魔王の演習
ふぃ~
中々の更新速度です
これが毎回できればいいのですが…
「ついにこの日がやってきてしまった」
広い広い訓練場
スタジアムになっている空間にSクラスの生徒が集まっていた
観客席では他のクラスの者達が見物として来ていた
誰もが魔王飛影の登場に今か今かと待っている中、クドだけは溜め息を吐いていた
飛影が演習を行うと聞いてクドが真っ先に行ったことは落とし穴の確認である
幸いにも落とし穴は無かったが、飛影の行動を予測できるはずも無いクドは周囲を警戒していた
(飛影が来るのは嬉しいけどさ…嬉しいけど…)
複雑な心境であった
「よいしょ…と!!」
そして飛影が登場した
上空から何事もないように着地する
「ぴったりだな」
《風華・音量調整》
「あ~あ~…これから演習を始める!!準備ができた班からかかってこい!!」
刀を抜く飛影
『はい?』
未だに状況が理解できない生徒達
魔王と対面しているという感動を感じる前の出来事である
「ん?もちろん手加減はするぞ!!」
飛影はそれを勘違いする
恐れる必要はないとニッコリと笑顔で
生徒達とすれば、なんの説明もなく始まったことに対しての戸惑いだったため、更に戸惑う
《ロア・一閃矢&拡散矢》
飛影に向けて魔法が放たれる
クラス中が戸惑っている中
しかし、Sクラスの中で一人だけ、現状を理解したクドは容赦無く放つ
「クドか」
飛影は高速で放たれた一本の巨大な矢を切り裂く
そしてその場でクルリと一回転
後から放たれた大量の細かな矢
飛影は力を込めて横一線
ただそれだけ
それだけで衝撃が発生し、小さな矢を全て消滅させる
「クドの班は準備が整ったのか?」
飛影が問い掛ける
クドは自然と笑みが溢れる
いつもは刀を抜かず、のらりくらりと避けながら落とし穴に落とす飛影が初めて、クドの攻撃を迎撃した
クドはいつもの話しかけた時のような、対峙した時のようなむず痒い緊張感を感じない
「私に班は無いよ飛影!!だから準備万端だよ!」
初めての魔王とのお遊びレベルだが戦いに嬉しくて笑みが溢れる
その笑みは顔は似ていないがセツネに似ていた
「なるほどなぁ!!」
飛影は笑いながら、頭を下げる
その瞬間、飛影の頭があった場所に高速の突きが放たれていた
「Sクラス最強、ミーツ・グラエル!!これはルール違反ですか?」
「ルールなんてそもそもねぇよ!!」
突いた剣をそのまま飛影に降り下ろすミーツ
飛影の手が僅かに動いた
「な!!?」
と認識した瞬間、空中に放り投げられていた
《ソル・氷憐》
ミーツを投げた時に生まれた僅かな硬直を逃さずミレイが飛影に氷の刃を放つ
「いいねぇ!!」
中々の好判断に飛影は笑いながら、魔剣を手甲に変化させて氷の刃を殴り飛ばし正面と背後からの根と蹴りを軽くいなす
戦闘が始まってようやく、理解したSクラスの面々
これは演習ではなく、全力の戦いであると
Sクラスという強力な力を持つクラスでは、あまり本気を出すことができない
力が大きいため、それに伴い怪我も大きくなるためである
しかし、目の前にはその全力を出しても、まだまだ足りないほどの実力差がある人物
ようは、今まで出せなかった本気を出せや、圧倒的な力でねじ伏せてやる
ということである
「上等!!」
クドは高く跳躍し地面に弓を向ける
《ロア・星の導き》
『ばっ!!?』
矢を放った瞬間、飛影を除く全員が一気に後退する
クドが班を組んでいない理由は簡単である
巻き込むから
