絶対強者級の戦い
今回は絶対強者級の戦いです
岩のゴーレムが、焼失した
その時、ある一人の絶対強者級はメリア城にいた
慌ただしい城の中のほほんと、中庭で日向ぼっこのように寝転がっていた
その周囲には影はいない
慌ただしいため、城の誰もその存在には気付いていなかった
「早く…来ないですかね…」
退屈そうに寝返りをうつ
その背中には綺麗な黒い翼が生えていた
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同時刻
「あはっ!!発見なの~」
笑いながら、空中を歩いているのはミリアであった
少し城下町からは外れていてあまり人が住んでいない地域
そこに、ミリアが捜していたものを発見した
「縦横無尽か…何のようだ?」
一面、腐敗していて瘴気が漂っていた
その中心に立っている男
毒々しく、視界に入れるだけでも辛いその空間に居座っていた
「ハロー毒海」
手を振りながら、ミリアは瘴気の中へと入り込む
「なんだ?手伝いならいらんぞ…あと三時間ほどすれば国全土に毒が回る」
その絶対強者級の名前は不明
魔法名は毒海であるため、彼を知っている者達は、魔法名の毒海と呼ぶ
そして毒海もまた、相手を魔法名で呼ぶ
全身を黒装束と包帯で身を包み全容はわからないが、身体は細く女性のようであるが、腐ったような声を聞いてしまえば、そう思うものもいなくなる
「ぶっぶ~逆なの~毒海って相性いいから仕事させてもらうの~」
「なんだ?寝返ったのか…まぁそれも良いだろう」
表情がわからない毒海
声も焦りを感じていない
「更にぶっぶ~、寝返るも何も私は依頼された身だよ?依頼は完遂したし、もう関係ない。それに面白い人見つけたから、そっちの方が面白いし」
ニヤリと笑い肉食獣のような眼で毒海を睨みつける
「ふっ…縦横無尽…地が出てるぞ」
「関係ないわ。ここから先は名の通り縦横無尽にいかせてもらうの」
空中に静止し、毒沼を見下すようにしている
「縦横無尽の本気か…面白い…毒海に溺れ死ね」
ミリアも毒海も遊び用ではない全力の魔力を解放する
《縦横無尽》
《毒海・津波》
ミリアが空中を駆けると同時に毒の津波が発生する
あまりにも巨大な津波はミリアの逃げ場を完全に防いでいた
触れれば即蒸発の猛毒
空気中に漂う瘴気ですら一息で死ぬほどである
瘴気程度なら魔力による防御で抑えることができる
だが、毒本体であれば話は別である
体外で触れると蒸発
体内に接種しようものなら絶対強者級のミリアと言えど行動不能、もしくは死に至る
その津波相手にミリアはただ突っ込む
全力で走り津波と激突する
「馬鹿か?」
毒沼は冷静に感想を吐き捨てる
確実に死体も残らないような死に方を自分から選んだのである
「あはっ!!」
しかし、笑い声と共に津波を吹き飛ばし無傷のミリアが毒沼に接近していた
「縦横無尽だよ!!」
「ちっ!!」
大きく手刀を振りかぶるミリア
毒沼は接近戦は苦手だが、見え見えの攻撃であれば話は別である
《毒沼・蒸》
ミリアの攻撃の軌道に毒の塊を構築する
軌道を変えるのであれば充分に避ける時間が出来る
構わずに攻撃をするのであれば、腕が蒸発するだけである
ミリアはそのまま手刀を降り下ろし
腕が空中で静止
何かを掴んでいるようにその腕を中心に回転
速度はそのままで回し蹴りを放った
「が!!?」
側頭部に直撃した毒沼はそのまま頭蓋がひび割れると同時に吹き飛ばされる
「怪我したくないから、さようなら」
「くそ…がぁ!!」
《毒沼・全方領域》
追い討ちをかけるミリアに対し、自身の身体を毒で覆い隠す
触れれば即蒸発の肉弾戦の相手には無敵の防御技
「その程度じゃ、止まれないよ!!」
意表を付くためではなく、当てるために再び大きく手刀を振りかぶる
そして躊躇なく毒の領域に手を差し出し、毒沼の首を切り飛ばす
「馬…鹿な」
「残念だったね毒沼、だから言ったの…相性が良いって」
生首を掴み大きく振りかぶる
ミリアの仕事は絶対強者級の一人を世界の反対側まで運ぶことである
そのまま全力で投げつけた
「あ~久々に本気は楽しかったの~毒沼は多分世界の反対側まで投げれたら良いなって思うから仕事完了なの~」
かなりぞんざいな仕事であった
ミリアの縦横無尽の効果はその名の通りである
どんな場所でも自在に移動と停止をすることができる
手刀の途中で急静止し回転した時や普段の移動の時に使用している
そして隠されたもう一つの効果
それが魔法である限りミリアの動きを束縛することも傷を付けることもできない
肉弾戦が苦手で魔法タイプの絶対強者級であり、肉弾戦の得意な敵を葬ることに長けた毒沼はミリアにとっては油断してくれるカモであった
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そして同時刻
「あらあら…飛影君ごめんね~本命は私が発見しちゃったわ」
