万を超す

建物などの被害総額も、億では済まない


「大丈夫です。このハルカに洩れはありません!!」


ハルカは勢いよく立ち上がり魔力を解放する


「えっ…と…範囲は~面倒だからメリア全土」


優しく淡い魔力がメリアを覆う


《レーリス・完全治癒》


優しい淡い光がハルカから放たれメリアに浸透する


(ん…?回復魔法か)


その優しい淡い光に触れた瞬間に、飛影の傷は完治する

その光はメリアで傷を負ったもの、負っているものの傷を一瞬で完治させる


「これで、怪我人は全員完治しました!建造物はダドマさんに依頼すれば大丈夫です」


国中の怪我人全ての治療を行ったハルカだが、その表現はまだまだ余裕そのものであった

飛影は一つ溜め息を吐いてハルカの頭に手を乗せて乱雑に撫でる


「最初からそれ使えば、俺に治療する意味無いだろ馬鹿」


「あっ…」


飛影からの指摘にようやく気付いたハルカ

顔を真っ赤にさせる


「あれですよ!!私は飛影さんに自らキチンと治療したかったからですよ!!」


「それらしい言い訳を考え付いたな…」


「うっ…」


図星を突かれたハルカは呻く


「まぁ…俺のことを考えての行動なら感謝する。だが今度からこの国を捲き込むな…次に捲き込んだらハルカでも容赦はしない」


やんわりと頭を撫でる飛影だが、眼は真剣そのものであった


「大丈夫ですよ飛影さん!!私は?」


ハルカの身体が一瞬光に包まれた

神としての翼

黒く綺麗な翼が白く綺麗な翼へと変わる


そしてハルカの足下に穴が開く


「なんかデジャブゥウ!?」


「ハルカ!!?」


そのまま穴へと落ちるハルカ


「私は大好きです!!」


手を伸ばす飛影だが、穴にはハルカの姿は無かった

神界へと昇ったのである


「…最後まで馬鹿だったな」


最後の言葉にも言葉が足りていなかったハルカ

穴は消滅し


死者は0

負傷者も0であったこの国全土に影響を及ぼしたこの大事件は終わりを迎えた


飛影は溜め息を吐きながら、復興計画について考え始める


>>>>>>>>>>>>>>>>


ミリアへの報酬として

20億G


本人曰く


「格安にしといたの~何か困ったらまた呼んでなの~お兄さん」


お金や金がたんまりと入った鞄を背負って空を歩いて帰った


静紅への報酬として

デスパラのナイフ


「また、入手したら呼んでね飛影君」


ホクホクと大満足した表情で違う次元へと移動した


そして建造物の再生のために、ダドマに依頼


「貸し一つな」


ラインの時とは少し違い、ダドマは快く承諾

一瞬で全てが元通りとなった



とりあえず、一通りの物語はこれで完結です。

ここからはハチャメチャ魔王のキャラとの出会い編が始まります


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