黒く光る矢の先端から重力が発生
「っ!?」
予想できなかった飛影は直撃し、僅かに身体が硬直する
《ロア・特攻形態》
巨大な弓がクドの身体を覆う
弓の後方部分から矢が放たれその反動で飛影に接近
「甘い!!」
飛影は一瞬だけの硬直である
ギルギアから何度も受けてきた飛影にとっては苦でもない
「どっせい!!」
クドの体当たりを片手で受け止めた飛影
「えっと…まじで?」
魔法無しで止められたクド
身体が硬直した
「まじ」
苦笑いを浮かべるクド
心底楽しそうな笑みを浮かべた飛影
握力だけで魔法でできた特攻用の固い弓に穴が開く
「ヘルプヘルプヘルプヘルプヘルプヘルプヘルプヘルプヘルプヘルプヘルプぅぅぅ!!」
助けを求めたクドだが、全員が重力に巻き込まれないように退避していたため間に合わない
簡単にいえば自業自得であった
「せい!!」
そして飛影はそのまま投げ捨てる
「ひぎゃあぁぁぁぁぁあ!!」
そのまま壁に激突
「も…むり」
クドは目を回して気絶する
《ソル・焔の路》
ミレイの手から焔が吹き出て飛影へと一直線伸びる
同時に自らも接近し、殴りかかる
「炎と氷?…熱操作か」
熱で赤く染まった拳
超高温であるが、飛影は関係無く受け止める
「かなり強力だな…身のこなしも良いし…及第点!!」
魔力を使って魔法を相殺させている飛影
「受け止められたのは、初めてです…よ!!」
《ソル・氷点下》
飛影の周囲の熱を操作して氷を形成
飛影を氷の檻に閉じ込める
「これで…」
「甘いわぁ!!」
拳を握りしめた飛影は、氷の檻を思いきり殴り飛ばす
「えぇ!!?」
魔法でできた檻を拳一つで粉砕された
その隙に飛影はミレイの頭を掴み投げ飛ばす
『あ…ありえねぇぇぇ!!』
クドは二位
ミレイは三位
Sクラスの中でも限られた三人の魔法使いのうち、二人が拳だけで倒された
魔法使いの王であるはずの魔王の存在について疑ってしまうのにも無理はない
《隠者》
「っ!?」
飛影はその場から上空へ跳躍
背後からの袈裟斬りを回避する
「魔法を使ったんだが…避けられるってありかよ」
呆然とするミーツ
「気配の完全遮断か…」
ミーツの魔法は、気配を消すだけ
攻撃の気配
移動の気配
防御の気配
反撃の気配
魔力の気配
は勿論のこと
敵意や殺意までも消すミーツの魔法
攻撃の先読みを完全に消し去るどころか、数秒ではあるが視覚から消えることも可能である
対峙しているにも関わらず奇襲を仕掛けれる
そんな魔法だ
元々は剣士であったミーツは格闘戦が得意である
サポートとしては心強い魔法
《隠者》
ミーツは魔法を発動しながら飛影の着地地点へと駆け出す
流石の魔王でも宙に浮けば着地するしかない
そう考えて、ミーツは力を溜める
攻撃の気配を消して、いつ攻撃するかをわからなくさせる
勘で防ごうとしてもミーツは見てから動けるので、防御の隙間を突けばいいのである
「ミーツだっけ?…中々素晴らしい魔法だ!!でもその行動は悪手だぜ!?」
飛影は空中で拳を握り地面に向けて放つ
それはパッと見では空振りという意味の無い行動
しかし、飛影の拳で衝撃波が放たれていた
「がっ!!」
ミーツは踏ん張っていたにも関わらず地面に叩きつけられる
「これでだめ押し!!」
軽く腕を一振り
ただそれだけなのに、ミーツの腕から剣が弾かれた
「せい!!」
そのまま一回転
遠心力と重力と自分の力を追加した、恐ろしく手加減がかかった一撃でミーツの身体に踵を落とす