静紅は絶対強者級のこのメリアを覆う気味の悪い魔力の持ち主と対峙した
男は隠れもせずに、ただ城に向かって歩いていただけであった
「絶対強者級か…面白い…この国をいただくと共に魔王相手の準備運動にちょうどいいな…」
《影縫・黒刀》
男の手に影が集まり刃を作り出す
この男が全ての元凶であり、影を造り出したモノであった
「私は静紅よ…短い間だけどよろしく」
「悪戯遊戯か…俺はヘニルだ。短い間だが覚えとくが良い」
ヘニルは中肉中背でガタイもそこまで良いとは言えず、不気味という存在が体現したかのようななりであった
不気味に笑うヘニルと不敵に笑う静紅
先に動いたのはヘニルであった
《影縫・剣山》
周囲に存在する幾数もの影から針が伸びる
全方位からの攻撃であるが、静紅は動くこともせずに魔法を発動する
《完全領域》
静紅を囲むように防御壁が展開され、針を全て防ぎきる
「私を相手にするには火力が足りないわね…魔力を使いすぎたって感じかしら?」
数は減ってきているとはいえ未だに影達が闊歩している
絶対強者級といえど、魔力の限界である
「心配すんな」
不気味に笑うヘニルはポケットから液体の入った小瓶を取り出す
「あらあら…魔力回復の薬じゃない…けっこうレアよ」
盗賊である静紅はその液体が何か一目で把握する
しかし、ヘニルが飲み終わるのを余裕の表情で観察していた
「さて、待たせたな」
レア度によって魔力回復量が変化する液体
適量のを飲まなければ劇薬にもなる液体だが、最高級のレア度であり絶対強者級専用であると言われているヘニルが飲んだ液体は
絶対強者級の魔力を完全に回復させる
「ふふ…待ちくたびれたわ。全力を使って負けるなら本望でしょう?」
不敵な笑みを崩すことがない静紅
「待ったことを後悔して死ね」
《影縫・影縛り》
静紅の影が鞭のように自身の身体を傷付けようとする
先程より速さも大きさも、比べ物にならないほど上昇している
「っ!!」
静紅は完全領域を解除
空へと飛び上がる
その先には当然のように静紅の行動を先読みしたヘニルが影の剣を静紅に向けていた
「伸びろ」
影は一瞬だけ歪み、静紅を射殺そうと音速を越える速度で襲いかかる
「ふふ…」
《次元破壊》
静紅は手を向けるだけ
飛影が完全に攻撃型とすれば静紅はカウンター型である
剣が通れるだけの大きさの次元を破壊する
一直線に伸びた影は次元の亀裂に入り込みヘニルを串刺しにする
「なっ!!」
完全な初見殺し
ヘニルは自分の魔法の情報を公開しすぎたのである
影の魔法だと知っていればこそ、相手の攻撃や動きが予想できる
だからこそのこのカウンターが成立したのである
静紅の次元破壊であっても同じである
ただの移動魔法ではなく、亀裂に入れてしまえば問答無用で移動させることができる魔法
それを知っていれば、静紅の行動に警戒して寸止めすることも可能であっただろう
「もう…終わりかしら」
ピクリとも動かないヘニル
静紅は警戒心を消しはしない
致命傷ではないことはわかっていたためだ
《影縫・ムーブ》
ヘニルの身体が影に溶け込む
「そんなわけあるかよ!!」
そして静紅の影から現れると同時に影で包まれた手刀を放った
「あらあら」
《次元破壊》
手刀を次元の亀裂に入れてそれを防ぎ静紅はヘニルの腕を手刀で切り落とす
「がっ!!」
「良かったわ…新技試したかったのよ~」
笑顔のままヘニルの頭を鷲掴みにする
《次元破壊・断裂》
静紅はいつも通りに魔法を発動する
次元が破壊され、次元の亀裂が出現する
「っ!?」
「あらあら…」
その亀裂はヘニルの身体に重なるように出現して、ヘニルの身体を真っ二つに切り裂いていた
「こうなるのね…攻撃力は高そうだけれど使いどころが難しいわね」
隙が大きく、更に超至近距離で相手が硬直していなければ使えない技
実用性は皆無に近い
「さて…残りはあと一人かしら」
メリア国に現れた影は消滅した
ミリアと同時刻に倒したため、感じる絶対強者級の魔力は合計四つ
飛影と静紅とミリアと最後に残った敵だけである
「飛影君が行ってるみたいだから私はふらふらしようかしら」
そして最後の一人に飛影が向かっていたため、静紅は観光よろしく周辺の散歩を始めた
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最後の一人
飛影はその一人がいる場所に到着する
「…」
城の中庭
飛影としては予想外で予想内の場所であった
「さて…最後の一人だが、何か言うことはあるか?」
飛影は黒鋼を刀にして構える
対峙しているのは一人の少女
「とりあえず、おかえりなさい飛影さん」
ニコニコと緊張感なく笑う少女
敵意はまるで無い
いつも通りに一礼する
「…ただいま、ハルカ」
残りの一人
メリアを襲った絶対強者級で最後に残った少女
メリア城の従者、ハルカが黒い翼を生やしながら笑っていた
最後の一人はハルカです
予想されたかたで的中な方はいましたでしょうか?