巨大な衝撃で地面にクレータが生まれ、生徒達を巻き込んでいく
「完全勝利!!」
《風華》
いぇいと一人ガッツポーズをする飛影
同時に粉塵を空に巻き上げる
『…』
絶句
言葉も出ないとはこのことである
圧倒的な実力差
Sクラスでも怪我一つ負っていない
「うがぁぁ!!飛影お兄ちゃん反則すぎるわぁ!!」
復活したクド
無意識の内に呼び方が戻っていた
「残念ながら絶対強者だ!!」
それに対して屁理屈で返す
「そういう問題かぁぁ!!」
怒れるクド
まさか、ここまで実力差があるとは思ってもいなかったのだ
「中々強くなってたな…うんうん、この学校を造った甲斐はあったぞセツネ」
笑みが溢れる飛影
護りたいものを護れる力
飛影とセツネが考えたこの学校はそれに見合うだけの実力を養えていることが確認できた飛影
それだけで今日の価値はあった
その瞬間、メリア全土を妙な魔力が覆った
「ん?」
最初に気付いたのは飛影だった
「…なにこれ…気持ち悪い」
遅れてクド達Sクラスの者が気付く
ネットリと身体中を悪寒が走り抜ける
「…」
クドの背後
クドの影から現れたかのように黒ずくめの何かが浮き上がる
妙な魔力の性でクドは気付くことができない
「クド!!」
無害ではあると聞いたが、そんな気配を感じさせない
影でできた剣を構えている姿を見て誰が無害だと思えるか
飛影の身体は反射的に動いていた
黒鋼を刀に変化させて全力で地を蹴る
影がクドを切り裂く前に一刀両断する
「へ?なになに!!?」
「全員警戒体制!!自分の身は自分で護れ!!」
突発的に現れるが実力は反則級の中位程度
班を組めばAクラスで対応できる
飛影の声に全員が慌てながらも構え始める
「来るぞ!!」
影が現れる気配を感じ叫ぶ飛影
そこら中の影から浮き上がるように影が現れる
その数は100を超える
「全部消し飛ばしてやる!!」
《炎舞・断罪の》
「宅急便なの~!!」
《縦横無尽》
飛影が無炎で影を焼き付くそうとした瞬間、
「っ!!?」
空から少女が走ってきた
その速度は警戒体制であった飛影が魔法を構築しようとしていたが、反応が遅れるほどである
(絶対強者級か!!?)
その距離は眼と鼻の先
金髪のふわふわとした長い髪が飛影の視界に広がる
「上出来だわ」
《マジックミラールーム》
金髪の少女
その腕にはもう一人の少女がいた
燃えるような赤い髪が特徴の少女
飛影が反応して回避行動するより早く魔法が展開された
「くそ!!?」
(もう一体も絶対強者級だ)
正体不明の魔法が直撃したが、身体に異変は感じない
遅効性のなにかだと判断し、回避するために後退した脚で無理矢理前方に踏み出す
《縦横無尽》
「アハ♪逃げるの~」
可愛らしい笑みを浮かべた金髪の少女
空中に飛んだ瞬間に空中を走り出す
「ふふふ…」
赤い髪の少女は構えもせず不敵に微笑むだけ
「…」
嫌な予勘を感じた飛影は攻撃のために握った拳を開く
「さて、魔王飛影…悪いけれど私と共にメリアの乗っ取りまでここにいてもらうわ」
赤い髪の少女は優雅に微笑む
金髪の少女は空中に寝転がって日向ぼっこをしていた
(絶対強者級が二体…影を造り出したのも絶対強者級…最低でも三人か)
「マジックミラールームに貴方は招待されたのよ?光栄だと思いなさい」
(これは…覚悟を決めるか)
一つ深呼吸をして落ち着ける
飛影の見込みでは絶対強者級は三人
だが、現在メリアには全部で六人の絶対強者級がいた
全部で六人の絶対強者級
これは飛影を抜いて六人です